ー京極茜最終局面ー 147話 18年前、3歳の直美の葬儀、ツクシとクリスチーヌ (京極茜最終局面開始)
18年前……
葬儀センターの中では、
ポン ポン ポン ポン ポン ポン ポン
住職が木魚を叩く音の中、参列者のシャーロットとクリスチーヌがイスに座っている。
「シャーロット? 直美ちゃん死んじゃったの?(・_・)」
「事故で亡くなったのです……」
「そうなんだ……(・_・)」
「クリスチーヌは直美ちゃんの分も生きるんですよ」
「うん……(・_・)」
チ――――ン
住職は鐘を鳴らし棺に頭を下げた後に、後ろの参列者を向き、
『荼毘にふす前に、天国に行く直美ちゃんに花と餞別を棺の中に入れてあげください』
参列者は花を持ち、直美の入った棺に入れていく。
その礼服の列には、スキンヘッド、パンチ、タトゥの暴走族『修羅』の仲間と、『修羅』のたまり場である銀座のバー『アンブレラ』の七三分けのマスターもいた。
シャーロットは席を立ち、
「さあクリスチーヌも、ワタシと一緒に直美ちゃんに花を添えに行きましょう」
「うん(・_・)」
シャーロットが花を棺に入れた後に直美の顔を見て、涙を流しそうになり右手の平で両目を隠した。
「グス…… さあクリスチーヌも花を」
シャーロットはクリスチーヌを抱え上げる。
クリスチーヌは下の直美の顔を見て、
「直美ちゃんは…… 花なんかより……(._.)」
花を棺に入れた後、床に下ろされると、
「うわああああ!(´Д`)゜。」
「クリスチーヌ? 急にどうしました?」
泣きながらクリスチーヌは葬儀場から去った。
シャーロットの後ろに立っていた礼服を着た黒の長い髪のツクシは、
「あのガキには、直美の死に顔がショックだったみたいだな?」
シャーロットは後ろを振り返り、
「ツクシ……」
ツクシは棺の中の、直美の顔に顔を近づけると泣き崩れ……
「うっううううう…… なんでえええ…… ワタシの子がぁあ死んでしまったのぉぉぉ!!! なおみー!!!」
宮本晴彦はツクシを介抱する。
シャーロットはツクシを見つめ、
「ツクシ…… さっさと死ねばいいのに……」
葬儀場の外の喫煙場では、一人でタバコ(ハイライト)を吸うスキンヘッドにクリスチーヌが、
「ハゲ! 銀座の花屋まで連れて行って!(´Д`)」
「あ? なに言ってんだクソガキ? あっち行けよ」
クリスチーヌはロケットペンダントを頭からスポっと抜きスキンヘッドに差し出す、
「先祖代々からの良く知らないララって人から受け継がれている自由の女神のペンダント! これをあげるから!(´Д`)」
スキンヘッドはロケットペンダントを取り吟味する。
「へえ……銀じゃねえか?」
ロケットを開けるとシャーロット・マホニ―の正面顔の白黒写真があった。
「すげえ古い写真だな? 写真の女はちょっとだけシャーロットに似てるか?」
スキンヘッドはロケットペンダントに笑みを向け、
「写真を捨てて売れば10万くらいになるかもな」
スキンヘッドはロケットペンダントをズボンのポケットに入れて、
「分かったよ。 暇だったし銀座の花屋まで速攻で連れて行ってやるよ」
10分後……
改造されまくった単車の後ろに、礼服のまま運転するスキンヘッドにしがみ付くクリスチーヌは、
「もっと飛ばしてハゲ!(`ヘ´)」
「もう着いた」
キ―――
単車を止めると、目の前に大きなパンダのぬいぐるみが椅子に座っている花屋がある。
「アレ買って(´▽`)」
「はあ?」
スキンヘッドは、パンダのぬいぐるみの首にかけられた値札を見て、
「25000円?」
「直美ちゃんパンダが好きなの!(*´Д`)」
「オメエまさか…… あのデカいパンダと一緒に直美を火葬させてやりてえのか?」
「直美ちゃんをパンダと一緒に天国に行かせてあげたいの!('Д')」
「買ったばかりのパンダを燃やす? ガキが思いつきそうなくだらねえ事だ。 もう葬儀場に帰るぞ」
「お願い買って! 死んだ直美ちゃんを見る目はハゲが一番悲しそうだった!('Д')」
スキンヘッドはパンダのぬいぐるみを見つめながら、
「中国と日本の架け橋のパンダか…… オメエは人を見る目がねえな……」
「なんか言った?('Д')」
「なんでもねえ……」
スキンヘッドは単車から降りて花屋へ歩いた。
山中の火葬場では、火葬係二人と住職と宮本晴彦とツクシがいた。
係の二人が、
「それでは火葬しますね」
ツクシは笑顔で、
「オネシャス」
係二人が棺を火葬炉に入れようとした…… その時!
