14話 放課後10万円のバイトは校長のボディ―ガード
キ――ン コ―――ン カ――――ン コ――――ン
「各自、教科書でも眺めていなさい」の、4時間目のチリが終わった。
教室の上にある時計は12時10分。 昼休みは90分だから1時40分までだな?
アタシのすぐ横に座っていた赤銅がボウガンを持って立ち上がって、
「京極、そんじゃあ昼メシ食いに行こ」
「ああ、そういや学校の隣に小さなお好み焼き屋があったわ」
「ダメだって、ワタシは現金持ってねえから、ちょっと遠いけどココイチかサイセリアに行こうぜ、ワタシの単車でさ」
アタシはスカジャンのポケットから1000円札を取り出し、ひらひらさせ、
「赤銅、ひっさしぶりに、おごってやんよ」
「え? どうした? その1000円?」
アタシは赤銅の耳に口を近づけて、
「じつはな……校長から、生活費貰ってんだよ……」
「まじ? 幾らくらい?」
「月3万」
「おい……1日1000円? ぜんぜん余裕ねえじゃねえか? 京極はタバコも吸うし……」
「と思うだろ? それがよ、校長が放課後に特別なバイトもさせてくれるってよ…それが10万なんだ」
「京極がバイト? 10万ってまじ? なんのバイトだ? まさか売春? 幾ら金がねえからって……それだけはワタシがぜってえ許さねえからな……」
「売春なんてするわけねえだろ? ボディガード」
「だれの?」
「ここの校長」
「どういう事?」
アタシはセッタに、ガス切れかけのライターでカチカチカチして火をつけて、
「なんでも、学校の帰り道によく拉致されるらしい。 拉致するそいつらを追い払ったら10万くれるって」
赤銅は手に持ったボウガンを、にやけた目で見つめて、
「へえ? 10万なら、ワタシも参戦しようかな?」
「赤銅は絶対にダメだ」
「なんでだよ!」
その時……
知らぬ間にアタシの後ろに来ていた三色団子……
青髪⦿⦿☆{京極、勝手に聞かせてもらったぜ…
白髪⦿⦿☆{京極! 私らにも校長のボディ―ガード手伝わせろよ!
緑髪⦿⦿☆{北中を仕切ってた私らも協力してやんよ 1人10万のバイトさせろ!
こいつら…… あのワルの巣窟で有名な北中を仕切ってたのか?
セッタを「ふ~」吹かしながら、三色団子を見て、
「三色団子、分かったよ。 オマエラは一応、校長に聞いてやるよ。 付いてこい」
みんなで教室を出て、階段下りて、1階の校長室の前に行った……
顔認証システムがあるけど、
許可もらってあるから、アタシの顔を近づけると……
ピ――――
バスン……
校長室の鉄の扉が開く……
みんなと中に入ると、
「ぐが~ぐが~ぐが~(-_-)zzz」
立派な赤色の革張りのイスに座り眠る校長がいた。
教頭はいねえ。
アタシは小柄な校長の前に立ち、
「おい! 校長! おきろ!」
体を揺さぶるけど……
「ぐが~ぐが~…ん…むにゃむにゃ…ぐが~ぐが~(-_-)zzz」
「校長……なかなか起きねえな?」
青髪⦿⦿{京極、もう鉄警棒で頭ブン殴れ
白髪⦿⦿{殺さない程度な?
緑髪⦿⦿{なんなら私らが起こしてやろうか?
アタシは三色団子にガンを飛ばしながら、ズボンの中から鉄警棒出して、鉄警棒を伸ばし、
「おい? 校長はアタシをネンショーから出してくれたんだぞ…… いちいち口出すんじゃねえよ……」
三色団子へ、鉄警棒を突き出す……
青髪▽▽{あん? なんだ京極オマエ… ヤル気かよ? 上等……
白髪▽▽{オマエ、ひょっとして……私ら弱いと思ってんの?
緑髪▽▽{こっちは3人だぞ? 勝てると思ってんの?
三色団子は、こっち向いて、サバイバルナイフを構えやがった……
アタシの横の赤銅がボウガンの照準を三色団子に向けて、レバーに指をかける。
「2対3だぜ…… ケンカ始めた途端に青団子のアタマ貫いてやんよ…」
青髪⦿⦿{まあ… とりあえず 落ち着こうぜ
白髪⦿⦿{分かったよ、校長には手を出さねえって
緑髪⦿⦿{とりあえず1人10万円のボディ―ガード終わるまで仲間だぜ
その時…(-_-)zzz→(^_^)
『クスクス… どうやら合格ね…』
え?
『京極が信頼できる女か試してみたのよ……(本当は、ついさっき目が覚めたんだけどね…)』
校長は立派なテーブルの上に両肘を置いて、重ねた両手を口の前に……
『で? その三色団子と、入学式でバイク乗り回った赤毛を、なぜ校長室に連れて来たの?』
「赤銅はダメだけど、三色団子はバイト代1人10万円のボディガードに加わりたいって」
校長は三色団子をジーっと見て、
『う~ん…… そだね~ 別にお金は全然オッケーなんだけどぅ~』
青髪⦿⦿{うっしゃ! やりい!
白髪⦿⦿{喧嘩には自信あんぞ!
緑髪⦿⦿{校長、ボディガード任せとけよ!
喜ぶ三色団子、赤銅も、
「しゃ! ワタシも殺ってやんよ!」
「赤銅はダメだって言ってるだろ?」
「京極!! どうして三色団子はオッケーで!! ワタシはダメなんだよ!!」
座る校長はアタシを見上げ、
『京極? ちゃんと、どんなヤツラにワタクシが狙われているか伝えてあるの?』
「いや、まだ」
校長は、テーブルの上の飲みかけの赤ワインを手に取り、
『ウフフ、京極は……昔、ヤツラを6人殺しているもんね……』
赤ワインを一口飲んだ校長は、三色団子を見つめ、
『あなた達…… あの愚連隊『東京連合』だよ? ボディガードできる? 目だったらヤツラに確実に目を付けられるよ?」
青髪⦿⦿{おいおい……
白髪⦿⦿{最近のニュースも東京連合絡みだろ? ビルから突き落とされた‥…
緑髪⦿⦿{渋谷で大学生が死んだヤツ? ……10万じゃ安すぎんよ
赤銅はアタシを嫌がった目で見上げ、
「京極もう止めろ……東京連合と関わるのは…… また殺しまくったら、もう次は本当に生きてネンショーから出てこれねえぞ……」
アタシは赤銅を見下ろして、
「分かってるよ。 アタシもネンショーの中で勉強した、もう『正当防衛』でしかヒトは殺さねえ」