96話 東京連合 第7代総長 後藤朝子(聖クリ1年)
2週間後の5月28日
ドラッグと東京連合の幹部を得た新愚連隊『㷋天』が台頭し、東京連合は狙われる立場となった。
愚連隊ダンテの構成員は、都心で東京連合の構成員を見つけると『残党』と呼び、拉致したり暴行を加え東京連合入りを強制していた。
この事態は東京連合総長代理シャーロットの意欲の低下が大きく影響していた。
その日の夜……
渋谷の闇カジノ内
さんごはダンテの部下二人を連れて入場する。
部下が、薄暗い奥のスロットコーナーを指さし、
「親衛隊長、アレです、あのパチスロしてる金髪の二人は残党です」
「親衛隊長、ナイフを持ってると思いますよ」
『天上天下唯我独尊』の白の特攻服にテントウムシを模したヘルメットのさんごはタバコ(メビウスメンソール)を吸いながら、ターゲットの二人を見ながら、
「あの二人は強いんか?」
「東京連合では強い方です」
さんごはタバコをポイ捨てして、
「なら、カメラ撮っとけよ?」
歩き… 二人の後ろに立つ。
椅子に座る残党は、すでに後ろを向いている。
「テントウムシのヘルメット…? さんごか?」
「さんご… 田舎もんのクセに最近、調子に乗ってんらしいな?」
さんごは無表情に、
「一つ聞きてえ、なんでまだオワコンの東京連合にいるんや?」
「コッチには、あのシャーロットさんがいんだぞ?」
「シャーロットさんがヤル気出したら、またひっくり返るだけだ」
さんごはシャーロットの背中を思い出し、
「確かにアレは反則や……」
直後…… 残党二人が仕掛けてケンカが始まるが、さんごが一瞬で片付けた。
「あいにく… ダンテ親衛隊長のオレが京極茜をぶっ殺す」
倒れて動けない残党二人を見下ろし、
「オメエらより、ド田舎の高知のヤンキー(一葉・ヨミ)の方が遥かに強えぞ?」
部下二人を見て、
「ぼーっとしてねえで! この二人を運べや!」
「「はい!」」
さんごはカジノの店員に近づくと、
≪ひっ、警察には言いませんから!≫
ポケットから帯付きの100万円を出して、差し出し、
「口止め料と残党発見の報告料」
新宿の地下パーキング
対峙する東京連合のドーグ持った5人と、ダンテのドーグ持った5人。
ダンテの真ん中には、『渦』と背中に書かれた特攻服の細顔ちょぼ髭の長身の谷口サトル。 ニヤリっと笑い、鉄パイプで東京連合の5人を指し、
「ワシ一人で十分や…」
ダンテ構成員「特攻隊長? 5人ですよ?」
「ワシは最強や…」
谷口一人で進むと、東京連合が一斉に襲い掛かる!
ブン!!!!
唸る鉄パイプ!!
グシャ、グシャ、カン!! グシャ!!
崩れ落ちる残党4人!
ダンテ構成員「特攻隊長…強すぎだろ…」
残った残党一人は…
「ひっっ」
谷口に背を向け逃走…
谷口はダンテの構成員4人を見た後に、逃走する残党をアゴで指し、
「行け」
「はい! 逃げんな! 待ちやがれ!」
他の構成員4人は追う。
気絶し倒れた残党の一人の背中をドスンっとイスにして座り、タバコ(ラーク)を咥えて火を付けて、
「ス~~プハ~~ ホンマにしょーもないケンカや… 早く京極茜とやりてえ… それと…ワシの右手を切り落とした後藤朝子や…」
聖クリスチーヌ女子学園
校舎の4階の音楽室だけは明かりが点いていた。
東京連合のシャーロット、美園礼子、後藤朝子、伊崎カナエの並びで円状に椅子に座っている。
体育館地下のラボでブラックチェリーに敗れた伊崎カナエは頭部を包帯でグルグル巻き、包帯の隙間から両目は見え、ツインテールは飛び出している。
ダンテに狙われる続ける後藤朝子も頭に包帯をしている。 美園礼子も右手にギブスが三角巾されている。
シャーロットが口を開いた…
≪東京連合をワタシの名のもとに解散します、これで、あなたたちはもう狙われません≫
長い静寂の中…
プシュ
シャーロットの真向いの後藤朝子のストロングゼロを開ける音がした。
「シャーロット… アンタが捨てるならさ、アタイが東京連合を拾っていい?」
真向いのシャーロットはもちろん、美園礼子のギョロ目、伊崎カナエの包帯の隙間の目が後藤朝子に集中する。
シャーロットは、
≪後藤朝子さん、気持ちは分かりますが、これ以上は虚勢を張るのは止めなさい… もはや東京連合の構成員の残りは雷火の特務隊5名しか残ってません…… 片や、直美のダンテは数百です… 四国のトップヤンキーもスカウトしていると聞きます≫
後藤朝子は顎を上げてストロングゼロを、ゴキュゴキュゴキュと飲み干し、カンを後ろに捨てた後にシャーロットに上目使いのガンを飛ばし、
「そんな事ぁぁ分かってんだよ…? 肝心なのは…オメエがアタイに総長をくれるかなんだよ?」
≪負けて死ぬ覚悟を持って、東京連合の総長になる気ですか?≫
「負ける? 死ぬ? アタイがダンテを潰せば、アタイが文句無しの全国制覇だろ?」
シャーロットは覚悟を決めた後藤朝子の目に、暴走族修羅の頃の宮本晴彦がサングラスを外している時の目を思い出し…
≪まさか? あなたは… (京極茜と直美は母似だけど…目も顔も宮本晴彦に似ている? 性格も15歳の時の宮本晴彦に似ている)≫
「くだらねえ事を聞くなよ?」
シャーロットは立ち上がり…
胸の隙間から古い鉄警棒を取り出した…
それを後藤朝子に差し出す。
≪東京連合初代 宮本晴彦の鉄警棒、それは東京連合総長の証、受け取りなさい≫
ガッチリと握った後藤朝子、
「ああ、他の誰もいらねえんなら、貰ってやる…」
シャーロットは歩み、音楽室から出る間際、
≪ワタシの時代は終わりました。 音楽室の電気は消しておいてください≫
言い残し、去った。
三角巾を引きちぎった後に、ギブスを床で叩き割った無傷の美園礼子は、後藤朝子を見つめ、
「アサコ、ウマクイってヨカッタナ?」
頭の包帯を外す無傷の後藤朝子は、
「美園、神奈川を仕切ってるオメエは、神奈川の兵をどれくらい東京に連れて来れるんだっけ?」
「100人、軽くイケル」
「アタイの千葉連合からは150」
美園礼子は伊崎カナエ(埼玉)を見て、
「伊崎はドウスル?」
伊崎カナエは席を立ち、
「抗争なんてくだらねえ… 自分はヨコタマに復讐するだけ…」
去った。
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ダンテのブラックチェリー(横山直美)
東京連合の後藤朝子
京極茜
三人は異母姉妹
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