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潰走

 知良は郭裕に追い立てられるように、街道を目指して移動していた。あたりには混乱した兵たちがお互いに罵声を浴びせながら、我先に自分たちの街に向かって戻ろうとしている。


 手にはもう槍も、剣も、盾もない。みな放り出してのまさに潰走だ。ともかく父のいる本陣に合流しようとしているのだが、それすらまだ果たせずにいる。


 郭裕は周りにいる兵を馬で威嚇しながら、なんとか知良を先に進めようとしているが、誰も自分の事に精いっぱいで道を開ける者はいない。郭裕もさすがに兵達を馬で踏みつぶして先に行くことはできずにいた。


 背後で大勢の人間の雄叫びが上った。振り返ると一の街の者達が砂塵を上げて、森から出てきたマ者の群れに向って突撃している。


「やつら、マ者に立ち向かっているのか?」


 馬上からその様子を見た郭裕が驚いた声を上げた。その声に反応した何人かの兵が、自分たちの背後で起きている光景を見て唖然としている。知良は血の味がするほど強く己の唇をかんだ。


 自分の思い描いていた英雄譚と全く逆じゃないか。夢の中の敵の群れのように自分達は街へと逃げ帰り、その敵は逃げる自分達を捨て置いて、その槍で森からあふれたマ者たちを狩っている。


 全くもって逆だ!


 いったいどうして俺の初陣は、こんなことになったんだ!?

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