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121話 黒河内の回想⓭ 黒河内真由美vs伊崎カナエ


 ワタシは校舎に入った後に、周りを見渡し、


「新築で綺麗だな? それに土足で入れるのは‥‥‥」


 ワタシは新ドーグの鉄のハイヒールに笑みを向け、


「とてもいな?」


 後ろを見ると、直美と伊崎カナエが付いて来ている。

 その後ろにはたくさんの新入生達カスも。


 ワタシは校舎の出入り口近くにあった、トイレのドアの前で足を止めて、伊崎カナエにガンを飛ばし、


「伊崎、中に入ってこい」


 次に直美を見て、


「直美、パートナーはワタシしかいねえって事を分からせてやる」


 直美は小さくうなづいた。


 ワタシはトイレの中に入る。

 一面、白の大きなトイレ。

 手前に流しが6とそれぞれに鏡があり、

 トイレのドアは閉まった状態で向こうへ10もある。



 奥へ歩き……

 入って来たドアの方へガンを飛ばす……


 ドアが開き、伊崎カナエが入ってくる。


 伊崎‥‥‥ ワタシを見て笑ってやがる……

 その目は…… 昔、どっかで見た事あるような……?


『オマエの事は直美から聞いてるよ』


「なんて?」


『オマエがすぐにキスしてくるのが嫌だったって』


「嘘をつくな」


『五反田の焼き鳥屋? くっそ不味かっただって?』


 ワタシの頭の中が熱くなる。


『直美は、もうオマエの事なんてどうでもいいって言ってたな』


 嘘だ!!!


 走る!!


 嘘ツキはぶっ殺す!!



 だけど伊崎は右手を振りかぶっている? 何かを投げるのか?


 ブン


 振り下ろした一瞬だった、すげえ速さで顔に何かが迫ってくるの感じた‥‥‥


 ワタシは足からスライディングする様にして避けた、目と鼻の真上を何かが通り過ぎた。


 トン!


 その何かが後ろで刺さった音がした!


 やばい! ワタシの鉄のハイヒールと体が滑って無防備に伊崎に近づいている!


 待ち構えている伊崎の右手にはアイスピック!?

 投げたのもアイスピックか!?


 伊崎はワタシの顔目掛けてアイスピックを刺してくる!


 グサ


 顔を守るために重ねた両手にアイスピックが刺さった。


 倒れたままのワタシに、伊崎は体重を乗せて強く押しつけてきやがる‥‥‥ 

 このまま顔に穴を開けるために‥‥‥


 どんどんアイスピックの先が左目の前に近づいて来る‥‥‥


 まさに万事休す‥‥‥


『左目からいくぞ…‥‥』


「待て… ワタシの負け…‥‥ これ以上はやめてくれ‥‥‥」


『負けを認めんのか? 黒河内?』

 

「認める、ワタシの負け。 金輪際、直美とオメエには近づかねえと約束する‥‥‥ まだ死にたくねえんだよ‥‥‥」


 ワタシの顔を、伊崎は笑うような目で見下ろして、


『カスのクセに調子に乗りやがって』


 伊崎の目?

 そうだ…… あの時の目だ……


 あの時の、豊島区の『法明寺鬼子母神堂ほうみょうじきしもじんど』の盆踊りの綿菓子の味と記憶が甦る。

 オマエもアイツラ(西野の子供三人)と一緒だ。


 伊崎バカがピッとアイスピックを引き抜いてくれた‥‥‥


 ワタシは伊崎から顔が見えないように、穴の開いた両手の下で、

 微笑んでいた。




 引きずり落してやる





 スル―――


 ワタシは頭の赤いリボンを解き、背後を見せた伊崎の首に巻き、力限り……


 ギュ――――――――!!


『ぐっ!<◌><◌>』


 両手で絞めると伊崎は両手のアイスピックを離し、両手でリボンの間に指を入れようとする!


 ワタシは! 伊崎の首を巻いていたリボンを突き飛ばす!


 ガン!!


 トイレのドアに強く体を打った伊崎カナエはすぐにコッチに振り返った、その顔に!!    



 ― 鉄のハイヒールのハイキック ー

破壊力

★★★★★

★★★★★

★★★★★



 ワタシの右足の鉄のハイヒールのツマサキが、伊崎の口の中にめり込んでいる。


 スッ


 右足を床に戻すと……

 伊崎は中腰になり口を両手で抑える…‥


 すぐに口からブチャ~ポトポトと血と幾つかの歯を吐き出して、また両手で口を抑える……


『うっっううう』


「運が良かったな? もうちょい上だったら死んでたぞ?」


『ぁうっううっうろす』


「なに? なんて言ってる?」


『ふっごろしふぇやる……』


 伊崎は落ちているアイスピックを拾おうとしたけど、


 グシャン!!


