126話 京極茜の回想② 横須賀女子少年院調理場 京極茜vs黒河内真由美
★京極茜目線
黒人ハーフ「食堂の院生の中には居ないだって……」
「ってことは……」
黒人ハーフ「さっき調理場に入った複数人の中のヤツラだ…… おそらく包丁もゲットしてるぞ?」
「複数人で待ち構えてアタシを襲ってくる可能性があるな?」
アタシはルームメイトの4人を見て、
「オメエラを巻き込ませるわけにはいかねえから一人で行ってくる、手伝ってくれてありがとうよ」
黒人ハーフ「自殺した女の同部屋のヤツラは5人。 ヤツラはしょぼい罪状で入ってきてる優等生の集まりの101の部屋だ。 イジメはエグイけど、多分ちゃんとしたケンカが出来るかも怪しいザコの集まりだよ」
「分かった」
アタシは警戒して調理場に入る。
中に入ると……
離れた所で包丁を持って構える女が4人いた……
広い調理場を視察する‥‥‥
さっきアタシが入った時と変化が一つあった……
包丁を持っている4人の足元には、3人が倒れてやがる? 死んではなさそうだ……
ヤツラの足元の3人は結構ガタイがいいぞ……
この優等生4人の中の誰かがやった?
この優等生の中にケンカがスゲエ強いイジメの主犯がいるのか?
というか…… 101の人数は5人だろ? 一人足りねえ……
怯えるように包丁構えている女4人にガンを飛ばし……
「おい? 酷い目に会いたくなかったら背中を向けて名前と歳と部屋番号を言え」
戸塚「ワタシは戸塚シオン17歳 101」
望月「ワタシは望月カンナ17歳 101」
竹本「ワタシは竹本ミノリ18歳 101」
井上「ワタシは井上ルル15歳です 101」
もう一度、ヘタレそうな4人の足元の倒れている3人を見る。
101の主犯の1人は死んだふりしてるのか?
でも倒れてる3人ともドーグを持ってねえ……
たぶん倒れてる3人は本当に気絶している。
倒れてる3人をなんかの罠に使う気か……?
「もういいぞ、コッチ向け」
4人がこっち向くと、
望月カンナと名乗った女が人差し指を口に付けて「静かに」のサインしながら、もう一つの人差し指を震わせながら、倒れた3人の近くの冷凍庫を指した。
冷凍庫のドアの隙間に髪の毛が出てる……
アタシは黙ったまま冷凍庫を指差すと、望月カンナは黙ってうなづいた。
倒れてる3人をやった、イジメの主犯がこの冷凍庫の中に隠れているのか?
アタシは静かに歩き、髪の毛が飛び出てる冷凍庫のドアノブを触り…‥
右手の包丁を振り上げた……
その時!!
「「「うしろ!!」」」
声!?
振り向いたら間に合わねえと感じたから! 瞬時に体を横に倒すと!
ガシャ!!
冷凍庫のドアに!! 包丁が刺さった!!
「オメエ望月? 何のマネだ?」
≪くっ≫
刺さった包丁を抜こうとしてたから……
望月の、右の手首を左手で掴んで、包丁の柄から離させて……
「望月? オメエがイジメの主犯か?」
≪ちっ違う…… イジメの主犯の黒河内に命令されたんです……≫
他の101の女達が、
戸塚竹本井上「その女が黒河内です! 同部屋の小林を冷凍庫に入れています! 小林の長い髪の毛をワザとドアの隙間に挟ませて、京極さんをおびき寄せたんです!」
アタシは手首を掴んでる女にガンを飛ばし、
「オメエがイジメの主犯の黒河内で間違いなさそうだな?」
手首を掴んだ女は完全にビビってる目で、
≪ちがう……ワタシは望月です…… 黒河内に、京極さんを刺さないと殺すと言われたんです……ワタシもイジメられてるんです……≫
井上「嘘です!! ワタシたちの中に黒河内がいるなら、なんでワタシたちが声を揃えて「うしろ!」て邪魔する必要があったんですか!?」
「確かにな……」
≪違います!! イジメっ子の、あの人達がワタシに全ての責任を押し付けるためです!! ワタシは黒河内じゃありません!! イジメられてるんです!!≫
アタシは手首を掴んでいる女に顔を近づけ、
「良く分からなくなってきた…… じゃあ、オメエはイジメの主犯の黒河内じゃねえんだ?」
≪ワタシは望月です…… イジメられてるんです…‥ 財前へのイジメを止めたらイジメられました≫
手首を掴んだ女は、「うしろ」と叫んだ女達に涙を流しながら、
≪もういいでしょ? 黒河内さん? もう許してくださいよ≫
戸塚「あ? オメエが黒河内だろ? もう、オマエしねよ」
竹本「どうせオマエ、財前の後にワタシらをオモチャにするんだろ?」
井上「財前さんへの『詫び』です…… さっさと死んでください」
手首を掴んでいる女は力を無くすように倒れんこんだ……
コイツは……
