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105話 35年前、女子プロレスラー『ジャッキー』の引退(聖クリ慰問女子プロレス編)


―――――――――――――――――――――――――――

『聖クリ慰問女子プロレス編』の主要登場人物


女子プロレス関係


神鳥かんとりシノブ 56歳 175センチ

新全日本女子プロレスの社長であり現役レスラー。

35年前、同じプロレス団体の先輩で日本全国に名を知れ渡るスーパースター女子レスラー『ジャッキー』を試合で破壊して一躍、世間に名を売った女。

当時の神鳥のプロレススタイルは極めて総合格闘技寄りであり、女子プロレスの歴史を変えたとされる、かつての史上最強のプロレスラー。

プロレス界に入る前は柔道世界大会覇者。柔道無差別級日本選手権2連覇。


★アメコング 51歳 160センチ

新全日本女子プロレスの副社長であり現役レスラー。

凶器攻撃殺法を得意とする顔にペイントを塗った有名ヒール女子レスラー。

現在、新全日本女子プロレスは所属選手が4名しかいなくプロレス興行が出来ない状況なので、神鳥と一緒にユーチューブ配信と、神鳥同様にたまにテレビ出演、他所の女子プロレス団体へのスポット参戦で会社の収益を上げている。


★山田カリン 20歳 170センチ

新全日本女子プロレスの練習生。

細目の黒のショートヘアー。

高校時代はレスリング地方大会優勝者。 他所の女子プロレス団体の女子レスラーがアイドル化している事に疑問を抱き、大学進学を蹴り高校卒業後に新全日本女子プロレスに入門した。


★広田キラ 16歳 168センチ

新全日本女子プロレスの練習生。

無個性な顔のショートヘアー。

先輩の山田カリンとのスパーリング中に鼻頭を切ったので鼻に絆創膏をしている。

プロレス好きな両親の影響もあり、プロレスバカの女。

同じくプロレスバカの妹がいる。

中学卒業後、北海道の富良野から単身で新全日本女子プロレスに入門した。


★ジャッキー 66歳

35年前の大宮スケートセンターでの試合で神鳥シノブの腕十字固めで右腕を破壊され、そのまま引退した。 現在は地元岐阜でスナック『ジャッキー』を営んでいる。

40年前、女子プロレスは全国放送で中継され、華のある女子プロレスラー『ジャッキー』の試合は視聴率30パーセントを越えていた。



聖クリスチーヌ女子学園関係


★モアイ(鬼ヶ原真澄美) 196センチ

聖クリ一年。 

将来は格闘家を目指しているので神鳥シノブに憧れている。 両手のコブシは京極茜により、メリケンサックと一体化している。


★伊崎カナエ 175センチ

聖クリ三年。

教頭シャーロットが長期休暇中なので、学生でありながら聖クリのワルを統括する立場である教頭代理を校長クリスチーヌから任命されている。


黒河内真由美くろこうちまゆみ 176センチ 18歳

聖クリ一年。 東京出身。

長い綺麗な黒髪の上に赤のリボンを付けた、上下が指先足首までピッチリ黒の硬い素材のワニ皮レザー服の釣り目の美女。

6月上旬に少年院から出所して、7月2日に聖クリに復学(一年生として)したばかりの実力派のワル。

二年前の聖クリの開校式で伊崎カナエとタイマンをする。

その後、傷害致死でパクられ少年院入り。 京極と同じ横須賀の少年院に入り、少年院内でイジメをしていた事で京極に完膚なきまで半殺しにされ改心したらしいが……


★京極茜 174センチ

聖クリ一年。

後の世にも、伝説のヤンキーレディーと呼ばれる女。


―――――――――――――――――――――――――――




 35年前の夏の朝。


 あるプロレス団体の出来事……


 神鳥かんどりシノブという21歳の新人女子レスラーが、渋谷にある道場の二階の社長室に呼ばれた。 壁にはジャッキーという団体の看板女子プロレスラーがベルトを巻いた姿のポスターが貼られている。


 神鳥はペコっと社長室にいた社長と広報部長に頭を下げた後に、

「社長? なんの用ですか?」


 カツラ明白オールバックの太った50代の社長がポッカの缶コーヒーを飲んだ後に、


「神鳥、ジャッキーの事を嫌いらしいな? ジャッキーが原因で「くだらんプロレス辞めてオリンピック目指す」とか言っとるらしいやん?」


「はい」


「オマエに高い金出してスカウトしたのに? なんでや? 言ってみい?」


「ワタシは柔道で最強でしたよね? だけどジャッキーは柔道の危険技をプロレスでは一切使うな言ってくるんですよ? ハッキリ言ってプロなら強いヤツが勝べきじゃないですか? この団体もワタシの柔道のトップキャリアがあるからスカウトかけてきたんじゃないですか? ワタシも次のオリンピックまで3年あったからプロレスに入ったのに、それなのに柔道の技を使うなっておかしいでしょう? ジャッキーはワタシが「目のケガで休みたい」言っても、休んだらダメと言って試合に出さすんですよ? その上、ジャッキーは札幌でワタシの目をヒジで叩きましたからね? 他の女子レスラーも、ワタシと違って社会知らずの中卒15歳で入門してるのばかりですから、プロレスの世界の常識とかぬかして「ケガをした方が悪い」と言ってるんですよ?」


