143話 京極とクリスチーヌ
2年7か月前のクリスマスに、黒河内にやられた脳の傷の状態が悪くなって…… 少し前までは眠ってばっかだったけど……
ここ数日、全然眠れねえんだ……
たぶんもう……
アタシの死はもうすぐ目の前。
校長に少年院《ネンショ―》から出して貰った後、
タイマンでアタシの脳にダメージを与えた、とびっきりヤンキーども……
後藤朝子 (1-A 床に後頭部を叩きつけられる)
伊崎カナエ (コンビニ 鉄警棒を強く頭に2発喰らう)
モアイ (1-A 強烈な肘鉄を後頭部に喰らう)
ブラックチェリー (秋葉原 雑居ビル 鉄警棒のフルスイングを頭部に喰らう)
谷口サトル (高知ひろめ市場 鉄パイプで頭を叩かれ気絶)
近間純 (室戸ドルフィンセンター 石で側頭部を叩かれる)
一葉 (室戸自動車学校の跡地 ロケット頭突きを二発喰らう)
コイツらヤンキーは間違いなくアタシよりも生きるけど……
黒河内含め、コイツらはこの先、一体どんな大人になるんだろうな?
アタシは最近になって料理人になりてえと思ったけど、それは絶対に叶わねえ夢。
でもケンカしたコイツらヤンキーには夢はあるのか? ネンショ―の中に居た時に塀を見ていたアタシ同様に、何も無かったから《《ヤンキーの道》》を歩いたのか?
未来…… コイツラは、どんな風になってんだろうな?
アタシはリングに上がって来た広田キラを見つめる。
良かった。
学校の廊下に貼られていたポスターと同じ目に戻ってくれてる。
プロレスに夢を持ったオメエから、もう死ぬアタシに夢のチカラを教えてくれよ。
アタシは赤銅の総理大臣の夢も笑っていたんだ。
広田キラ……
アタシと…… 赤銅とここの生徒達に見せてみろよ……
夢のチカラってのを……
きっぱり全力のタイマンで……
クリスチーヌは京極茜の、その顔を見た。
「京極のあんな顔…… 初めて見た……(●)(●)」
立ち上がり、
「アイツまさか…… (;゜Д゜)」
小柄なクリスチーヌはリングに走る。
それを見た赤銅は、
「なにやってんだ校長? 校長がゴング鳴らさねえと試合が始まらねえだろ?」
リングの下に来たクリスチーヌは、リングに上がろうとするが、背が低くて上がる事が出来ない。
ΩΩ≪ぎゃっははは!
ΩΩ≪チビ校長~! なにやってんだアレ~!?
必死に上がろうとするクリスチーヌに京極が「ほらよ」と手を差し伸べる。
手を握り、リングサイドに上がった。
すぐにトップロープを掴み、ロープの2段目に足をかけて目線を京極の高さまで上げ……
ペチン……
クリスチーヌが京極茜の頬に力の限りビンタした。
ΩΩ≪おい…マジか?
ΩΩ≪殺されるんじゃねえか? 全然痛くなさそうだったけど
ΩΩ≪校長が死んだらどうすんだよ? この学校も無くなっちまうぞ……
赤銅も驚いた顔で、
「校長が京極にビンタ?」
同じ目線のクリスチーヌは、アタシにガンを飛ばし、
「これからアンタがしようとしてる事は分かる ( `Д´)」
「あ?」
「脳は、どこまで悪くなっとる? ( `Д´)」
「校長だから正直に言う。 もう一日持つか持たないかだな…… たぶん今度眠ったら二度と目が覚めねえと思う」
「京極…… 死が近いからって、夢を持った広田にワザと負ける事が聖クリの生徒や赤銅のためになると思ってんの? バカだね?(`Д´●)」
「はあ?」
「夢を持つって、そんな簡単に与えられないし叶えられるモノじゃない(`Д´●)」
アタシの脳裏に、オロナインを塗った校長の体中の傷が蘇る。(16話)
アタシは校長を笑って見て、
「どうやら、アタシと校長は考えが一緒みたいだな?」
「え?('Д')」
「アタシはこの試合で死ぬつもりはねえぞ? だってアタシはネンショ―を出させてもらった時の、校長との女と女の約束をまだ果たしてねえ。 アタシはまだ聖クリの頂点に立ってねえ」
「もう京極が聖クリのアタマなんじゃないの?('Д')」
「横山直美って女…… まだ聖クリに在籍してんだろ?」
「我が校で大学行けそうな唯一の子?('Д') 最近は出席してないけど、まだ在籍よ('Д')」
「横山直美がブラックチェリーなんだよ」
「そんなアホな(;´∀`)」
アタシの真剣なガンを見たクリスチーヌは、
「本当みたいね……(; ・`д・´)」
「校長を開校式の後に拉致したブラックチェリーは、アタシが秋葉原で殺し損ねたせいで、まだピンピンしてやがんだよ。 愚連隊ダンテのトップに座ってな……」
「ダンテって…… 東京連合をぶっ潰した(;゜Д゜)」
「女と女の約束だ…… ダンテのブラックチェリーはアタシがぶっ殺す」
「京極? 後1日で…… 日本一の暴力組織のトップに立ったブラックチェリーをぶっ殺す気なの?(;゜Д゜)」
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アタシは思い出す。(100話)
「むかつく笑いだな? で? どうおもしれえんだ?」
「オメエと私は姉妹だからだよ」
「なに?」
ブラックチェリーは背を向け、
「姉妹だからかな? 好きな女も同じ…… 茜、余裕かまして寝てたら赤銅の単車の後ろの指定席を奪い取ってやる」
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アタシは赤銅を見つめ、
「本気だ」
クリスチーヌはピョンとロープから下りて背を向けて、
「それなら、さっさと広田をやっつけちゃいなさい(´▽`) 広田の夢がそれくらいで折れるなら、それは仕方がない(´▽`)」
「ならよ? 校長に預かって貰ってる赤銅へのクリスマスプレゼントだけど…… 赤銅が総理大臣になったら渡してやってくれ」
「はあ?(*´Д`)」
「約束だ」
「分かった(;´∀`)」
クリスチーヌは「せ~の」とリング下に飛び降りて再びゴングの前に座った時、横の赤銅が、
「京極にヘナチョコビンタして、なに喋ってたんだよ?」
「アンタは知らない方が良い……(◞‸◟)」
「ちっ……なんだそれ?」
校長はトンカチを振り上げ、
「京極……」
クリスチーヌの強く瞑る目から涙がこぼれる。
涙を見た横の赤銅は、
「校長?」
クリスチーヌの上げた手も震えている。
「校長どうしたんだ手が震えてんぞ? ……振られたんだな? がっはっはっ! まだ諦めて無かったのかよ!? 京極はずっとワタシのモンだぁぁ! がっはっはっは」
クリスチーヌは顔を上げて京極を見ながら笑顔で!
「京極!! アンタの生きザマ(アウトロー★ヤンキーレディーストーリー)をみんなに見せてあげなさい!!(*'▽')」
カ―――――――――――――――ン