≪黒河内さん……《《詫び》》って何を言ってるんですか? あなたが歌手を目指していた財前の喉を潰しておいて? 酷すぎます…‥≫
井上「あなたがさせたんじゃないですか!? 無理やり!! ワタシは黒河内なんかじゃない!!」
井上ルルと名乗っていた女が、アタシと倒れているコイツの所に包丁持って近づいてきた。
≪京極さん!! 黒河内が包丁で襲ってくる危ない!!≫
アタシは黒河内の右手首を掴んだまま、黒河内にガンを飛ばし見下ろしながら、
「ルルだっけ? 心配するな…… ルルが黒河内じゃねえのはハッキリ分かった。 オメエの分も腐りきっているコイツをぶっ殺してやるから……」
井上「え?」
倒れこんでいる黒河内はアタシを見上げながら、
≪何を言ってるんですか? 京極さん?≫
「ルル… オマエのすぐ横にある調理台の上のタオルがかかったモノを外してみろ」
井上「タオル? あ? これ? 電子レンジ?」
「開けてみろ」
井上「え? ガスくさっ? ガスボンベが詰め込まれてる…… こんなの爆発したら……」
「閉めろガスが漏れる」
井上「はい!」
「オメエら101を後ろに向かせた時にコンセントを外した…… たぶんコイツ黒河内は、レンジの中のボンベ全部に穴を開けてる、コンセント外す前は『蒸し物』の所が光ってた…… つまり頃合いを図って爆弾をセットしてた…… 缶に火花が出る頃合いをな……」
井上「それで途中から黒河内だけ倒れた? 小林さんを冷凍庫に入れた後にワタシ達に壁を見てろと言ったのは電子レンジにワナを仕掛けるためだった……」
「ルルが黒河内じゃねえのは明白、知ってて爆発する電子レンジ目の前に行くバカはいねえだろ?」
井上「黒河内…外道すぎる…… 同部屋のワタシと戸塚さんに竹本さんの三人も爆発に巻きまれるのを知っていた……」
アタシが右手首を掴んでいる黒河内は、汗だくの引きずった顔で見上げて来て、
≪京極さん、レンジの中のボンベに気づいてたんですか?≫
「一回目に調理場に入った時には電子レンジにはタオルはかかってなかったからな…… それにしても黒河内オメエえげつねえな? アタシを殺すのに…… この短時間で、冷凍庫にオトリ入れて後ろから刺すと、爆発の二段構えの罠を用意かよ? もうさすがにねえだろ? ぶっ殺してやる‥‥‥だけどラクに殺さねえ」
黒河内は包丁を持ったアタシに、
≪ワタシの負けだよ……≫
「負け?」
≪京極さん、もうイジメはしないと約束します≫
「歌手目指してた女を、無意味に自殺するまでイジメといて…… 負けだ? 約束だ? オメエ、人をなめてんじゃねえぞ?」
黒河内……引きずった顔から、開き直ったのか?
笑みを上げてきて……
≪京極? 舐めてねえよ…… 第一さあ、財前が死んだ理由がワタシからのイジメとは限らねえだろ? ちょっと財前は鬱だったからなぁ≫
「ほう……」
≪それに京極と財前は他人だろ? なに熱くなってる?≫
「黒河内、オメエ……ぶっころしてやる≪◯≫≪◯≫」
腹を包丁でブッサスした……
≪ぶっううう…… 同じ場所に三度目か……? コレが一番デカイしいぃ≫
「……抜いたら簡単に死んじまうな?」
腹に包丁が貫いている黒河内の髪を掴み、引きずり調理場を見回しながら、
「ミンチにするマシンはねえか? たまにメシにハンバーグが出るだろ?」
≪やっやめろ≫
デカいヤカンがあった。
「これでも被っとけ」
ガンズル~~!! ガン!! ガンズル~~!!
「ぎゃああああ!!」
黒河内の両耳はこそぎ落ちた。
「ヤカンが似合ってるぜ?」
≪もうやめろ……≫
調理人3人を閉じ込めている倒れた冷蔵庫に口を近づて、
「ミンチにするマシンはねえか!! ハンバーグを作ってんだろ!!」
❒≪ない…… ハンバーグ冷凍物……
「あのハンバーグ…… 冷凍物だったのかよ……」
無えなら、しかたねえか……
黒河内のヤカンを引き上げ外した。
≪ぶううう~~≫
床に置いてあった漂白剤のボトルを逆さにして黒河内の顔にぶっかける。
≪目に入った!! 目に入ったー!!≫
首根っこを押さえたまま、ボトルの口をそのまま黒河内の口にぶち込んで流し込む。
≪ん……ぷっゴク……ゴク‥‥ゴク……うぶっおええええ…おえええ≫
殻になったから、ボトルを捨てて……
嗚咽してる黒河内の包丁刺さってる腹に……
「うおおおおおおお!!!」
パン☆
≪ぶっっ!!!≫
思いっ切りミドルキック!!!
黒河内は口から血の混ざったハイターを飛ばしながら、料理を出すカウンターの向こうの食堂へ飛んで行った。
食堂から声が、
ΩΩΩ≪カウンターから料理じゃなくて人が出てきたぞ!!
「黒河内、一丁上がり……」