バタン!!
扉が開き! パンダの大きなぬいぐるみをお姫様だっこしたスキンヘッドが入って来た。
パンダのぬいぐるみを見たツクシは、おもしろそうに、
「おいおいスキンヘッド~なんだそれ~?」
「ツクシ、春ちゃん、これを一緒に直美と一緒に燃やしてあげてえんだけど」
ツクシは、
「もう棺には釘打ってるし、時間の無駄だから」
係二人に頭を下げて、
「さっさと燃やしてください」
係二人は、宮本晴彦を見て、
「……お父さん? どうしますか?」
「え?」
ツクシは笑顔で、
「春ちゃんもさっさと燃やしたいよな?」
「ああ……」
スキンヘッドはパンダのぬいぐるみを落とし、宮本晴彦に近づきガンを飛ばす、
「春ちゃん…… 血は繋がってなくてもよ…… 最後くれえ直美のために何かしてやれよ……」
宮本晴彦はサングラスを外しガンを返し、
「オメエ? 誰に口聞いてんのか分かってんのか……≪⦿≫≪⦿≫」
「春ちゃんはツクシに洗脳されておかしくなってんだよ……」
ツクシは二人を呆れた顔で、
「おいおい? つまんねえもん同士で仲間割れかよ……」
住職が、知らぬ間に入っていたクリスチーヌに、
「これこれお嬢ちゃん? 付き添いのお姉さんが葬儀場で探してたよ?」
「パンダを買いに行ってたの(´▽`)」
「あのおっきなパンダ?」
「うん…… 直美ちゃんは死んだ夜に、あのパンダを欲しがっていたの(´▽`)」
「へえ? お嬢ちゃんは最後の夜に直美ちゃんと一緒にいたんだね?」
「シャーロットが、直美ちゃんにゴハンを全く食べさせなかったあそこの女の人に……」
ポン
クリスチーヌの肩にツクシの手が置かれた。
見上げたクリスチーヌは、ツクシの眼から恐ろしい巨悪を感じた。
≪❒≫ ≪❒≫
「ひっ('Д')」
豹変して笑い、
「シャーロットの義理の妹だったよな?」
「うん(・_・;) クリスチーヌ(◞‸◟)」
ツクシはクリスチーヌに背を向けパンダに歩み、
「パンダ入れてやる」
ツクシはパンダの足を右手で掴み、棺の方へ引きずり運び、棺桶の蓋を左手一本でバキバキと釘ごと上げ、直美より大きいパンダを入れた。
ツクシは住職に頭を下げて、
「娘が焼かれるのは見たくないので外にいます。 後で骨を拾いに来ます」
外へ出た。
住職はクリスチーヌを抱き上げ棺の中を見せて、
「これでいいかい?」
「ダメ、向かい合わせにしてあげて('Д')」
係二人は、パンダのぬいぐるみを直美を上から抱いているようにした。
「うん…… これでいい('Д') 直美ちゃん……バイバイ(*'▽')」
ス―――ガシャ。
係「点火します」
外でツクシはタバコ(ブラックデビル ココナッツミルク)を吸いながら煙突からの煙を見上げ、
「あのガキ(クリスチーヌ)…… ずっと昔に会った事がある? ありえねえか」