 カツラ社長は、同じく太ったパンチパーマの眼鏡の男を見て、


「広報部長、後は頼むわ、ワシはサウナに行ってくる」


「おつかれさまです」


 神鳥も、

「社長、おつかれさまです」


 二人だけ残った部屋、広報部長はマイルドセブンに火を付けて吸った後、


「今日の埼玉大宮スケートセンターのメインにジャッキーとオマエのカードを組まれてるやろ?」


 広報部長はガンを飛ばし、


「それ、オマエのしたがってた、台本ブック無しの喧嘩セメントでやってみい」


「本当ですか? ワタシが看板のジャッキーに勝っていいんですか? 怪我さしてもいいんですか?」


「ジャッキーにも今夜の試合は喧嘩やと伝えとる。 神鳥、やるなら徹底的にやれ、オマエが勝ったら、次からオマエが看板や」



 その日の夕方、

 大宮スケートセンターの表で広報部長は月間プロレス(現在は週刊プロレス)や新聞記者を集めた。


≪広報? 今日の試合に私の日経まで呼んだのはなぜですか? 他にもたくさんの記者を?≫


「今日のジャッキーと神鳥の試合は注目だからです」


≪トップスターのジャッキーが大物新人の神鳥に胸を貸すからですか? でも、神鳥のデビュー戦も団体旗揚げ戦でジャッキーが相手しましたけどジャッキーとではレベルの差がありました。 ジャッキーは神鳥の柔道の寝技も投げも巧みにかわし完勝でしたよ? それ以降は負けてばっかりの神鳥と、たったの半年で再戦とは?≫


 広報部長は、新聞記者達を真顔で見渡しながらピストルを撃つポーズを半周させて、


「神鳥のデビュー戦と違って、今夜の試合は何が起こるか私にも分からないですよ」




 午後8時半、メインイベント。

 会場の観客は5000人のキャパに半分程度の埋まり。

 入場曲の無い、黒のコスチュームの神鳥が普通に入場してリングに上がり、ストレッチする。

 セコンドも無い。



 続いて…


≪パラララ―ン♪ ビュ~ティ~ビュ~ティ~♪≫


 ジャッキーの入場曲が響く。


ΩΩΩΩ≪ジャッキー! ジャッキー! ジャッキー!


 金のガウンのジャッキーの入場にファンは殺到し触ろうとするファンをセコンドや弟子がガードする。


Ω≪ジャッキー!! くっそ! セコンドが邪魔で触れなかった!

Ω≪俺触れた! ラッキー!


 ジャッキーはリングに上がりガウンを脱ぐ。コスチュームは白。

 髪は地味な黒のショートヘアーで、もちろん顔はスッピンだが、その顔にはカリスマ性が溢れる。


 試合開始直前…


 ジャッキーは神鳥に真顔で右手を差し出した。

 その右手を見ながら神鳥は、


「……(ジャッキーは喧嘩セメントと知ってるのに? 握手? これから喧嘩すんのに? まあいいか…)」


 ジャッキーと神鳥は握手した。


 カ―――ン


 ゴングが鳴り試合開始!


 すぐにジャッキーは得意技のドロップキックを神鳥に放つ!


 が……


 あっさり避けられ……


 着地したジャッキーの顔に!

 神鳥の蹴りが!!


神鳥「モロ入った!!」


 後は……

 神鳥の一方的な流れ……

 ジャッキーをひたすら殴る、蹴る、関節を締める。

 だがジャッキーは諦めない。

 神鳥の攻撃に屈さない。


Ω≪え……ジャッキーどうしたの…

Ω≪神鳥――! プロレスをしろよー!!


 「うえええん!」子供の泣き声も聞こえてくる。

 神鳥の裸締スリーパーホールドに鼻血を出して苦しんでいるジャッキーの姿を記者達は、


 カシャ☆カシャ☆カシャ☆カシャ☆カシャ


 撮りまくった。


 神鳥は裸締めを解いて、ジャッキーの顔に張り手を喰らわせ、


「おら!! ジャッキー!! プロレスはこんなもんかぁ!?」


 神鳥を見上げる、原型が分からないほど顔が腫れたジャッキーは、


「神鳥……オマエは悪くない……悪いのは社長、いやワタシか……」


「なんか言った? 聞こえんかった」


 神鳥はジャッキーの顔にモロに蹴りを入れ、スリーカウントを取るためにフォールする。

 レフリーが、


≪1! 2! …ノー!≫


 ジャッキーは2.9返す!


 瞬時に神鳥は、意識朦朧のジャッキーの右手を掴み、本気の腕十字固めに!


「フォール負けが嫌ならよ! 心を折ってやる!! ギブアップしろ!!」


 最後まで、完全にまった腕十字でギブアップしなかったジャッキーの右腕が折れた。


 レフリーは神鳥のTKO勝ちで試合を止めた。

 その時のジャッキーの白のコスチュームは赤に染まっていた。


 二か月後、ケガの治療経過が思わしくない理由でジャッキーは引退を発表した。

 一世を風靡したジャッキーの引退発表に来た記者の数は少なかった。




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