紅葉狩りIN異世界
あれ、似たようなサブタイトル前に
付けてなかった?と言われるかも
しれませんが、サブタイトル考えるの
毎回悩んだ結果なので、あまり気にしないで
下さるとありがたいです…。
紅葉狩りを広めようと頑張る主人公と
思ったより規模が大きくなる感じのお話です。
秋が終われば当然ながら冬が来る。地域や国によって多少のずれはあるかもしれないが、大体地球ならば11月に入れば冬ももうすぐだな、と思う時期ではないだろうか。ティシュヴァンフォーレにおける11月はシトリンの月と呼ばれているが、シトリンの月に入ると、流石に朝晩はかなり冷え込む日もあって、寝巻きの上からストールやショールを羽織ったりする日も徐々に増えて来ていた。初旬はそこまで寒くないのだが、中旬になって来ると流石に秋物はそろそろ仕舞おうか、となって来る訳だ。
フィーリルトン学園に向かう馬車や学園の中の教室、行事とかで使われる多目的ホールなどでも暖める為の空調型魔道具が稼働しているのを見かけた。そうだよね、外に出たら息が白くなるくらい冷えるなら暖房もつけるよね。特に朝と夜は冷えるので、暖かく過ごしたくなるものである。冬が近付いて来てから気付いたのだが、今年こそは、と思っていた紅葉を見に行けてない。何と言うか、この世界だと紅葉を見て楽しむ、って言う習慣がないので、私もつい頭からすっぽ抜けていたのだ。
フィーリルトン学園からの帰り道、馬車から山の方を見れば、確かに木々は色づいて来ていたので、まだ間に合うかもしれない。そう思った私は帰宅してから、早速お母様に許可をもらう為に行動し始めた。一昨年撮影したフォールリーヴスの写真を手元に用意して、これだけ美しいのだから、秋から冬にかけてはこれを見て楽しむと言う習慣があっても良いのではないか、とお母様を説得してみた。結果的に、そこまで言うなら…と、お母様、デルフィーナ姉様、パトリシア姉様、ハインリッヒ、ディートハルト、ファニタ、ジーナ、そしてお屋敷の衛兵を数人連れてディオブノス山へと出掛ける事になった。
ディオブノス山は前にも言ったように、登山愛好家や、ハイキング好きな人がよく来る比較的安全な山だ。魔物もいないし、静かで時々鳥や鹿を見かけるくらいで、目に入る景色も紅葉していたり、黄葉していたりする木々がたくさんあって、ついつい魅入ってしまう。春や夏と違って、これはこれで需要がありそうだ、とお母様も思ったみたい。開けた場所にある湖のほとりで休憩がてら紅葉を見ながら屋外でティータイムとなった際に、これは貴族でも取り入れても良いかもしれない、と呟いた。
「これが紅葉…見事なものですね。確か、賢者様がこれらの木々が赤や黄色に色づくのを『紅葉』だとおっしゃった、と言っていましたね。」
「はい、お母様。私は賢者様の文献を幾つも読んだのですが、紅葉を見て楽しむ風習がセレネドナにはあった、と書かれていました。」
「この辺りには確かにない風習ですね。ですが、これだけ美しいのですもの、きっと私達以外の方々も楽しいと思う事でしょう。」
湖には綺麗に紅葉したフォールリーヴスが鏡のように映し出されていて、より美しさを際立たせていた。折り畳み式のテーブルや椅子を馬に持たせて持ってきたからこそ、こうしてティーセットも準備してちょっとしたお茶の時間を取る事も出来ているし、恐らく、世の中なは収納魔法とかもきっとある筈なので、難しくはない気はする。貴族の人ならそれのりに人手も馬も持ち合わせているだろうから、こうして開けた場所でお茶が出来るように少しは人の手を入れたら、もっと紅葉を楽しむ人も出てくるのではないだろうか。…そうお母様に言ってみたら、何故かお母様は頷きながら思案している様子だったので、どうしたのだろう、と思っていたがその日はお茶とお菓子を食べて楽しくお話をしただけで普通に帰る事になった。気のせいだったのかな、と思っていたら、数日後に事態は大きく動く事になっていた。
何と、登山愛好家とハイカーをディオブノス山の開けた場所に呼び、こう言った場所がある、と林業を生業にしている人も一緒に連れてきて、仕事の合間を縫ってお父様が説明し始めたのだ。しかも、発案者は私なので、同席する事態にまでなっていて、急展開過ぎて暫く思考が停止するくらい追い付けないでいた。いや、そりゃあ広まれば良いな、と思ったけど、まさかここまで本格的にやるとは考えていなかった。だが、お母様からお父様に話が行って、紅葉を楽しむ為に多少なりとも山に人の手が入り、人が来やすくなると言うのであれば、私もお母様達を連れて行った甲斐があったと言うものだ。それから、何日かに分けて話は進められて行き、今年は一部の人達だけになったけど、来年からはもう少し紅葉を見に来る人も増えるだろう、と今回の説明を聞いて山に来た人々も言っていたので来年を楽しみにしておこう。今年は登山愛好家とハイカーの人と林業を生業にしている人が来て、山に紅葉を見に来る人がここに来やすくなるにはどうすれば良いかって話し合いや、どこに手を入れれば良いかなどを考えたりしていたら、シトリンの月が終わる時期に突入していたので、早い場所だと紅葉した木々がもう散り始めていたりする。それもあって、残念ながら楽しむ人が増えるのは来年になりそうだ。こればかりは最短で何とか出来るものでもないので、ゆっくり広まって行ったとしても、そのうちたくさんの人が見に来るかもしれないし、それで良しとしよう。
そう言った小さな変化もあったが、季節は滞りなく巡って行き、日々が過ぎて行く。小さな変化と言うには規模が大きかったような気もするけど、そこは気にしないでおこう。気付けばシトリンの月が終わりを迎え、ターコイズの月が始まろうとしている。地球で言う所の12月なので、もう本格的に冬と言っても差し支えないだろう。ターコイズの月は半ば辺りに冬季休暇が入るので、もう少ししたら屋敷で過ごす時間の方が長くなる。また、時期的にも布団付き暖房魔道具がリビングルームに置かれていて、活躍する季節でもある。誕生日以降、一部を除いて何て事のない日常が続き、ターコイズの月の半ばに突入すれば学園に行くのははまた来年、となり、オルテンシア様とカトリーナ様と一緒に話に花を咲かせながら帰宅の途に就いた。帰宅してからリビングルームに足を運べば、布団付き暖房魔道具にはジュリエッタが潜り込んでいたので、冬らしいな、とは思う。そうして、冬の短いような長いような休みの日々が始まれば、年末年始も、パトリシア姉様のデビュタントも、もうすぐなのだな、と実感しながら先に宿題を片付けてしまおうと、机に向かうのだった。
紅葉狩りに母親や姉も連れて行ったら
気に入られて父親まで影響した、って言う話
でした。両親は主に父親が娘に甘い気がします…。
まあ、このお話以降、徐々に紅葉狩りも
花見と同じように広まる予定です。
前回よりちょっと短めな気もしますが、
多分普段この長さが普通なので
要はいつも通りって事です。
次回は何時ものように未定なので、
気長にお待ち頂ければ幸いです。




