100話 聖女の後継者
聖女クリスチーヌは走る。
4階のトイレ前に辿り着き……
「やめんかい!! 京極!! はぁはぁ!!(゜Д゜;)」
クリスチーヌは、血だるまで倒れる伊崎カナエの前で両手を広げ京極を見上げ、
「これ以上は死んでしまう! 止めなさい!(´Д`)」
「どけ校長…… ぶっ殺す……」
「スイッチ入ってる?('Д') でも伊崎を殺すなら!! ワタクシを先に殺しなさい!!(゜Д゜;)」
ブン!!
「きゃっ(>_<)」
京極で寸止めで、クリスチーヌの頭の上で鉄警棒を止めた。
「なんで、そのクズを守るんだ?」
「ワタクシが伊崎カナエの更生保護員だから……(>_<) アンタもね……(;'∀')」
京極はクリスチーヌにガンを飛ばし、
「そいつは絶対に更生なんてしねえぞ?」
「かもしれない、でもね京極……それでもね……(>_<)」
「なんだよ?」
「ワタクシが伊崎の更生保護員をしている以上、この子を信じるの(´▽`)」
見下ろす京極、見上げるクリスチーヌ。
京極は、尻もちをつき、クリスチーヌを見上げ、
「ちっ、やっぱ校長には勝てねえな…… 頼む、救急車を呼んでくれ……」
その日の夜の病院…
時間は0時に差し掛かった。
通路のイスで並んで座る赤銅とクリスチーヌの姿があった。
「医者に大枚はたいて事件性無しにできて良かったわ(;´∀`)」
赤銅は目の前の閉ざされた京極の病室のドアを見ながら、声を震わせ、
「伊崎ってクソより、京極の方が怪我がひでえなんて……」
「京極は一応、手術に成功したけど、今は面会謝絶だからね(;'∀')」
「さっさと伊崎が死ねばいいのに……」
「絶対に復讐は止めときなさいよ? 京極は死ぬほどの怪我じゃないんだから(;'∀')」
「分からねえ…京極に何かあったら殺すかもしれねえ…」
「もう帰りなさい? 明日も学校だよ?(;´∀`)」
「帰らねえ、ずっとここにいる」
クリスチーヌは立ち上がり、赤銅の肩をポンと叩き、
「ワタクシは先に帰るわね? 明日も学校だから(;´∀`)」
「おやすみ」
「おやすみなさい(^^)」
クリスチーヌは階段を下りて、下の階の病室に入った。
照明をつけると、ベッドには横になる頭部が包帯グルグル巻きの伊崎カナエ。
イスをベッドの横に置き座る。
「伊崎、あなたには誰も見舞いに来ないのね?(^^)」
「そりゃそうだろ? 自分にダチなんていねえし家族もいねえし」
「そんなんで無敗街道て呼ばれて、楽しいかい?(^_^)」
「……京極に負けたから、もう無敗じゃないけどな?」
「本当は京極に勝てたでしょ?(^_^) あなたが京極を殺す気だったらね? アイスピックの全ての刺さりが浅かったから京極は助かった(^_^)」
「うっ…うっ……ひひっううう…」
すすり泣く声を出し始めた伊崎は、顔をクリスチーヌから背ける…
「でもね、ワタクシから見たらね、京極とのケンカはあなたの勝ちよ(´▽`)」
「やめろ…んうっうう」
「あなたは少年院を出てから誰も殺してない。 京極に殺されそうになっても殺さなかった(^_^)」
「京極を殺せなかったんだ…… その時は、なぜか分からなかったんだけど… 後で声が聞こえた時に分かったんだ……」
「何が聞こえた(・・)」
「校長の…… この子を信じるの言葉……」
ワタクシは伊崎の腰に優しく手を置き、
「こっちを向いて、カナエ」
「いやだ……」
「おねがい向いて……」
伊崎は警戒するように、こっちを向いた。
「あなたに自由への洗礼を受けて欲しい」
「自由への洗礼……?」
「じつはねワタクシは子宮が無くて子供が産めないの…… だからあなたに、ワタクシの次の聖女カナエになって欲しい……」
「こんな自分が聖女?」
「あなたを信じてる。 洗礼を受けてくれるならワタクシの右手を両手で握って欲しい」
ワタクシは右手を差し出す、伊崎カナエは横になったまま両手でワタクシの右手を掴み、包帯を巻いた顔で、ワタクシを見上げている。
―――――自由への洗礼を与えた。
この後、伊崎カナエはドラッグを断った。
爪も噛まなくなった。