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117話 黒河内の回想➒ 黒河内、開校する聖クリへ


 3月25日朝 黒河内真由美退院。


 退院用に、看護師に頼んでユニクロで買って来て貰ったベージュのパーカーと黒のジーンズを着たワタシが病院を出ると……

 また刑事デカの戸津川ともう一人が来やがった……


 (◞‸◟)  ( ˙灬˙ )(・_・)~


( ˙灬˙ )≪黒河内さん、退院おめでとうございます。 そこの喫茶店で少しお話を聞かさせて貰えませんか? お代は出しますよ?


「しつこいな? 弁護士の黒岩を通してからじゃねえと何も喋らねえって言ってんだろ?」


 ちょうどのタイミングでバスが来たから、バスに乗り込む。

 座って窓の外の刑事二人を睨みつけながら、

「ワタシをマークしてる捜査一課には注意しとかねえとな…… 本当はすぐに青山の直美の家に行って…… 直美に会いてえけど、直美と会うのはまだまだ無理だ……」




 五反田のワタシの二階二部屋・一階二部屋のワンルームのアパートに来た。

 一階のワタシの部屋にカギを回して入る。

 ドアの内側ポストを開けると数あるチラシの中に家賃滞納の通知書に、電気停止の通知書が入っていた。

 ドアの横の台所に歩き、水を流してすぐ止めて、


「まだ水は止められてねえ? でも今日中に滞納してる電気代に家賃も送金しておいた方がいいな…… 黒岩(弁護士)の法律事務所にも送金しねえと……」


 部屋に入って、ベッドに座りベッドの下に隠していた金の入ったビニール袋を持ち上げて中から500万円を取り出して、道中に買ったタバコ(アメリカンスピリット)にライターで火をつけて咥えながら、


「家賃が……三か月分で21万、電気が6000円、法律事務所へ20万円、ケイタイ代も払わねえとな」


 タバコを深く吸い、灰皿にタバコを置き、


「三か月分の手術入院費220万は黒岩(弁護士)が言ってた高額医療制度ってのを黒岩に手続きを頼んだらワタシの自己負担が30万位になるらしいからな? 黒岩が手数料6万かかるって言ってたけど安いもんだな」


 ワタシは上下の服を脱ぎ、壁のハンガーにかかっているレザースーツを着て赤いリボンを頭に付けた後に、振込先の記された幾つかの通知書と100万円の束をポケットに入れてアパートを出た。


 近くのファミマのATMで支払いを済ます。

 ケイタイで時間を見ると、まだ昼前……

 今日は朝飯を食ってないから腹減ったな?

 ずっと不味い病院食ばっかだったから昼はガッツリ美味いモノ喰うか……


 飲食店の多い山手線の五反田駅近くに来た。

 歩きながら飲食店の看板を注視する。


「やっぱ焼肉かあ? それとも寿司かあ? 金ならあるぞお、高級フレンチかあ?」


 ワタシは古い小さなラーメン屋『豚野郎ブタヤロウ』の前で、足を止めて……


「ガッツリなら、やっぱラーメン屋だな♪」


 入る。


 店内は肉体労働者が結構入ってる。

 油が染みついた古い色紙が壁に並んでる。

 この店……たぶん当たり。

 テーブルは満席だったからカウンターに座るとオバちゃんがワタシの前に水置いて、


≪注文は? 後で?≫


 ワタシはメニュー表を見ながら、


「注文しとくわ、豚骨チャーシュー麺、ギョーザ、チャーハン、唐揚げ、全部一人前くれ」


≪それなら『豚野郎まんぷくセット』にした方が安いよ?≫


「豚野郎まんぷくセット?」


≪ウチが開店から出してるセットだよ。 お姉さんが注文したのが全部入って1480円、ラーメンにチャーシュー280円をトッピングしてもずっと安いよ?≫


「ふ~ん。 金あるけど……ソレにすっか? ソレくれ、それと瓶ビールも」


≪まいど≫




 1時間後……


 豚野郎を出たワタシは、


「喰った喰ったぁ…… 喰いすぎて腹が張ったあ」


 レザースーツの腹を触り、

「締め付けられて苦しいぜ…… だけど、まだ甘いモノも食いてえな?」


 近くのソフトクリーム屋でソフトクリームを買ってアパートに帰りながら舐める。


「ん?」


 途中、下ろされたシャッターに『伊藤板金』と書かれていた。


「こんな所に板金屋があったのか?」


 ワタシはソフトクリームを食べながら、シャーロットの言葉を思い出す……



≪ドーグは鉄の靴も用意しておいた方がいいですね≫



 あの時……

 もし鉄の靴なら、シャーロットを倒せたかもしれねえ……


 この板金屋に鉄の靴のオーダーメイドを頼んでみるか……

 ワタシの家も近いしな。

 

 ワタシはソフトクリームを食べ終えた後に、シャッターに耳を付ける。


 中から少し音がする。


「シャッターは閉まってるけど中に人がいるみたいだな?」


 ドンドン!


