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131話 古今、女子プロレス


 35年前の夕方の埼玉の大宮。


 電子柱に女子プロレス団体のポスターが貼られている。


 駄菓子屋に寄った後に家に帰っている小学生達がスター女子プロレスラージャッキーがセンターに大きく映ったそのポスターに気づいた。


 都こんぶをしゃぶっていた子供が、

「ジャッキーが大宮に来るんだ!?」


 チョコバットを食べる子供が、

「もぐもぐ、対戦相手 神鳥かんどりシノブ? だれ?」


 花串カステラを咥えた子供が、

「ジャッキーと言えばドロップキックがすげえからな」


 とんがり菓子を食べる子供が、

「空手チョップもな!? 試合は明後日か!? お父さんに連れて行って貰えないか聞いてみよ!」


 小学生達はお互いにプロレス技を掛け合いながら帰る。



 現代の聖クリスチーヌ女子学園、1限後の休み時間。


 4階の通路にA3サイズの用紙で作られた新全日本女子プロレスのポスターが貼られていた。


 一年生2人が、ファイティングポーズを決めた新全日本女子プロレス所属選手4人の写真とプロフィールが掲載されたポスターをタバコ吸いながら見つめて、


「なんだこれ? だっせ」


「ケイタイで一人ずつ撮った画像をショートカットでグリッドしてキャッチコピーの文字添付した後にコンビニでコピーか? プロフィールとかマジックペンだし、くっそ安っぽいな?」


「見てみろよ? 真ん中にでっかく『真の女子プロレス復興へ!』だって? ……ぷっははは! あわれすぎんだろ!? コイツら四人しかいねえんだろ? しかも、そのうち二人が50越えたオワコンのオバちゃんだぞ?」


「おい? 右下の広田キラってヤツのプロフィールを見てみろよ? まだ16歳だってよ? 可哀そうに16で人生終わってんじゃねえか?」


「たしかにな? 高校にも行かず、こんなくだらねえ事をしてんだからな? 頭イタイ広田キラちゃんの得意技‥‥‥ドロップキック~? ぎゃっはっはは! ドロップキックなんて誰にでもできんだろ~? ぎゃっはっはは!」


「え~と? キラちゃんのフィニッシュホールド? フィニッシュホールドて決め技の事か? 神鳥直伝《《キャプチュード》》? なんやねんそれ?」


「どうせ、くだらねえ技だろ? さて‥‥‥」


 一年生の1人がマジックペンをポケットから出して。


「落書きしてやろうぜ」


「いいね」


 ファイティングポーズの神鳥のおでこに『肉』と書き、


「このキン肉まんタトゥで神鳥も少しは強く見えんだろ?」


 次に広田キラの得意技『ドロップキック』に横線を引き消して、上に『フェラチオ』と書いた。 次にフィニッシュホールドの『キャプチュード』も同じく消して上に『騎乗位』とひらがなで書いた。


「これと『真の女子プロレス復興へ!』を消して…… 真ん中に花びら大回転全員合わせて500円っと‥‥‥よし書いた!」


 後ろから、


≪おい≫


 2人の一年生は、ガンを飛ばしながら、


「「あん?」」


 振り向くと、目の前には頭に赤いリボンと全身ワニ皮レザースーツの黒河内真真由美が、


「えっ?」

「赤リボンさん?」


≪なにやってんだあ? オメエら?≫


 2人は目を逸らし、


「「暇だったから、遊んでました」」


 黒河内は落書されたポスターを見つめ、


≪わあ? こんなひでえ事しやがって……≫


「「すみません」」


≪オメエらなかなか良いセンスだな? ちょっとマジック貸せよ?≫


「「はい」」


 マジックペンを持った黒河内はポスターに、『生徒一同のお願いです やらせのプロレスなんてくだらないです どうか門前払いでお願いします 早く潰れてください』と書き足した。


≪よしコレでいい。 おいオメエら? コレを体育館の入り口に貼ってこい≫


「「え?」」


≪せっかく書いたんだからプロレスラー達に見せねえと意味ねえだろ?≫


「「そうですね」」


≪ほらダッシュ≫


 一年生2人はポスターを外してダッシュした。


 黒河内はタバコ(アメリカンスピリット)に火をつけて、


≪ス――プハ―― あの落書き、ベテランにはそんなに効かねえだろうけど、若いヤツにはけっこう効くだろうな≫




 20分後……


 左胸に赤く新全日本女子プロレスと書かれた白のジャージを着た新全日本女子プロレスのメンバーを乗せたノアが聖クリに到着。

 運転席の神鳥は、


「リング設置業者はまだ来てねえのかよ? ウチらが早く来すぎたのかよ? 取り合えずワタシとアメ(アメコング)は校長に挨拶に行ってくるから、山田と広田は荷物を体育館に入れておいて?」


山田カリン・広田キラ「はい」




 車の後ろから大きなバッグ二つを取り出した鼻頭に絆創膏をつけた広田キラは、


(●)¶(●)「カリン先輩! この荷物二つを先に体育館に持っていきますね!」


 細目の山田カリンは、

ーー「頼む広田、ワタシは社長(神鳥)のガウン(アルティメット刺繍)とアメさんの凶器の一斗缶を後で持っていくから」


(●)¶(●)「はい!」


 広田キラはバッグ二つを両手に持って体育館へ歩きながら、


(●)¶(●)「大きな体育館だな~、ココでワタシが初めて試合をするのか…… たくさんの人の前で試合……緊張する…… 入り口はあそこかな?」


 体育館の入り口に近づいた広田は、


(●)¶(●)「あ? カリン先輩が作ってくれたポスターが入り口に貼ってあるぞ♪」


 直前でポスターに違和感を感じて立ち止まり凝視……


(●)¶(●)「なにこれ……」


 持っていたバッグ二つを落とし、酷い落書きの内容を見る。


(●)¶(●)「そんな……」


 すぐにポスターをビリ~っと剥がし、グシャグシャと丸めてズボンのポケットに入れた。


(●)¶(●)「こんなの社長やカリン先輩に絶対に見せられない‥‥‥ 捨てとかなきゃ」


 広田キラの表情は暗くなった。


 


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