女神様は説明上手
異世界転生って言っておきながらまだ異世界に到着していないと言う長丁場。次回辺りには異世界に片足突っ込むと思いますので気長にお待ち下さい。
長藤さんが色々と準備をしてくれたおかげで、何とか日を跨がずに転生が行えるとの事だ。魔方陣と他にも体の健康状態をモニタリングするものがある、と言っていたのは長藤さんの談。
『まず、此方から行く世界についての説明を軽くしますね。』
長藤さんがモニタリングをしているらしい部屋からマイクで話しかけている。確かにカタログとかで写真などは見たけどもう一度念のために聞いておこう。損ではないはずだ。
まず、世界の名前についてだ。
転生先の世界はティシュヴァンフォーレ、
と言う名前がついているらしい。
転生先の管理する神様の名前はフォルトニア
と言うらしいが、まあ会えば判るとの事。
まずはその神様から話を聞いてから転生先へと
送られるので、チュートリアルみたいなものが
間に挟まると言った感覚で大丈夫だそうな。
そんな話をしていると魔方陣が光り出した。どうやらもう出発になるようだ。お世話になった長藤さんに手を振ると長藤さんも笑顔で振り返してくれた。短い間だったけど、また、会えると良いな。そう思いながら魔方陣から自分の姿は消えて行った。
『なあに、必ず君とは会えるとも。私は
君を逃がさないからね。』
聞こえてないのは判っているが、一言ぽつりと長藤に成り代わっていた毘舎慈が呟いた。隣にいた美穂津はため息をついた。
この上司は駄目な所が多すぎる、と。
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暫くしてから目を開けると、何故か真っ白い空間でふわふわと浮いていた。まだ異世界に着いていないのだろうか?きょろきょろと辺りを見回してみるが今の所は誰もいないようだ。
『ようこそ、異世界へ。新しいお客様。』
不意に女性の声が聞こえたがどこからなのかは判らないけど、近くからは聞こえている。
(どこにいるのかな?あ、もしかして声だけなんだろうか?)
『そうですね、姿を見せても今の貴方ではきっと見えないと思いますので…。失礼ですがこのままでも構いませんか?』
やはり声だけで姿は見えないらしい。今すぐに姿が見えないといけない訳ではないし、難しいのであれば仕方ないだろう。そう思い頷いた。(体が視認出来ていないのでちょっと判らないが)まだ異世界にたどり着いてはいないので大人しく女性の説明を聞く事にした。
『私の名はフォルトニア、ティシュヴァンフォーレを管理、守護する神です。貴方方から見れば、異世界の女神と言うことになります。』
(えっと、お世話になります。ボクは…。)
『瑞穂さんですね、日本の神の方からある程度はお聞きしています。ここからはあなた様が転生される世界について簡単にご説明致しますね。』
女神様はどうやら日本の神様から大体の事は聞いているそうなので、ティシュヴァンフォーレと言う世界について判りやすく(多分)説明をしてくれるそうなのでしっかりと聞いておこう。まずは全く別の次元にあるので地球ではない、と言う事だ。ただ、環境などは人間が暮らすのにとても適しているので生きていくのは問題ないらしい。次に文明だが、流石に近代的な訳ではない。中世より少しは進んでいるくらい、だとか。馬車や紙が普通に普及はしている、との事なのであまりに発展していない訳ではないみたいだ。次は種族について、人間、獣人、エルフ、ドワーフ、リザードマン、その辺りまでは人間と共に普通に街で暮らしている。冒険者だったり、商人だったり、職業も様々で、国によっては扱いが多少違うかもしれないが、異世界に行って直ぐに出会う訳ではないので、向こうで見かけたら再度説明をしてくれるそうだ。確かに中にはなかなか出会えない種族もいるだろうし。国の数は大小合わせて10ヵ国ほど。また、小さくても日本よりは土地が広いとの事なので移動には馬車か魔法を使うのだとか。
(魔法があるって事は剣と魔法の世界なのかな?)
『ええ、貴方の世界から言えば正にその剣と魔法の世界になります。素質があれば子供でも簡単な魔法くらいは使えますから。』
(なるほど、剣があると言う事は魔物もいるんですか?)
『おりますね。街の周辺には弱いものしかおりませんが、森や洞窟などには強い魔物もいるようです。勿論、まず近付く事はありませんが。』
確かに、転生して直ぐに強い魔物と出くわしたらまず転生の意味がないだろうし。魔物については横に置いておく事にした。国や国に暮らす民の人々についてだ。これが重要らしい、転生先は異世界の国の民になるからだそう。記憶とかはどうなるのか、と聞こうと思ったけど、その辺りも説明するそうなので、続きを聞こう。転生先の国の名前だが、ウィシュトヴァラ王国…の隣国になるらしい。ウィシュトヴァラとは、ティシュヴァンフォーレにおいて、二番目に大きな国でかなり栄えているのだとか。二番目とは言え、フォルトニアからの寵愛を度々受けているので栄えているそうな。寵愛、と言うのはフォルトニアが国の王様や神官長などに世界に何かがあった時にアドバイスみたいに声をかけるのがそうなる。大抵そう言うのは【神託】として世界に伝わるから強ち間違いではないのかもしれない。それで、転生先の隣国だが名前はアムルーシュ公国。ウィシュトヴァラ王国の王様の親戚にあたる貴族がその国を治めていて、王弟の従姉妹がアムルーシュを治める公爵に嫁いだので今はそこの公爵夫人になっている。公爵夫人の名前はユスティーネ、元アシュヴィヘス侯爵令嬢で、アムルーシュ公国の后妃様になるが、公国はそこまで大きな国ではないらしい。王国と違って都会って感じではなく、ちょっと郊外みたいな場所になるそうだ。とは言っても栄えてない訳ではないので問題ないらしい。先程名前が出たアムルーシュ公国を治める公爵様だが、タールベルク公爵と言う名前で、子供が三人くらいいるそうで、その公爵の元へ転生先が決まったとフォルトニアがはっきりと言った。え?公爵様の元に転生するの?マジで?
『大丈夫ですよ、記憶とかは回りにちゃんと合わせて違和感のないようにしますから。貴方は向こうに転生したら危険だったり、不信がられる事のない生活になります。』
女神様いわく、安全性はピカ一にしてあり、皆親切に、愛情を持って接してくれるので心配はいらない、と断言している。本当に大丈夫なんだろうか?
『大丈夫ですって、私からの祝福やギフトもつけて、向こうでの言語、読み書きは標準で判るようにしておきます。』
身元も特に問題ないようにしてある、と力説されてしまった。そう言えば、長藤さんの言っていたポイントとかはどうなるのか聞いてみたら、好きな動物を守護精霊としてつけるし、ポイントも余っているので転生してから、向こうにある女神像で祈れば話ができるそうなのでその辺りは多分大丈夫なのだろう。まあ、そこまで念押しされてはここでごねても仕方がない。潔く転生先に送ってもらおう、目を閉じて女神様が『はい、それではお気をつけて』と言う言葉と共に数秒後にはすやすやと眠ってしまっていた。多分目が覚めたらもう異世界なんだろうな、とは思いながら眠りに身を任せた。
簡単な人物紹介
フォルトニア:ティシュヴァンフォーレって言う世界の女神様。一人で管理しているそうだが、それ以外の神様も一応いる。主人公の異世界転生の処理と説明回のMVP。多分だいぶ懇切丁寧に主人公に説明している女神な気がする。日本の神様=毘舎慈様です。次回からはフォルトニアがもう少し活躍します。(多分)




