秘密の二人
「テレビ見た? 話題の高校生社長の!」
「見た見た。めっちゃ格好いいよね~」
最近またテレビの取材が増えた。勿論社長業として。新たにアイドルを起用した自社CMと会社の売り上げが好評で『敏腕社長』としてテレビに出る。この時は昼間の撮影なので土曜日に撮ってもらった。
「どうですか? 高校生活と社長の両立は」
「大変ですけど充実しております」
「松尾社長のインタビューでしたーっ。ありがとうございましたーっ」
そして取材を終えスタッフ達が片付けをしていると、テレビの関係者が来て、
「次は密着取材したいんですけどどうでしょうか?」
「いやいや、それは勘弁してください!」
そんなことされたらクラスの生徒に僕の正体がばれてしまう!!
「そうですか~、分かりました。気が向いたら連絡下さい」
「あ、はぁ~、まぁ」
僕から離れながら彼は小声で全く、これを撮れたら他社と差が離せるのに……とぼやいた。まぁ、どこの会社も一緒だなーっ。
「社長。次の予定が宮間会長との会食です」
「分かった。準備するよ」
そして僕は高級料理店に向かう。
週明け学校が始まり、次は貿易の会社のCMをどうやったら出来るか学校で色々と模索していると、
「日曜日見た? イケメン若社長のドキュメンタリー」
「見た見た。何か色々打ち合わせしてたよね。それに社長自ら外回りもしたり」
「若いのに凄いよねーっ。尊敬しちゃうっ」
「分かるーっ」
「ああいう人ってどこの高校言ってるんだろう」
「やっぱり超お金のかかる私立じゃない?」
本当はここなんだけどね。
「ああいう頭の良くて出来る人と結婚したいーっ」
「分っかるーーっ。私もしたーい」
え、まじ?
「けど競争率高そーっ」
「結婚は無理なら愛人でも良いから付き合いたい」
え? 本当に? 愛人でも構わないの?
「でももし出来たら社長夫人よね!?」
「きゃー、やばーっ!!」
ほ、ほう。社長だとこんなにモテるのか……。
周りの女子の話を聞き耳しながら、つい妄想に拍車をかけていると、
「は? 陰キャが何かニヤついているんだけど」
「やば。キモッ」
え? 僕との結婚話してたんじゃないの!? としょぼくれていると、スマホがバイブで揺れる。見るとラインが来ていて加納からだった。
『12:30過ぎに屋上に上がる階段にて待つ』
(ん? 何の用だろうか?)
そしてご飯を食べ終え僕は颯爽とクラスから出てそこに予定の10分前に着き、本を読んだ。僕は誰にも意識されずここにこれるが、あいつがまずあのグループから脱出して人の目を掻い潜りここまでこれるだろうか?そして待っていると、眼鏡をかけそれを少し髪で隠した地味そうな女が来た。
(誰だこの女?)
「松尾っ」
「え!? 何で僕を知って……」
「ぷっ、くくく……」
「え?」
「私だよ私!」
「あ、加納!?」
誰か全然分からなかった。
「松尾が分からないんだったら大丈夫かな?」
「いつの間に……。クラスでは普通だったのに」
「トイレで準備した」
スーパー〇ンかな?
「どう私の変装は?」
「凄いな、地味な子に感じた」
「ふっ、ふーん。これも演技経験の賜物ね♪」
確かに、彼女は地味子を演じていたのか。芸能人オーラもなかったし、流石は女優っ。
「で、どうしたんだここに呼び出して」
「落ち着きたいの偶には」
「え?」
「皆と囲まれて話すのも楽しいけど疲れるのよね」
「そ、そうなのか……」
学校の同級生に囲まれたことないから分からない。あっ、中学の時は確か囲まれてたな、別の意味で……。
「気が抜ける時も必要だから」
「まぁ、確かに」
「貴方だったらまんまり気を張らなくても大丈夫だから」
「そ、そうか?」
「うん。もし嫌な面見せたとしても人間関係の被害少なそうだし」
彼女は笑いながら言う。
(あ、そういうことね)
「まぁ、偶には貴方とも話したいし」
「そうか?」
「えぇっ」
僕が学校の同級生に人間関係で頼られた感じがして、ほんのちょっぴりだが嬉しかった。
「ところで……」
「ん?」
「最近よくテレビ出ているわねっ」
「あぁ、まあね」
「忙しいんじゃないの?」
「まぁ、秘書が上手く時間管理しているから、その合間に撮影してもらっている」
「クラスでも何人かの特に女子が貴方の話題を話していたわ」
「そ、そうか?」
僕は笑ったつもりだったが、
「何鼻の下伸ばしてニヤけているのよっ?」
え? そうかな?
「ふーん、何考えているのかしらね。気持ち悪い」
「きも……、うるさいなっ!」
僕はふん、そっぽを向くと、よしと言って彼女は立ち上がる。
「やっぱり貴方と話すのは良いわねー、気分が晴れて楽しいわっ!」
「憂さ晴らしかよ!?」
「違うわよ。これはこれで普通に楽しいのっ」
「さいですか」
「偶には学校で貴方と二人でこっそり話したいわ」
「えー、僕はやだなー」
「何でよ!?」
「揶揄われそうだから」
「分かった分かった。気をつけるから」
「ったく」
「じゃあ、また」
「おう」
そして変装した彼女を僕は見送り、もう少しだけここで本を読む。
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