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16話 1858年 カンザス準州 レコンプントンの町


 キ――ン コ―――ン カ――――ン コ――――ン


「zzz……あ? やっと終わったか?」


 スピーカーから英会話ラジオがずっと流れてた6時間目の英語が終わった。

 教室の上の時計は3時10分。 

 スピーカーからホタルノヒカリが流れる。 これで学校終わりか?

 アタシは椅子にもたれて背筋を伸ばしながら、


「ふあ~~~、それじゃあ~校長クリスチーヌのボディガードに行ってくっか」


 真横に座る赤銅しゃくどう

「マジで行くのか?」


「ああ。 それにしても……」


 教室内を見渡すと……

 朝からずっと桃電してる三色団子、梅酒飲んで喋ってる女4人、麻雀続けてる後ろの4人、寝転がって漫画読んでるヤツ、まだ睨み合ってる角刈りオナベ2人。

 学校終わっても、帰る気の無いヤツラ多いな。

 その時……


 スピーカーから、


《新1年生のみなさん 我が校は3時25分が閉門時間ですからね? 只今から校内の電気は全て落とします 閉門後は我が校の番犬のドーベルマン20匹を檻から放ちますので 急いでください》


青髪⦿⦿{ドーベルマン! まじかよ!?

白髪⦿⦿{電気消されんなら、はやく帰ろうぜ

緑髪⦿⦿{くそ~ てことは私の負けか~


 ぞろぞろとクラスメイトは帰っていく……


 アタシは立ち上がって赤銅に、

「じゃあ、校長の所に行ってくるわ」


「ああ……」



 待ち合わせ場所の聖クリの教員用の駐車場に来た。

 二台だけある車から留置場からアタシを朝乗せてきてくれた、校長の黒のベンツに歩く。

 もう一つの車は教頭シャーロットか? でっかいリンカーンに乗ってんだな?

 ベンツに歩くと、すでに校長はアイドリングかけて運転席に腕を組んで座っている。

 ベンツの後ろを開けて、中に入ると、


「京極? なんで助手席じゃなくて後ろに乗るのよ~?(;´Д`)」


「後ろの方がいざという時に動きやすいだろ? 左右どっちにも出れるしよ?」


「なるほどね… それにしても今日は一日、ほとんど眠ってたわ……(´▽`)」


 校長はサイドブレーキを外し、


「それじゃあ、ワタクシの家までボディガード頼むわよ(^_^)」


「まかせとけ」


 ベンツを出そうとした、その時、


 ブブブ――――!!


 赤銅の単車のクラクション?

 赤銅の乗った単車がベンツの横に止まった、アタシは窓を開けて、


「どうした? 赤銅?」


「やっぱワタシも付いてくわ」


「やめとけって」


「かってに付いて行くし……」


「ち……」


 校長はアタシの方を振り返り、


「京極? もう行っていい?(;´∀`)」


「ああ」




 15分後……


 ここは千代田区の新帝国ホテル? すっげえ有名な高級ホテルだよな?

 校長の運転するベンツはホテルと直結した立体駐車場に入る。

 校長が立体駐車場の1階のホテルへの出入り口近くに駐車すると、ガッチリした警備員の男が二人来て、ベンツの後ろ付いて来た赤銅の単車の前に……


「お姉さん、ちょっと、いいですか?」

「お泊りですか? あ?ボウガン? おい? なんで武器持ってるんですか?」


赤銅 「いや、あの…校長について来てて……あの~」


 アタシが出るより先に、小柄な校長が運転席から出て歩み、警備員二人を見上げて、

「その子、ワタクシの学校の生徒~ ワタクシが誘ったんだけど~( `ー´)」


 警備員二人は、校長を見下ろしながら、

「クリスチーヌ様のお知り合い?」

「そうでしたか? 身なりもそうですが…ボウガン持ってるから警備対象かと…」


「ワタクシたちの事はいいから、仕事しなさい(^_^)」


「はい」

「承知しました」


 校長は、アタシと赤銅を見上げて、

「京極と…赤銅だっけ? ワタクシの部屋で何かおごってあげるわ、付いてきなさい(*‘∀‘)」


 結局、このホテルまでの間、誰にも襲われなかったけどバイト代の10万貰うのもあるし、アタシは校長の後ろを付いていく、もちろん赤銅も付いて来る。

 ホテルのでっかいエントランスを抜け、6個あるエレベーターの1つに入り、校長は11階を押す。 上がるの早いな? 11階で降りると目の前の部屋『11-11』の前でカードをかざす。


 ピッ ス―――


 部屋のドアは自動。


 校長の後ろに付いて部屋の中に入ると、ベッド二つと大きなテーブルはあるが、こじんまりとした奇麗な部屋… 生活感は無えな。


「京極赤銅、この新帝国ホテルの、この部屋がワタクシの家なのよ(´▽`)」


「確かにホテルなら家具とかいらねえな? 服は?」


「下着は全てフロントに注文しては使い捨て、全ての衣装はホテル内のレンタル、このホテルの中には飲食店もコンビニもあるし、ルームサービスで食べ物お酒マッサージなんでもござれよ。 掃除も全てしてくれるし、ホテル内に高級バーも大風呂もプールもフィットネスクラブもある(´▽`)」


