表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/189

114話 黒河内の回想➏ 京極茜


 12月8日の深夜0時。

 五反田の焼き鳥屋。

 カウンターに座る直美はジョッキのチューハイを一口飲んだ後に、横のワタシに、


「32人殺してる浦岡は怖かった?」


「ああ、でも…… どんな手を使ってでも殺す」


「どんな手?」


「浦岡の回りには護衛がいやがるから、ワタシは浦岡と行動を共にして護衛の居なくなった隙に不意打ちで殺す」


 ワタシは直美にキスをした後に、


「ワタシが直美を、どんな手を使ってでも東京連合の総長ブラックチェリーにさせてやる」


「うん…… 一緒にブラックチェリーになろうね」


 直美はワタシの肩に頭をくっ付けた。

 ワタシは直美の肩を抱いた。


 ワタシが浦岡をどんな手を使ってでも殺して、東京連合のトップに立つワタシと直美が自由の女神ブラックチェリーとして…… ワタシや直美の子供の頃のような人たちを救うんだ…





 数日後の午前4時


 新宿のクラブで浦岡が、シャーロットにチクったホストの森本と仲良かったホストを偶然見つけて人気の無い道路に連れ来ていた。


 浦岡が喫茶ルブルに連れ来ていた黒ニッド帽の二人がホストをボコっている。

 ワタシは電信柱を背もたれにして腕を組みながら、


「浦岡? こんなとこでリンチしたら面倒だぜ? 場所を変えろよ?」


【いちいちうるせえカス、オメエは黙ってろ……】


 浦岡がパーカーのポケットからケイタイを取りだして、子分に電話する。

【車持って来い新宿の東】

 黒ニッド帽二人に、

【まだ殺すなよ? コイツ(ホスト)は地下格闘技の事務所に連れて行く】


「「はい」」


 ホストが大声で、

「だれか助けて!!! 殺される!!!」


 ワタシは笑いながら、


「ほらね? 弱いヤツってすぐ大声出すからな?」


 黒ニッド帽二人はホストを抑えつける。

 ホストは向こうを見て、

「あ! そこのヒト!! たすけっ!! ぐえ!!」


 ワタシと浦岡は向こうを見る。

 電信柱の影からコッチ見ている中学くらいのチャリに跨った女(赤銅)がいた。

 すぐに浦岡が、チャリの女を指差して、


【捕えて来い、あの女も事務所に連れ行く】


「「はい」」


 黒ニッド帽二人はチャリで逃げた女を追いかけた。


 

 今ここは、ボコられてうずくまってるホストと、

 ワタシと浦岡の三人だけ……


 浦岡襲撃のチャンス


 ワタシは右手で鉄警棒を胸の隙間から取り出し伸ばし……

 浦岡の背後に近づく……


 確実に一撃で殺さねえと……


 もう射程距離……


 殺す…


 失敗は許されねえ……

 こんな時にビビッてらんねえだよ……

 震える鉄警棒持つ右手を振り上げようとした時……


「おい?」


 女の声が後ろからしたから、振り返る……


 

 さっき逃げた女と同い年くらい?

 金髪のボサッた長い髪に青色に瞳?

 黒いスカジャン、右手には鉄警棒……


 浦岡も金髪の女を見て、


【なんだガキ?】


 金髪の女は浦岡にガンを飛ばし、

「チャリ追った二人を止めろ、さもねえとオメエを殺す……」


 マジか? このガキ?

 32人殺しの浦岡に喧嘩売りやがった? 

 相手を知らねえで喧嘩売るとはバカだな……


 浦岡はズボンと腹の間に隠していたドスを取り出し鞘を抜き……


【おいガキ…… オメエもこのクソホストと一緒に殺してやる】


 右手に持ったドスで刺しにかかった!

 同時!?

 すでに金髪女も鉄警棒を振り落としてる!!


 カン


 落ちたのは浦岡のドス…… 


【いったあああ……】


 浦岡の右手首は鉄警棒を振り落とされて折れてる?

 瞬時に金髪の女はドスを拾い!

 

【ひっ】


 浦岡の口の中にドスの刃先を入れた。

 金髪女がドスをゆっくりと押し込むと、浦岡の頭も後ろに下がり、

 やがて……

 浦岡は寝る……

 金髪女はドスを浦岡の口の中に入れたまま……


「チャリを追った二人を止めねえとこのまま殺す≪●≫≪●≫」


【わかっふぁ】


 金髪女がドスを少し上げると、


【野村!! 藤田!! 戻ってこい!!!】


 直後だった。


 グシャ!!!


 空手の瓦割りの様に……

 浦岡の顔面に、金髪の女の正拳突きが振り下ろされてめり込んでいる。

 浦岡の上がっていた左手が地にパタンと落ちた。

 東京連合5代目総長の浦岡が…… 正面タイマンで負けた?

 なにもんだ…… この金髪の女?

 まだガキなのに…… ケンカの強さ半端ねえ……


 金髪の女はスカジャンのポケットに両手を入れて無言で去って行く。

 黒のスカジャンの背中には金色の『卍』。


 ワタシは聞いた。


「名前は?」


 金髪の女は振り向き、ワタシにガンを飛ばしながら、


「京極茜」


 名前を隠す気も無かった京極茜。

 ワタシは京極茜に背を向け、戦う意思の無いサインを送った。

 



 黒ニッド帽二人が戻って来て、


黒ニッド「総長!? 大丈夫っすか!?」

黒ニッド「こりゃ病院連れてかねえとヤバい、もうすぐ呼んだ車が来るから病院に直だ」


 すでにホストは事態に紛れて消えていた。


 黒ニッド帽の二人がワタシにガンを飛ばし、


「「もしかしてオメエが総長やったのか?」」


 ワタシは今まで走っていて息切れする演技をして、

「ハアハア、違う」


「「誰が総長をやったんだよ?」」


 ワタシは6代目総長の権利が京極茜に移る事の可能性を考慮した上で、京極茜が浦岡にタイマンで勝った事実を隠したかったから、


「浦岡が不意打ちで襲撃されたんだ…… 急すぎてワタシも成すすべ無かった。 襲撃した女を追いかけたけど新宿の街の方へ逃げられた」


 浦岡が病院で目覚めた時、浦岡もワタシの口裏合わせの話に乗るはずだ。



 それと……

 京極茜に感謝している。

 浦岡のブザマな負けを見た事で、

 ワタシが抱いていた浦岡への恐怖心が和らいだし、

 浦岡の右手首まで折ってくれた。


 ワタシが浦岡をブラックチェリーの鉄警棒で殺す。



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