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103話 東京連合の新たな鉄の掟


 二週間後の6月24日火曜日の昼。


 千葉の松戸の住宅街にある古い市営住宅の2階の後藤朝子の四畳の狭い部屋には……

 東京連合の総長後藤朝子、副総長美園礼子、特攻隊の華奢な体の虎武流トラブル(ハーフスキンヘッド)、東京連合のガタイの良い幹部3人、計6名がテーブルを囲みながら畳に座り、タブレットの東京都の地図アプリを見つめている。 後藤朝子は灰皿にあったシケモクを手に取り火をつけて、


「ス――ハ――― 思ったよりダンテとは長期戦になっちまった…… 完全にアタイら東京連合にとって悪い流れだ…… これ以上はダンテと抗争するカネが……」


 巨体の美園礼子はウチワで顔を扇ぎながら、


「アサコ、ワタシも親の貯金を全部ツカイハタシタゾ? 千葉連合と神奈川連合にあったカネも底をついた…… GWに京極殺しに高知に行った時に、アノ時の東京連合から貰った小遣い100万は残ってナイノカ? まだ20万くらい残って無かったか?」


 後藤朝子は片目を瞑りながら美園礼子を見つめ、

「そんなもん、美園のメシと酒代でとっくに消えてねえよ」


 美園礼子は顔を逸らし、

「ゴメン、ダイエットスル」


 後藤朝子は立ち上がり、隣の部屋に行き……

 すぐに戻って来て、通帳をテーブルに投げ落とし、


「アタイの母ちゃんの通帳、30万とちょっとある」


 座った美園礼子は後藤朝子を見上げ、


「ダメだ、ソコマデスル事はない、アサコの家はワタシの家と違って、収入が母ちゃんの弁当屋のパート代だけだからヤメテオケ」


 虎武流も、

【総長、その通りですよ】


幹部A 「総長、無理しないでください。 いっその事、ダンテみたいにドラッグを売って資金を稼いでみては?」


「アタイが東京連合の鉄の掟②『東京連合はドラッグには手を出さない』を新しく作ってんだろ? 母ちゃんがパートから帰ってくる夕方までの間に、このカネを全部下ろす……」


 後藤朝子は再び座り、タブレットを見ながら……

「渋谷も新宿もしらみ潰しにしたが、横山直美ブラックチェリーは居なかった……」

 指を広げ、秋葉原の地図をズームアップする。


「秋葉原…… 虎武流? 秋葉原は東京連合生え抜きの特攻隊長 雷火ライカが攻略してたよな?」


【はい、雷火が秋葉原の南の方はかなり攻めてましたよ…… 秋葉原はダンテの兵が多かったみたいですね…… 秋葉原にはテントウムシのヘルメットを被った四国のヤンキーも居て雷火と交戦したらしいし…… 秋葉原はけっこう怪しいかもしれませんね】