「金は?」


「部屋代だけなら駐車場代込みで月75万円、以前に六本木ヒルズで暮らしていた時と比べたら安いし暮らしやすいし、外国のVIPも泊るホテルだけあってセキュリティーも万全だしね。 もっと高い部屋もあるけど1人暮らしならこのサイズで十分(^^)」


 アタシは大事な事を思い出して、

「あ? 校長? バイト代くれよ? 10万」


 校長はしかめっ面で、

「はあ? まったく仕事してないじゃないの?('Д')」


「はあ? 10万くれるって言ってたじゃねえか? あのアパートなんにも無いからテレビ買いてえんだよ」


「契約は拉致してくるヤツラを追い払ったらでしょ? だから今回はナッシング(*´з`)」


「まじか?」


 赤銅はアタシの肩をポンして、

「ざんねんだったな? まあ何事も無くてよかったかもな?」

 にやけた目を向けて来た……


 校長は電話の受話器を取り、

「その代わり、おごってあげるよ、お酒も(*'▽')」


「お酒?」

「校長なのに?」


「正直、学校腐りきってるしいいよ。 ワタクシが、あなた達の歳にはもう飲んでたし、飲みやすいの頼んであげるから…あ? フロント? 注文いい? カシスアップル3つとフルーツ盛り合わせとオカキとなんか適当に肉料理ちょうだいな(*'▽')」


 ガチャっと電話切った校長はアタシと赤銅を見つめ、


「お酒が来るまでワタクシの先祖 聖女シスター・ララの話を聞かせてあげるわね… なんならワタクシが『自由への洗礼』してあげるわよ✚(´▽`)✚」


「校長… 宗教勧誘はやめろって」

「京極もワタシも、まったく興味ねえしな? たぶん聖クリの生徒誰一人な……」




 昔、アメリカに南北戦争という内戦があったの知ってる?

 知らないか……

 リンカーン大統領を知ってる? 知らないか……


 まあ……


 リンカーンって人の奴隷解放運動の反対派から、急転して有力な支持者の1人になりそうだったのがワタクシの先祖の聖女 シスター・ララ。

 でもね、1858年のカンザス州レコンプントンの町での事……

 激しい雨の夜、プロテスタント教会の中で奴隷解放運動反対派のレイシスト2人に、シスター・ララが殺されそうになった時……




 1858年


「お助けください…… 神よ…どうか…ワタクシをお助けくださいお助けくださいお助けくださいお助けください… 神よ……どうか」


《もういいかララ? おまえ、忠告したのにな? リンカーン側に行くなと?》

《ララ…最後の祈りはもう終わりでいいか? 長すぎだろ? さてと…》


 その時……


 教会の扉が開きました。


 銃声が鳴り響きました。


 2人のレイシストは『スプリングフィールドのライフル銃』に撃たれて死にました。

 スプリングフィールドのライフル銃を落とした黒のレザーの服の金の長い髪の女は、撃たれた胸を触りながら教会の長椅子に座りました…… シスター・ララは急いで撃たれた女の元へ行きました。


「あなたは誰ですか!? 怪我は大丈夫ですか!? すぐ医者を呼んできます!!」


「もう死ぬから医者はいい…… それよりも、ララに言いたい事がある」


「はっはい… あなた…どこかで?」


「みんなに自由を与えてやってくれ」


 未だに誰か分からない……


 いえ……正確には、

 聖女の座を奪い取ったワタクシは、母の先代聖女マリアから詳しく教えて貰ってない……

 最期にララを守って笑顔で天に召された、その女性こそが我々の信仰の『自由の女神』なの。

 自由の女神がいなければワタクシも生まれて……

 あ? 眠ってる? 二人とも?

 

 でもね



 今の私達の自由やチャンスというモノは、

 尊い者たちの血と涙と犠牲で、種を撒いてくれたからあるのよ。


 そう…… 自由があるから人は上を向いて、夢を持てるの。






 その夜……


 地上54階の新宿中央ビルの屋上の手すりの上に立ち、東京の夜景を見下ろしている……

 風に、長い黒髪をなびかせる黒のワンピースの女。


 後ろから、1人のネイビー色ジャケットの若いスマートな男が近づいてくる。

 男は女の真後ろに立ち、

「怖くないんすか? ワンプッシュで死ぬんすよ?」

 男は、女の右足首の黒のミサンガを見て、ぎょっとして、


「え? 今回は本物? 本物は本当に高い所から下を見下ろすのが好きですね?」


「仕事はどうですか? チェリーを芸能界で広めていますか?」


「メンバーにはすでに、今日の俺はドームでのライブ、これから収録だし、売れっ子は超大変で疲れたっす」


「たっす?」


 女は、胸の隙間から鉄警棒を右手で取り出して伸ばした……

 その後ろ姿を見たアイドルは、


「すみません!! ブラックチェリー!!」


 土下座する。


「おまえココに呼んだのはな? おまえ、いつもラインの返信が遅い…… おまえ? 東京連合と私を舐めてんの?」


「すみません!!」


「またラインする。 さっさとうせろ」


 アイドルが急いで消えると、

 どこからか、30代の黒いYシャツを着たスキンヘッドのイカツイ男がブラックチェリーに近寄り、


「総長? 今日はどうしてクリスチーヌの拉致を止めたんだ?」


 ブラックチェリーは黙って、新帝国ホテルの方を見下ろしていた。



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