 脇腹に鉄のハイヒールのツマサキ蹴りを思いっ切り喰らわせた……

 手ごたえあり。

 喰らった後の伊崎の目が白目になってる……


 バタン……


 伊崎は崩れた。


 ワタシは倒れた伊崎を見下ろしながら、


「浦岡を殺す前に「どんな手を使ってでも殺せ」って直美によく言われてた~。 それとオメエの敗因はワタシにウソをついてキレさせた事だ……」


 その時だった。


 トイレの出入り口近くのドアが開く‥‥‥


 ワタシが入る前にすでに誰かトイレしてたのか?


 デカい‥‥‥ 

 体育館で見た鬼のような顔した女が一人出てきた……


鬼頭姉「おつかれ」


 鬼は近づいて来る‥‥‥

 ワタシはガンを飛ばしながら、蹴りの構えを取り、

「オメエはだれだ? やんのか?」


 直後‥‥‥

 ワタシの肩が後ろからポンと叩かれ、すぐに振り向くと、もう一人の鬼のような顔の女!?


 プシュ――――


 っっ目がいてええええ!!!!

 催涙とうがらしスプレー!?

 いてええ!!


「ぎゃああ!!! 水ー!!」


 たまらず屈んで両目を強く瞑り、穴の開いた両手で両目を押さえると、


 ガン!!


 無防備な後頭部を蹴られた!

 凄いっっ威力‥‥‥

 両目を強く瞑り両手で押さえて無かったら、両方の眼球が吹っ飛んで行ってたかもしれねえ‥‥‥


 ボコ!!

 バコ!!

 

 うつ伏せで倒れたワタシの首や頭や背中に、体重乗せた蹴りを振り落としてくる‥‥‥

 頭をガードしたら背中、背中をガードしたら首や頭‥‥‥

 両目もスプレーの激痛で逝ってしまってるし‥‥‥

 もう無理だ……とても無理だ‥‥‥もう反撃なんて無理‥‥‥

 死ぬ‥‥‥



【ねえちゃん、やりすぎじゃね? その程度にしといたら? 殺したらダメらしいから?】


【そうだったな?】


【さっさと窓から外に出ようよ】


【そうだな、気絶しとる伊崎に気付けの注射シャブを射ってさっさと消えよう】





 パシャ


 窓が閉まる音がした時‥‥‥


 むちゃくちゃ痛いけど、ボンヤリ目が見える様になった‥‥‥


 だけど‥‥‥

 倒れてた伊崎がヌ~っとゆっくりと立ち上がり‥‥‥

 アイスピックを拾った‥‥‥


 ワタシは、口から血を流しながらガンで見下ろしてくる伊崎を、見上げ震えていた‥‥‥


「やめろ‥‥‥」


『くろふぉうち‥‥‥ のうてんアイスフィック一撃でらふにしてやる』


 やばい! 殺される!


「カネをやる! シャーロットから貰った300万だ! 全部やる!」


『いらねえ‥‥‥』

 

「頼むから命だけは許してくれよ!」


 伊崎はアイスピックを振り上げた!!


 死にたくない!


「やめろ――――!!」


 伊崎のアイスピックが!


 ブ―――ン


 ワタシは強く目を瞑る!


 ブス!


 背中を刺された‥‥‥

 しかも前回と同じ場所(赤銅にドスで刺された場所)‥‥‥?


『直美の言う通り、殺す価値もねえ女だ』


 フラフラの黒髪のツインテールは、


『くそ、歯がねえから爪が噛めねえ』


 トイレから出て行った。



いてえけど、命は助かった‥‥‥」


 すぐにトイレのドアが開き、三つ編み眼鏡の直美が入って来た。

 デカい鬼に半殺しにされて、伊崎に背中を刺されたせいで、うつ伏せで一歩も動けねえワタシは直美を見上げ、


「直美、助けてくれ‥‥‥ トイレの中に敵が隠れていやがった‥‥‥」


 直美は悲しい目で見つめてきて、


≪また背中を刺された? あの時みたいだね?≫


「あの時?」

 

 直美はアイコスを吸いながら、


≪クリスマスのスタジオだよ? あの時、警察サツを呼んだのはスタジオの陰でずっと隠れていたワタシ。 浦岡が殺された時にケイタイがワタシの足元に転がってきたからサツを呼ぶのに使わせて貰った。 てか、また負けたのか? やっぱりブラックチェリー役は伊崎カナエだな? 《《オマエ》》より?≫


「ワタシを《《オマエ》》? どうしてだよ? どうして急にそんなに変わっちまったんだよ? 二人でワタシと直美の世界を変えるんだろ?」


≪私は横山直美じゃない、私はブラックチェリー。 こうしてオマエに最後に会いに来たのは忠告だ。 死にたくなかったら浦岡の件での、かあさん(シャーロット)と私達の関与も、伊崎に刺された事も警察に絶対に喋るな≫


「なおみ‥‥‥」


 直美は赤いリボンを拾い、ワタシの右手に握らせて、ワタシの目を見つめながら、


≪救急車を呼んどいた‥‥‥ もう二度と私の前に姿を現すな。 左足のミサンガも外せ≫


 直美は去った。


 

 でも最後の目は、優しかったんだ……


 ワタシは赤いリボンを握り締めた。




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