表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/189

107話 横須賀女子少年院を出所した黒河内真由美(通称 赤リボン)


 

 京極? 知ってた? 

 別に京極より弱くていいんだぜ?

 京極が居なくなるのを待てばいいんだから。




 さかのぼる事…… 6月上旬……


 横須賀女子少年院の男子トイレの中では、洋式トイレに唾を「ぺっ」と吐いた女囚がいた。 綺麗な黒髪は腰まであり、釣り目で端正な顔立ち。名前は黒河内真由美くろこうちまゆみ

 二年前に、女子少年院内の歌手を目指していた女をイジメで自殺に追い込んだ女(18歳)である。

 その件で同じ女子少年院の京極茜の逆鱗に触れ、京極茜により全治一年のスクラップにされた。 その時、殺される直前に京極茜に「もう二度とイジメはしない」と改心を誓いトドメを刺されなかった過去を持つ。

 だが京極茜が出所後は、横須賀女子少年院を完全に仕切っていた。



 黒河内の前でベルトを締める若い看守は、


「4月に出所した京極は聖クリに入ってる」


 黒河内はトイレットペーパーで口を拭いた後で、

「ワタシが復学しようとしてる学校と一緒かよ? それはクッソうぜえな……マジで……」

 手を出して、

「おい? 今日のタバコは?」


 170センチの若い看守は、176センチの黒河内を見上げながら、

「ほらよ」


 看守はタバコ(アメリカンスピリット)一箱を渡す。

 一本取り出してライターで火を付けて吸い、


「で? 出所前に教えるって言ってた、京極のとっておきの情報は?」


「明日、ケツでやらせてくれるのが条件だ」


「あ? ケツはいてえからヤダ。 代わりに明日、西野をトイレに来らせる」


「西野? あのおとなしい女? まだ14歳?」


「最後くらいウブがいいだろ?」


「あり」


 ス―――、黒河内はタバコを深くふかし。


「ハ――――、ワタシの出所は明後日か……あ? そろそろ昼飯に行かなきゃな?」


 黒河内は男子トイレを出て、表にあるボードに『掃除済み黒河内』と書き食堂へ行く。


 黒河内が食堂に入ると、すでに他の女囚全員が昼食の乗ったトレーを前に置いて誰もまだ食べていない。

 黒河内はトレーを取り、麦飯、すり身と玉ねぎのスープ、豚肉生姜炒め、デザートのミカンの半分切りを乗せてテーブルの方へ歩く……


 おかっぱ髪の西野の向かいに座る女囚の背後で、


「どけ、オマエ席を間違えてる」


 女囚は前を向いたまま、

「はい…」


 静かにトレーを持って席を立ち、空いている席に移動した。


 黒河内はトレーをテーブルに置いて座り、両手を重ねて、


「いただきます」


「「「「「いただきます」」」」」


 女囚は食べ始める。


 黒河内は向かいの西野を見つめながら食べる。

 下を向き目を合わさない西野のお箸を持つ手と容器は震えている。

 黒河内は小さな声で、


「西野、明日はワタシの代わりにトイレ掃除たのむ。 明日はワタシ体調不良だから」


 西野はうつむいたまま、

「はい」


「たぶん笹岡看守がすぐトイレに入ってくるけどさあ…… 笹岡の言う事を全部聞けよ? 聞かねえと、オメエもそろそろ出所だから、出た時に必ずワタシは会いに来るぜ。 ネンショーから先もずっとワタシと一緒に遊びたいか?」


「笹岡看守の言う事を聞きます…」


 西野は小さくすすり泣き始めた。

 黒河内はテーブルの上の卓上塩を持ち蓋を回し開けた後に、西野の味噌汁に全てを流し込み、


「泣くなよ西野? 明後日でお別れだから泣いてくれてんのか? 泣かれたらまた会いたくなっちまうだろ? メシは残すなよ? ワタシはメシの責任者だからな? ワタシが責任取らされちまうかもしんねえからな?」


 西野へ冷酷な微笑みを向ける。




 二日後の正午……

 黒河内真由美出所。


 女子少年院の管理室に入った黒河内は囚人服を脱ぎ全裸になる。

 黒河内の管理庫に保管されていた…

 黒河内の鎧である、指先と足首まである上下一体の硬いワニ皮で作られた漆黒のレザー服に足を突っ込み着た後に、背中のファスナーを上げる。

 続いて専用武器ドーグの高さ5センチの鉄のハイヒールを履く。


「このワニ皮レザースーツがあれば伊崎カナエは余裕でぶっ殺せた…… このワニ皮は伊崎のアイスピックを通さねえ……」

 

 次に管理庫から、自分のお気に入りの赤いリボンを取り、頭の上に取り付ける。


 続いてバッグを取り出し開け、中身の万札を数える。


「ちゃんと、まだ307万ある。ケイタイも余裕で買える」


 トントン


 ドアのノックに黒河内は、バッグを閉めて、


「笹岡看守、着替え終わりました」


 管理室に笹岡看守が入って来て、


「用意が出来たなら出所だ」


「笹岡? 昨日、教えてくれた、京極の余命が迫っている情報は本当なんだな?」


「二年以上前だけど、医者から聞いたから間違いない…… 黒河内? またワルの道に戻る気だろ?」


「あたりめえだろ? 京極茜が脳の病気で死にさえしたら、ワタシが最強ヤンキーだからな‥‥‥ 聖クリを無茶苦茶にしてやる」


「またすぐに、ココに戻って来てもいいぞ…… レザースーツってエロイな? その赤いリボンも似合ってるってかエロイ」


「このリボン似合ってる?」


 嬉しそうな黒河内は、笹岡看守の股間を触りながら、


「京極さえ居なければ、ここの生活も悪くなかった、気が向いたらまた戻ってきてやるよ…… ははは、てかオマエもうパッキパッキだぜ」



 6月上旬、黒河内真由美出所。


 慰問プロレスが行われる7月2日に聖クリスチーヌ女子学園に復学が決定。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