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1話 入学式(上)


 ブ!ブ――――――!!


「zzz……ん?」


 ブ!ブ――――――!!


 アパートの外からの、うるせえクラクションの音で目が覚めた。


 ドン! ドン!! 


 安全靴けんかグツで蹴られる薄い板のドア……


 ちっ


 せんべえ布団から出てドアを開けると、


「おい! 京極! 遅刻だぞ!!」


 赤く染めたボブヘアー、鼻から下を隠す迷彩柄のバンダナ、服は白の特攻服。 その特攻服はアタシには読めねえ漢字がたくさん書かれてる。

 これから同じ聖クリに通う、目の前の赤銅聖羅しゃくどうせいらは身長165センチだから、174センチのアタシの顔を見上げて、

「先に学校行ったら姿が見えねえから! 家まで向かいに来たんだよ!」


「あ? もうそんな時間か? スマホはもちろん、テレビも時計もねえから時間が分かんねえ」


「入学式は9時からだ。 もう始まってっぞ…… 早くしろよ? 聖クリの校長が、京極に出した少年院(ネンショ―)出所の条件が、聖クリで学園生活して聖クリを仕切るだろ?」


「はいはい、痔の校長との約束だな、ちょっと待ってろ」


 上は裸のアタシはドアを開けたまま、黒の生地、背中に金色の『卍』の刺繍のスカジャンを拾うために歩き、それを着て前のファスナーを閉める、


「そんじゃ行くか、聖クリを仕切りに」


「ドーグ(武器)は? タバコは?」


「あ? 忘れてた」


 部屋に戻って、鉄警棒を拾ってズボンのポケットに入れ、畳の上のセッタ(セブンスター)も手に取りスカジャンのポケットに入れ、ネンショ―入る前から使い続けてるアタシを捨てた親父の形見のガス切れかけの100円ライターもポケットに入れた。


「赤銅? お前ドーグは?」

 

 赤銅はポケットからスタンガンを取り出し、ジジジジジと青白い電流を見せつけ、

「最新兵~器♪」

 嬉しそうに目を垂らす。


 シューズを履いて、部屋を出ると、狭い道路沿いの今時フロも無い畳六畳と流し場と溜め便だけのボロアパートの1階だから、すぐ目の前に赤銅の単車バイクがある。

 赤銅のチャリ時代からの指定席の後ろにまたがり、左手で後方のフレームをガシっと掴み。

「赤銅ぶっとばせ」

「おっけ」

 もちろん二人ともノーヘルだ。






 大型体育館では聖クリの入学式が行われている。


 二階の東側観客席の三年生達の制服は黒色。

 対面の西側観客席の二年生達の制服はエメラルドグリーン色。

 下に立つ新一年生達の制服はワインレッド色。

 全校生徒が集った大型体育館の壇上では、金の巻き髪で長身のシャーロット教頭(40代)がスピーチを、


≪我が校は二種類の人間に分かれます。 狩られる小動物と狩る猛獣≫


 白のローブ姿の教頭は後ろに立つ、金属バットを肩の上に置き構える身長185cm110kg、たらこ唇のソバージュ髪のエラの張った女を手の平で指し、


≪この鬼ヶ原美鈴おにがわらみすずさんは、聖クリスチーヌ女子学園の生活指導部長であり、番長でもあります…いいですか? 新一年生のみなさん、ワタシと生活指導部に歯向かうと死にますよ。 これワタシ善意で申しておりますからね? おーほっほっほ!≫


 シャーロット教頭のスピーチを体育館の音源つきライブカメラから、クリスチーヌ校長は校長室でノートパソコンで見ていた、


       バン!!


 テーブルの上に強くオロナインを置く!


「京極~~ とてつもない大枚はたいて少年院から出したのに~ 逃げた~? なにが夜露死苦よろしくなのようぅぅ(*´Д`)」


 画面に映る、ニチャ~な笑みを浮かべる教頭を見つめ、



「なんで今までの教員の中で、教頭だけイジメられない? なんで~?('_')」


 その時!

 京極茜を後ろに乗せたバイクがパソコンに映る!


「キタ~ ワタクシの京極キタ!! でもバイクで体育館!? 『卍』のスカジャン!? まあいいか!! ワタクシの学校もう腐ってるし!!(*'▽')」


 興奮してオロナインの蓋を回しながら、ノートパソコンを見る。




「避けろ!!」

「アブね!!」

「なんだよ! あの女二人!?」

「スカジャンに特攻服?」


 体育館をグルグルと走り回る二人乗りの単車を、悔しそうに見ている一年生の女がいる。長い茶髪に、高いヒール、黒のビキニの水着の上には… 背に黒の筆字で大きく『全国制覇』と書かれた白い装束を羽織った…


 後藤朝子(163センチ)


 右手に持った木刀をプルプルと震わせながら、


「アタイより… 目立ってんじゃねえ!!《●》《●》# 」


 赤銅の操縦するバイクは壇上の下で止まる。

 赤銅は頭を上下に揺らしながら、カラ吹かす!!

 後ろの京極は降りて、


 パタンパタンパタン


 薄汚いシューズで壇上に上がり、教頭の目の前に来た。


「マイク使うから、どけ」


≪どきません≫


 にらみ合う、京極茜と教頭シャーロット。


 京極、ズボンの中から鉄警棒ドーグを取り出して、ソレを伸ばした。

「なら……ぶっ殺すだけだ」


≪ちっ…≫


 教頭は下がる…

 番長美鈴とすれ違いざまに足を止めて… 小声で、


りなさい……≫


「ういっす」


 美鈴、ドーグの金属バットを脇に閉めて、右コブシを左手を押さえて、

「あいつ生意気だから殺す……」


 ボキ!!ボキ!!ボキ!!ボキ!!


 指を鳴らす美鈴を見た教頭は、またニチャ~っと笑った後で、


≪鬼ヶ原美鈴さん? ラクに殺してはいけませんよ? 1年生への見せしめにしましょう。 聖クリスチーヌ女子学園 名物『殺死愛タイマンデスマッチ』です」


「ういっす」


 教頭は美鈴の肩をポンと叩き、

≪心配いりませんよ、替え玉を自首させますからね≫


「あざっす」


 美鈴は金属バットを右手に、京極に歩み寄る。


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