152話 7月3日 0時25分 赤銅聖羅のフラッシュバック
★赤銅聖羅目線
夜23時55分。
ワタシは京極のアパートの前で単車を止めて、酒と肉まんとセッタの入ったビニール袋を持って京極の部屋のドアを開けた。
「うお!」
京極の部屋が血だらけ!
思わずビニール袋を落とした。
誰も居ない部屋には、火薬の匂いが微かにする……
「まさか……」
すぐにケイタイを取り出し、横山先輩にライン通話する!
「おいオメエ! 京極を撃ちやがったな!?」
≪え?≫
「京極の部屋が血だらけなんだよ!! 火薬の匂いがすんぞ!! オメエがピストル持ったヒットマンを差し向けたな!!」
≪まさかスキンヘッドが…… このタイミングでシャーロットを……≫
「シャーロットなんかはどうでもいいけど京極が居ねえんだ!! どこに連れ去った!?」
≪赤銅さん……≫
「なんだ!?」
≪もし京極が死んだら……≫
「京極が死ぬわけねえだろ!! バカ野郎!!」
≪なら私『横山直美』が死んだら…… 悲しんでくれますか?≫
「あ? オメエは横山先輩じゃなくて正体はダンテのボスのブラックチェリーなんだろ!」
≪あなたの前だけは横山直美でした…… 赤銅さんは私を焼肉を連れて行ってくれたりゲーセンで遊んでくれたりしてくれた。 でも赤銅さんは私を無視し始めた…… 私への久しぶりのラインは嬉しかったけど…… 入院して眠ってばかりの京極のために協力してくれといった内容だった……≫
「何クソみたいなことを言ってんだよ横山先輩! 死ぬくらいなら警察に自首しろってんだ! ボケナスが!」
≪ボケナス? フフフ…… 私が死んだら茜とは仲良くずっと単車を二人乗りして欲しい…… 鬼頭妹「ヨコタマ! 敵が来たぞ!!」≫
カチャ、ツーツー
「おい!? 先輩!? 横山!?」
かけ直すけど、出ねえ……
ちっ!
すぐに狂獄軍団グループラインを開き、「オメエらモアイの祝勝会で新宿の笑・笑にいんだろ!? 今すぐ新宿中央ビルに集合、京極と一緒にダンテと戦争だ。来ねえヤツは京極が殺す」を送り、ワタシは部屋に置いていたワタシのドーグのボウガンを肩にかけて部屋を出て単車に跨り、新宿中央ビルへぶっ飛ばす。
ブ―――!!!
見えた新宿中央ビル!!
ビルの周りでスゲエ数の兵隊がケンカしてやがる!!
モアイと三色団子⦿⦿×3の姿も見えた!!
ブ―――!!!
京極の姿が見えねえ!? どこだ!!!
横山先輩は京極にビルの屋上に来いと言っていた!!
もう屋上に上がってんのか!?
でも!
腐るほどいるダンテの兵隊を突破して新宿中央ビルに入るのは無理だ!
そうだ……
新宿センタービルの隣にある……
ワタシの父が所有している『国際貿易センタービル』は……
新宿中央ビルより高い!!
『国際貿易センタービル』のシャッターめがけて!!
「うおおおおおおおお!!!」
単車から飛び降りる!
ガシャン!!
単車はシャッターにぶつかったけど!
シャッターは少し凹んだだけでノーダメージ!
アタシはシャッターの下を持って、
「うおおおおおおおお!! ん? くう~~~ 上がんねえ!!」
もう…… なりふり構っていられねえからな? 最終手段だ……
ケイタイを取り出し、
ラインを開き、ビデオ通話でドバイにいる父に電話する……
出ねえ……
出ねえ……
出ねえ……
向こうは夜7時くれえだろ?
さっさと出ろよ……
パッ
やっと父が映った…… 何年も見てない間にヒゲ面になってる……
≪え? 聖羅……? なんだその口を隠しているバンダナは!? その赤い髪はなんだ!? 私が海外にいる間に不良になってしまったのか!?≫
「親父…… 新宿の『国際貿易センタービル』のシャッターが閉まってる…… 今すぐに開けさせろ……」
≪そんな事できるわけないだろう?≫
「やれ…… さもないと……」
≪なんだ?≫
ワタシはボウガンの矢を抜き、喉に突き刺した……
≪聖羅!! やめろ!! 血が出てる!!≫
ワタシは父にガンを飛ばし、
「開かねえとマジで死んでやる!! オメエが家に連れ込んだ女(継母)のせいで苦しんでいたワタシを救ってくれた命より大事な女がシャッターの向こうにいんだよおお!!」
≪分かった!! いったん切る! すぐに開けさせるから!! 早まるな!!≫
ガシャ―――――
シャッターが上がる。
中に入り、無人のロビーを走り抜けエレベーターに乗り込みRを押す。
外の風景が見えるエレベーター。
『新宿中央ビル』の方向が見える。
下では激しい抗争が繰り広げられてる……
ソイツらは、だんだん豆粒のように小さくなる……
「豆粒同士で何してんだよ……」
エレベーターはRに到達し、
『ピ―― 屋上です』
ボウガンを持ってエレベーターから出る。
超高層ビルの屋上だから東京の街の東方向を見下ろせる高さ……
この夜景の景色…… どっかで見た事あるぞ?
そうだ……
レクリエーション春一番の時に送られて来た、ブラックチェリーのラインのアイコンの夜景だ……
隣の新宿中央ビルの屋上には、
頭から血をすげえ流してこっちを向いている京極と……
京極の前に立つ……?
長い黒髪に黒ワンピースの女の後ろ姿……
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赤銅聖羅から見えた、その光景は……
2年8カ月前のクリスマスで赤銅が京極を助けるために、後ろから黒河内を刺す直前の光景が重なった……
頭の中が真っ白になった赤銅はすでにボウガンの照準を、横山直美の背中に合わせていた。