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13話 聖クリスチーヌ女子学園のしおり


 キ――ン コ―――ン カ――――ン コ――――ン


 2時間目が始まる。


≪ガッガガガ 2限目は数学です 適当に教科書を眺めなさい 中山競馬場単勝一番人気≫



 アタシが黒板の方を見ると、1-Aのクラスメイト達は教室に1つだけあるコンセントにタコ足電源を何個も繋げてあった。 すでに三色団子はポータプルのDVDにプレステ2を繋げて、イスに座ってコントローラーを持って桃電をしていた。


青髪⦿⦿{また徳政令カードかよ 

白髪⦿⦿{学校終わるまで勝負な? 負けたヤツが晩飯おごりだからな?

緑髪⦿⦿{ボンビーうぜえから 特急使っちゃお


 あいつら、まったく勉強する気ねえな……

 他のメンツも、


 4人が囲んだ机の上に1800㏄の梅酒パック3本と紙コップと菓子と灰皿。


「翔君がさあ~ 次の土曜にカラオケボックスで4対4でパーティしようだって」

桃葉ももは? 翔君って、新品川中の翔くん? まじ?」

「てことは黒人ハーフのルイト君も来んの? バスケ部だった?」

「ルイト君、かっこいいよね? かなり遊んでそうだけど」



 ジャラジャラジャラジャラ~~~~~


 後ろから、うるせえ音とタバコの匂いがする、

「黒木? 麻雀なんてやったことねえぞ?」

「私も」

「ルール難しいんじゃね?」

「私が手取り足取り教えてやっからよ。 3年間、打ちまくって卒業したらプロ目指そうぜ」


 教室を見回る。


 寝っ転がって漫画読んでるヤツ。

 スマホをいじってたり、見ているヤツ。

 スマホで話しているヤツ。

 立って顔近づけて、ガン飛ばし合っている角刈りのオナベ2人。


 あんだ~? 勉強しようとしているのアタシと赤銅しゃくどうだけかよ?


 ボウガン持った赤銅がトイレから帰ってきて、アタシの横に座り、


「京極、この学校、校舎の窓は全て割れてんけど、トイレはかなりハイパーだぞ?」


「へえ?」


「エアコンついてるし、ウオッシュレットは新しいし、ドアも完全に密室になってる。 換気扇も高性能だぜ」


「マジかよ? 校長クリスチーヌが用意してくれたアタシのアパートなんて今時、汲み取りだぞ? 後でトイレしてくるわ」


 赤銅は、机の上の複数の教科書の中から、白い教科書をアタシの前に置き、

基地外教頭シャーロットは、数学って言ってたな?」


「ああ、スウガクだ」


 鼻から下を迷彩のバンダナで隠す赤銅は、諦めの眼差しで白い教科書を見つめ……


「数学なんて無理だろ……正直……」


「スウガクってなんだ?」


「まあ…… 一応…… やるだけやってみっか…… 他の教科書を机の中に片付けんぞ?」


 赤銅は、他の教科書を机の中に入れようとした時……


「あ? なんか机の中に紙切れが入ってんぞ?」


「あんだこれ?」


 赤銅が机の上に、紙切れを出して、

「聖クリスチーヌ女子学園のしおり? こんなんあったのかよ? 1年間のスケジュールが書かれてんだな?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 ✚ 聖クリスチーヌ女子学園のしおり ✚


【開校理念】 

 慈愛で、智と救いの心をはぐくむ。 

 それは… since1858… 自由への歩み。


【メッセージ】

 新一年生の皆さん、変わりゆく未来への期待と不安の中、これからの時代を歩む皆さんにとって、当校での3年間の学びや経験は大きな意味を持つと言えるでしょう。 当校は一切の入学試験が無いという画期的システムを導入しております。 それはすなわち誰にでも難関国立大学に入学するチャンスが与えられているという事であります。 とはいえ、開校当初は各地から引き抜いた選りすぐりの教員達が在籍しておりましたが、現在は自主性を重んじたスタンスに変化をしております。 どうか自分自身の意思と努力で、学業にまい進して難関国立大学を目指して下さるように心から願っております。 


                         校長 聖女クリスチーヌ


 登校時間9時 授業40分 休み時間10分 昼休み90分 クラブ部活動無し


 1年生 スケジュール 全クラス共通


月                 午後から 5限 数学 6限 科学


火 1限 社会 2限 数学 3限 国語 4限 地理 5限 科学 6限 英語


水 1限 社会 2限 数学 3限 国語 4限 地理 5限 科学 6限 英語

 

木 1限 社会 2限 数学 3限 国語 4限 地理 5限 科学 6限 英語


金 休み


土 休み


日 休み


学園行事 

体育祭 教員不足のために現在は中止

文化祭 教員不足のために現在は中止

3年の修学旅行 自主性を重んじておりますため、修学旅行期間休み(日程は後日報告1週間程度を予定)の間に各自で修学旅行


夏休み 7月16日~8月31日

秋休み 10月23日~11月7日

冬休み 12月25日~1月6日

春休み 3月13日~4月6日


校則 シャーロット教頭に一任しております


イベント情報

7月2日『新全日本女子プロレス』が当校の体育館で慰問プロレスを開催予定

11月17日ロックバンド『暴風スランプ』が当校の体育館で慰問コンサート開催予定

2月22日『田代まさしろ』さんが、当校の体育館で薬物の危険性の講演予定。

2月29日 網走刑務所元服役者による体育館で『度重なる再犯によって失った家族への贖罪』を講演予定。


―――――――――――――――――――――――――――――――


 赤銅がしおりを全部、読んでくれた。


「京極…… ウワサは聞いていたけど、聖クリは想像以上に休みが多いな…」


「だな…… でもなんか「田代まさしろ」とか「プロレス」とか面白そうなイベントもあるみたいだけどな」


「しかし、ここの校長クリスチーヌは聖クリの生徒を難関国立大学に行かせたいみたいだな… 100パー無理すぎんだろ……」


 アタシは赤銅を見て、


「赤銅、オマエならチャンスあるんじゃないか?」


「はあ? ワタシ?」


「ロクに漢字を読めねえアタシは絶対に無理だけどさ、赤銅は地頭ジアタマいいし?」


「無理だって、なんかセンター試験とかいうのがあってさ、この数学で点数取らないと国立大学なんて不可能みたいだし。 ワタシは数学の基本なんて知らんし」


 アタシは赤銅を見つめて、


「このスウガクってのがいるのかよ? でもよ、赤髪でバンダナで口隠した特攻服女が、こんな学校から、すげえ大学に入ったらすげえよな?」


「こんな学校からなんて1000パー無理だから」


 アタシは昔を思い出して、

「そういや、赤銅が書いた小学卒業の寄せ書きの将来の夢…覚えってっか? ぷぷ」


「…あ? 止めろよ…」


「赤銅…… ぷぷ…日本初の女総理大臣だったな?…ぷぷ」


「もう忘れてくれよ……マジで」



青髪⦿⦿{つぎ東京だって? どこにあったっけ?

白髪⦿⦿{自分で探せよ

緑髪⦿⦿{あ? いまあった 通り過ぎたぞ




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