142話 聖クリ慰問プロレス ファイナルマッチの二人
ファイナルマッチ京極茜vs広田キラを前に聖クリの生徒たちは、
ΩΩ≪さあて最後は! ザコプロレスラーのキラちゃんの盛大な血祭りだ!
ΩΩ≪我ら聖クリ最強にケンカを吹っ掛けやがったキラちゃん逃げんなよ!
ΩΩ≪ボスの神鳥があのザマなら! キラちゃんなんて、京極の鉄警棒が相手じゃ10秒もたねえだろ!
ΩΩ≪京極がプロレスラー如きに負けたらマジでワタシが自殺してやるよ!
ΩΩ≪きょ~ごく! きょ~ごく! きょ~ごく!
新全日本女子プロレスの控室である壇上裏にフリーライターの野村が入って来て、壇上の隙間から体育館の状況を不安顔で見つめる広田キラまで歩き、
(´෴` )≪神鳥達が怪我人(伊崎と黒河内)を運んで今この場に、私と君の二人だけだからこそ、私は君に伝えたい事がある
(●)¶(●)「なんですか?」
(´෴` )≪その前に、君の不屈のラベンダーのキャッチフレーズ…… 君はなぜそのキャッチフレーズを決めたのかね?
(●)¶(●)「ワタシにはこれと言って取柄が無いから…… 心だけは負けたくないと思ったからです」
(´෴` )≪なるほど…… 当然、君はもう知っているだろうけど、プロレスには台本がある
(●)¶(●)「はい…… 新全日本女子プロレスに入団して知りました」
(´෴` )≪私が独自で調べ上げたプロレスの歴史は19世紀のアメリカまでさかのぼる。 昔は黒人やインディアンへの差別や偏見や暴力は凄まじく、プロレスは白人が黒人の奴隷達やインディアン達をいたぶる台本のショーだった。 しかし、その事実は消されてしまっているがね…… 私はその辛い体験をした者達の子孫の声を拾い集めた上で言っている。
(●)¶(●)「酷い話ですけど…… 今と昔では時代が違います……」
(´෴` )≪私には、今の君の状況は昔の黒人奴隷と変わらないと思う……
(●)¶(●)「いたぶられるために試合に出るって事ですか?」
(´෴` )≪だからこそ君には絶対に勝って欲しい
(●≫¶≪●)「分かりました。 黒人のワタシが白人の京極に勝ちます……」
(´෴` )≪殺す気で戦いなさい…… 勝ちを確信しているであろう君の相手は凶器も使うらしいからね…… それと、私が君の良い写真を撮ってあげるよ……
野村は背を向け、小声で、
(´෴` )≪ここの生徒達は分かってない…… あのジャッキーが神鳥に破壊され、その神鳥がココで素人に負けてキャリアを失ったように…… 大衆の前での台本無しの怖さと………
野村は広田を振り返り、
(´෴` )≪理由は分からないが、広田にはプロレスのためなら死ねる程の覚悟がある事を
クリスチーヌ校長の横に、鼻から下を迷彩のバンダナで隠す赤銅聖羅が走って来て、
「校長! 横に座っていいか!?」
「あん?(`ヘ´) なによアンタ!(`ヘ´) 一年生は二階観客席でしょ!(`ヘ´)」
赤銅は校長を無視して伊崎の座っていたイスに座った。
「もうボディーガードの伊崎もいねえんだから別にいいだろ? 校長~」
武力0の抗うすべのない校長は、
「くっ……(゜Д゜;)」
丁度、新全日本女子プロレスの山田カリンが来て、
「山田カリンさんだっけ?(;'∀') ワタクシの隣の赤髪を排除してくれないかな?(´▽`)」
ーー「了解です。 ロッカーにでも閉じ込めておきますね」
「ちゃんと出れないようにしといてね(^_-)-☆」
山田カリンは赤銅を羽交い絞めしてイスから離しロッカー室へ運ぶ。
「待てよ!! 京極の入場曲をユーチューブからマイクで流してえだけだって!!」
山田カリンはピタっと止まり、
ーー「入場曲?」
「そうだよ! 入場曲を流した方が少しは盛り上がるんじゃねえの?」
ーー「たしかに…… 入場曲、広田の方も流しても良いのかな?」
「京極が流すんなら良いんじゃねえの?」
ーー「よし流そう…… 広田がプロになったら入場曲にしたがってた曲がある」
「お? オメエ? 話が分かるな?」
ーー「だけど条件がある」
「なんだよ?」
ーー「先に入場は京極で、オオトリが広田だ」
「ちっ、トリは京極にすべきなんだけどね…… 分かったよ、交渉成立だ」
山田カリンが手を離すと!
赤銅は走って、校長の隣に座る!
「戻ってきた! なんで~!('Д')」
赤銅はマイクを握り!
「遂に!! 聖クリ慰問プロレスのファイナルマッチ!! 聖クリ最強~~! 京極茜vs! ……えっと誰だっけ?」
山田カリンが赤銅に耳打ちして、
「不屈のラベンダー? 広田キラ。 先ずは王者京極茜の入場ー!!」
赤銅はユーチューブの画面の▶を押す。
≪ダダン!! ダダン!! タララララララ~~♪≫
館内にタマシイレボリューションが大音量で鳴り響く。
体育倉庫のスライドドアが開き、『卍』のスカジャンの京極はリングへ歩く。
ΩΩ≪京極の入場曲はタマシイレボリューションかよ!
ΩΩ≪ワルの頂点になる京極にぴったりな曲だな!
ΩΩ≪京極はもう頂点へ登ってんだろ! じゃなきゃ他の誰が京極の上の頂点にいんだよ! あ? シャーロットか……
京極はリングに上がりコーナーポストを背にしてロープに両手を伸ばし置き、広田キラが出てくる壇上横のドアを見つめる。
タマシイレボリューションが止まる。
≪トゥーン……タタタタタタタタターラン≫
ΩΩ≪この曲は?
ΩΩ≪欅坂の不協和音だな? 周りは敵だらけでも一人で戦うって意思の表れか?
ドアが開き、赤いコスチュームのショートヘアに鼻頭にバンドエイド広田キラが姿を現す。
≪ジャンジャン!ジャジャジャジャ!≫
リングへ歩く顔つきは、聖クリに貼られたポスターの顔になっている。
その顔を見た京極はフッと笑った。
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後日、週刊プロレス元編集長の野村は、この二人の試合を翌週の木曜に発刊された週刊プロレスの表紙にさせた。
そのトップ記事の文の最後に「この試合の翌日に京極茜さんが亡くなってしまった事は、心から残念に思います」と綴る。