 シャッターを叩くけど反応がねえ……

 仕方ねえから、シャッターに書かれてる連絡先、電話番号080~に電話する。


≪trrrr trrrr trrrr はい伊藤板金です≫


「もしもし、店の外にいるんだけどシャッター開けてくれない?」


≪用件は何ですか?≫


「仕事を頼みてえんだよ?」


≪ちょっと待ってください、すぐ開けます≫


 じつは二重だったシャッターが上がる。

 シャッターの向こうに、汚れた作業服を着た、金の短髪で耳にピアスした日焼けした野性味のある顔の…… まあまあイケメン。


 へえ? ガテン系って言うの?

 背は一緒くらいだけど、なかなかワタシの好みじゃねえか?

 歳は20半ばくらいか?


 作業服の男はケイタイを切ってズボンのポケットに仕舞い、


【おねえさん? ウチに頼みたい仕事ってなに?】


「あ? ああ…… ところでこの板金屋はアンタ一人でやってんの?」


【親父が死んでから後継いでやってる】


 ワタシは顔を見ながら、


「へえ…… 偉いねえ」


 作業服の男は笑って、


【偉くないよ】


 笑顔も、まあまあシブい……


【頼みたい仕事は?】


「鉄の靴を作って欲しい」


【鉄の靴? それならアマゾンで安全靴を注文したら良いんじゃない?】


「安全靴じゃダメだ、もっとむき出しの鉄じゃなきゃ、そうだ鉄のハイヒールは作れないか?」


 ハイヒールなら、つま先もカカトも尖ってて殺傷能力も高そうだしな?


【鉄のハイヒールなんて、なんに使うの?】


「護身用」


【護身用? 聖クリにでも入学するのか?】


「聖クリ? なにそれ?」


【4月7日に開校する女子高、誰でも入れるらしい。 入学金も学費もいらないらしい、A4の願書だけで入れるらしい。 噂じゃ日本中のワルがソコに入学してくるって話だけどな】


「へえ、そんな学校が出来るのか? 面白そうだな?」


【鉄のハイヒール、まっ……型さえ作れば作れない事は無いな…… 足のサイズを測るからソコのイスに座って靴を脱いで】


 ワタシはパイプ椅子に座ってシューズを脱ぐ、

 作業服の男がメジャーでワタシの足のサイズを測る。


【26センチ】


 横と縦も測り終えたワタシはシューズを履き終え、


「名前は?」


伊藤寛介イトウカンスケだよ】


「カンスケは彼女とかいるの?」


【居ないけど? それがなに?】


「なんなら今からココでタダでやらせてやるぜ? テクも自信がある」


【名前は?】


「黒河内真由美、真由美でいいよ? シャッターを閉めたら声も外に聞こえねえぞ?」


【たぶん真由美まだ未成年だろ? 淫行でパクられたくないからいいや】


「なにそれ? ……つまんねえヤツ」


 股間を見ると…… 

 膨らんでやがる……


【俺とやりたいなら18歳の誕生日過ぎてから来いよ。 これから俺が作るシンデレラハイヒールを履いてな?】 


 シンデレラハイヒール?

 コイツ、ってるクセにカッコつけやがって……


【さっきの着信を登録しとくな? 鉄のハイヒールは今請け負ってる仕事の合間に作るから10日くらいかかるかもしれない】


「ああ、出来たら連絡してくれ、ちなみに幾ら位だ?」


【3万くらい】


「了解、とりあえず3万は先に払っておく」


 ワタシは3万を渡して、板金屋を後にした……



 日本中のワルが集まる聖クリか?

 ワタシは、小学も中学もロクに行ってなかったし。

 直美に会いに行くまでヒマだし聖クリに行ってみてもいいな?



 アパートに帰ると、海外から硬いワニ皮のレザースーツを注文した。

 コレで防御も完璧だ。 だけど到着まで2週間かかる。

 90万で高かったけど、 西野から取ればいいし、聖クリに入学したら金なんて簡単に手に入る。

 

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