155話 頂上へのエレベーター(1)
★京極茜目線
アタシと美園礼子が、新宿中央ビルの出入り口の自動ドアを抜けて中に入ると……
ドーグを持ったレディース親衛隊が5人並んでいる。
一目で分かる…… それぞれが強い……
だけど…… さんごは昼に伊崎と黒河内相手に痛めた股間のケガで居ねえようだ。
前の美園礼子が、
≪真ん中の一番デカい女…… 特にヤバいぞ……≫
アタシは真ん中に立つ他の4人より際立ってデカいゴリラの様な髪と顔と体格の女を見て、
「だれだ? あのすげえ骨太女は?」
≪名古屋ゴリラクイーン≫
「名古屋ゴリラクイーン?」
≪名古屋最強…… サイズもワタシと近い…… まさかダンテがあんな大物を引き抜いていたとは…… 他の4人も全国的に有名なトップヤンキーどもだ……≫
デカいゴリラは、アサヒの瓶ビールを顎を上げてラッパで一気に飲み干し、瓶をパリンと握り割った後に、
〔オメエらに親衛隊長は必要ねえ…… 監視カメラも壊してるから、オメエら殺しても鬼頭さんが替え玉を自首させてくれるらしい……〕
デカゴリラはこん棒を構え、
〔思う存分ぶっ殺してやる……〕
前の美園礼子はゴリラを見つめたまま、
≪京極…… オメエはエレベーターで屋上へ上がれ……≫
「アイツら相手に一人でいけるのか? 正直、アタシでもアイツラが相手に1人で勝てるか分からねえぞ…… 特にあのデカゴリラは半端ねえぞ……」
≪京極…… 死ンダラ骨を拾ってくれるんだろ?≫
「分かった…… 先に行くぞ……」
アタシは奥のエレベーターに走り!
『開』を押す!
美園礼子はレディース親衛隊に突進し! 5対1の交戦が始まる!
意外だけど…… レディース親衛隊はアタシを追いかけてこねえ?
嫌な予感がする……
アタシはズボンのポケットから鉄警棒を取り出し伸ばす。
チ―――ン
エレベーターの扉が開くと!
中から二人のレディース親衛隊がアタシに日本刀で突き刺して来た!
<●><●>
カチン
親衛隊「え?」
親衛隊「ばかな?」
アタシはとっさに鉄警棒で日本刀の突きを振り落としていた。
「察してたんだよ……」
グシャ グシャ グシャ グシャ
「邪魔だゴミ」
ポイ ポイ
✖✖「うっ……」
✖✖「らいか…くん……」
レディース親衛隊二人をエレベーターからつまみ出し、『R』を人差し指で押す。
扉は閉まる。
2分後……
1階ロビー……
血だらけズタボロの美園礼子が床に片膝を付いている……
≪クッ…… ハアハア……≫
ゴリラクイーンはビールの大瓶をラッパ飲みしながら、
〔オメエ馬鹿か? 私ら親衛隊5人に1人でケンカするなんてよ? まあ京極に2人スクラップにされちまったが……〕
≪フッ…… その京極はエレベーターに乗れた…… 今頃ブラックチェリーとタイマンしてる……≫
〔ははは、副総長の鬼頭さんはそんなに甘くねえぞ? 京極の乗ったエレベータの階を見てみろよ?〕
美園礼子はエレベータの上にある、階が表示された電光掲示を見た。
≪え? まだ屋上に着いてない? 20階で止まっている? どういう事だ?≫
〔あのエレベーターはシャーロットとかいう女でも屋上まで生きて上がって来れねえように想定して鬼頭さんが罠を仕掛けてる。 鬼頭さんはブラックチェリー以上にダンテを勝たせたいみたいだな〕
≪シャーロットを想定……? 無理ゲーじゃねえか……≫
美園礼子は20階から上に移動し始めた電光掲示板を見つめ、
≪いや……京極なら屋上まできっと上がれる…… 上がる…… 上がれ……≫
ゴリラクイーンは瓶ビールを顎を上げてゴキュゴキュ飲んだ後に、
〔とりま美園礼子を殺しとくか〕
≪死んでも骨は拾ってもらえる……≫
その時……
【美園、オメエは一人じゃ死なせねえぞ】
ビルの出入り口の扉が開いた……
【おいおい? 名古屋のゴリラクイーンかよ……】
入って来たのは全国制覇の白装束の後藤朝子……
後藤朝子は美園礼子の横に立ちレディース親衛隊を見渡して、それぞれに木刀を指しながら、
【広島の横田…… 仙台の吉田…… 北九州の大場…… 大阪の小沢…… はははは、コイツラぶっ殺したら簡易全国制覇だな?】
美園礼子の肩を叩いて、
【美園? ゴリラクイーン行けるか? ゴリラクイーンはアタイにはデカすぎる。 だけど他はアタイがぶっ殺してやる】
美園礼子の片膝は上がり、
≪ゴリラ……タイマンする度胸があるか?≫
ゴリラクイーンは瓶ビールを投げ捨て、
〔望み通りタイマンでぶっ殺してやる、オメエらは後藤朝子をぶっ殺しとけ〕
「「「「了解」」」」
ゴリラクイーンは、こん棒は振り上げて美園礼子へ!
レディース親衛隊4名は後藤朝子へ襲い掛かる!