「古い雑居ビルがたくさんある秋葉原の北…… 今日の夜、秋葉原の北を本格的に攻めるぞ……」


 後藤朝子は虎武流にガンを飛ばし、


「すぐに特攻隊長の雷火始め、東京連合の全軍に7時に秋葉原に集合と伝えとけ」


【はい】


「ぶっ倒したダンテの兵からは、それぞれがカネを奪い取っていい」


【はい、俺から部下に指令出しときます】


 虎武流はケイタイを取り出し、ラインして、


【これで大丈夫です】


 虎武流は立ち上がり、


【昼飯を買ってきますね? 夕方まで時間あるし、総長がカネを下ろしに行くのはメシの後でいいでしょう?】


 座っている美園礼子は、立っても目線の高さが一緒な虎武流を見つめ、


「虎武流? カネモッテルノカ?」


 ニヤけた虎武流は特攻服の胸ポケットから一万札を出して、


【女から貰ったんです、総長にはタバコ、美園副将長には焼酎を買ってきます】


 虎武流はアパートを出た。


 美園礼子はウチワで顔を扇ぎながら、後藤朝子を苦しそうなギョロ目で見つめ、


「アサコ、エアコンがコワレテるなら、扇風機くらい買えよ? アツくてタマラナイ」


「美園が厚着すぎなんだよ? アタイを見習えよ?」


「ワタシガビキニか? ハハハハ、オマエラ幹部は見たいか?」


幹部ABC 「見たいです」


「オウ、ソレじゃワタシもビキニにシヨウカナ? ン?」


 美園礼子は虎武流が紙袋を置いて、買い物に行った事に気づき、


「虎武流、ナニヲモッテ来テタンダ?」


幹部A 「出してみましょうか?」


 幹部Aは紙袋からケーキの箱をテーブルの上に置く、


 後藤朝子は、   〈●〉〈●〉☆

              ▽


「デコレーションケーキか? こんなデカいケーキ、虎武流は気が利くじゃねえか? 今日はアタシの誕生日って覚えていたんだな?」


 美園礼子はギョロ目を垂らし、

「ハッピーバースデー♪ ア~サコ~♪」


 幹部三人も笑顔で、

「ハッピバースデイ♪ 総長~♪ ハッピバースデイトゥーユー」


 後藤朝子が、


「オメエら、恥ずいわ」


 照れ臭そうに笑った直後…


 パ―――――――――――――――ン





 爆風で、後藤朝子の部屋の窓が割れた。

 カチカチと駐車場にカッターの割れた刃が落ちる。

 部屋の割れた窓から白い煙も上がり出す……


 駐車場を歩く虎武流は、道路に停まってた軽の黒のスペーシアの助手席に入る。


「鬼頭さん、手榴弾って、すげえ威力なんすね? どうやって仕入れたんすか?」


鬼頭妹「箱ん中にはカッターの刃も詰め込んであったからな? 手榴弾の仕入れ先は聞かねえ方がいい。 さっさと行くぞ」


 スペーシアは走る。

 車を運転する鬼頭妹は横の落ち込んだ表情の虎武流を見た後に、タバコ(ショートホープ)を咥えて火をつけ、


鬼頭妹「ぷは~ あっさり大金で裏切ったクセに……いまさら罪悪感でもあんのか? 心配すんな、適当な誰か替え玉で自首させるから」


「後藤朝子…… 殺すの勿体なかったぁ」


 虎武流もタバコ(セッタ)を咥えて火をつけて、


「鬼頭さん… やっぱ、こんなアッサリと殺すことなかったんじゃないっすか?」


鬼頭妹「あ? オマエが言ってた朝子を拉致って死ぬまでAVさせるって案? で? オマエが男優するって案?」


「そうっすよ、俺は後藤朝子の女優名も考えてたんすよ?」


鬼頭妹「なに?」


「後藤アソコ」


鬼頭妹「しょーもねえなオマエ? 特務隊長の雷火は居なかったが、後藤朝子と美園礼子と幹部を、自首する替えた玉1人で始末できたんだぞ? 贅沢言うな。 そんな事より、オマエなら呼べんだろ? 東京連合の残りカスをダンテの待ち伏せしてる所によ? 少しずつな?」


「楽勝です」




 その頃…


 後藤朝子の部屋の壁のあちこちに、カッターの刃や手榴弾の鉄辺が刺さっている。

 

「ぶっ……ぶはっ」


 口から血を吐いたうつ伏せの後藤朝子は……

 赤くなった白装束のポケットから画面の割れたケイタイを、右手をプルプル震わせながら取り出したが、


「壊れ…て…やがる……」


 うつ伏せのままケイタイをポトっと落とし、

 部屋から右肘だけで体を引きずりながら、アパートから出ようとする。 墨字の様な血の線を作りながら……


「薄…着……のアタイだけ… なぜか…うごける…な…んてな… はやく…救急……車」


 アパートの出入り口のドアの直前まで辿り着いたが……

 上のドアノブを見上げ、


「くそ…… 立てねえ」


 上のドアノブに大きな手が見える。


「アサコ、オマエだけでもイキロ…」


 ガチャ。


 美園礼子がドアノブを回しドアを押しながら、ズドンと前に倒れた。


 最後の力で美園礼子が開けたドアの向こうには、

 爆音に驚いて通路に出ていた隣の住人のオバサンが、


「朝子ちゃん!? すごい怪我!? 大丈夫!? 凄い音だったけど!! 何があったの!?」


「きゅ…きゅうしゃ……はや…く…みその…のちりょう… なかま…も……」


 後藤朝子は目を開けたまま、玄関に頭がガクっと落ちた。




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