わくわくの夏、情熱の夏
毎度の事ながらサブタイトルに悩みつつも
上手いタイトルが思い付かない事が多くて
出来るだけ中身に沿ったタイトルにしよう
とは思っています。
いよいよ夏の風物詩になってしまった
パトリシアの誕生日と、アムルーシュの
湖や川についての解説もあるお話です。
そして比較的長くなった気もします。
ティシュヴァンフォーレでは、カーネリアンの月に入れば大体が夏だと言える。まあ、中には季節が逆転していたり、亜熱帯だったりする地域がどこかにあるかもしれないけれど、少なくともウィシュトヴァラとアムルーシュではカレンダー通りの季節となっている。
前にも言ったかもしれないが、ティシュヴァンフォーレにもカレンダーの概念や紙が存在しているので、判りやすくて非常に助かっている。アムルーシュは自然が豊かな場所も多いし、土壌も良いらしいので農業が盛んな地域が多数存在している。果樹園に畑、広い湖も川もあるので、食べ物の値段はそこまで高くないのも過ごしやすさに比例しているんだろうな、とは思う。
絶賛夏期休暇に入ってまだそんなに経ってないけど、アムルーシュの土地柄とかの話が出たので、折角だから農業や漁業について話しておこう。農業に関しては、果樹園や小麦畑など、色んな作物を作る為に人口の半分近くが農家さんだったりする。そして全体の3割が漁業に従事しているんだけど、アムルーシュには海はない代わりに大きな湖と川があるんだよね。その中でも特に利用されている川と湖について紹介してみようと思う。アムルーシュは山が近いだけあって、麓に湖もあるし、その湖を囲むように出来た街がある。そして、その湖がユーネエジル湖。アムルーシュ最大の湖で、船もよくその湖を行き来している。生活排水とかがそこに流れて行ったりとかはないので、割と綺麗で魚も多く生息している湖なのが特徴だ。まあ、他の湖が綺麗じゃない場所なのか、って言うと違うんだけど。日本で言う琵琶湖より少し大きいくらいだから、その辺りの街と作りは似ているかもね。海はないけど、淡水魚とかは豊漁な事が多くて、あまり魚が捕れないって話は聞かないから、アムルーシュはかなり恵まれた土地なのではないだろうか。そして、川もかなり大きな川が流れているのだけれど、トラナデドネーと言う名前の川で、鮭らしき魚が捕れるのが特徴だったりする。他にも川でしか捕れない魚が捕れるし、湖と川のおかげで水源にもそう困る事がないので、恵まれた国に転生出来たのはとてもありがたい事だと思った。フォルトニア様には改めてまたお礼を今度言わないといけないな。地理とか土地柄に関しての話はふわっとしか話せてない気もするけど、要するに農業と漁業が盛んだけど、田舎過ぎる訳でもないのがアムルーシュだと言うのが伝えられたなら、それでよしとしよう。
それが夏期休暇に入って数日経ったくらいの日の寝る前の出来事だったので、気付けばすやすやと眠ってしまった私は久しぶりに夢の気配を感じていた。そう言えば、暫く夢でフォルトニア様に会っていなかった気がするので、ちょっと久しぶりなような気もする。
『ミレーナさん、少しお久しぶりになりますね。…いよいよ、あなたも節目である10歳にもうすぐなりますので、食パンのレシピももうすぐ手元に届く事でしょう。』
「…確か、以前に私の元に食パンのレシピを送るとおっしゃってましたものね…。」
『ええ、それがあなたの10歳の誕生日を境に、と言う事になっております。最近、自分でも少し料理に挑戦してみよう、とおっしゃる方が周りにいらっしゃったりしませんか?』
フィーリルトン学園の生徒は貴族の子息子女がほとんどなので、自分で料理をする、などと言う女生徒は聞いた事がなかったようにも思うが…。言われてみればこの1ヶ月くらいでちらほらとそんな話を耳にしていたので、そう言えば、と言う感じだ。手作りのお菓子を作ってお茶会で出していた人がいる、と言う話もオルテンシア様から聞いたので、敷居はそこまで高くないのかもしれない。ただ、貴族の令嬢が簡単に厨房へと入っても良いものか、とも思うので、そこは料理長とかと話をして許可をもらうしかなさそうだけれど。…そこは私自身が頑張って説得するしかないんだろうな。
「言われてみれば、何人かいらっしゃいますね…。私の友人は、作ったりとかしていないみたいですが、私自身はちょっと料理はしてみたい、とは思っています。」
『ええ、とは言っても本格的に、とまでは行かないでしょうから、料理長に食パンに関するレシピを提案してみる、くらいが妥当ではないでしょうか。』
「そうですね、そのくらいなら…。」
『では、短い時間でしたがそろそろ夢が終わる時間が来ているようです。また、ミレーナさん自身の節目になるような年齢が近付いて来た時にでも、お会いしましょう。』
にっこりとした笑顔でフォルトニア様は手を振っている。以前お会いした時よりも、淑女らしくなられましたね、と言う言葉を眠気に包まれながら聞いたかと思えば、再び私は深い眠りについていた。まあ、夢だったので、負担がそこまである訳でもないし、目覚めは普通に良かったから、あんまり重要な事を聞いた気がしないのは、複雑な気分でもあるんだけど。そこは気にしない方が良さそうだ。
夏期休暇は、私もパトリシア姉様も、お屋敷にある空調魔道具による冷房の効いた部屋で課題をこなしたり、趣味の時間を費やしたり、と言った過ごし方をしている。魔道具によるものだから、これを冷房と呼んで良いかは判らないけど、感覚的には冷房だし、他に呼び方も思い付かないのでそう呼んでいる。パトリシア姉様に至っては、前まで外に遊びに出掛ける回数の方が多かったのだが、去年辺りからあまりそう言う行動は少なくなって来ているのが一歩大人に近付いて来ている証なのかもしれない。15歳の淑女が確かに外ではしゃいで走り回るってのは、普通の家の女の子ならまだあり得たかもしれないけど、パトリシア姉様は貴族の令嬢だから流石にまずいと言うか、お母様を困らせるのは問題あるから、それも大きいような気もする。
ペリドットの月に入り、いよいよ15歳の誕生日を迎えたパトリシア姉様は、お母様から新しいドレスを貰っていた。マゼンタとコーラルの色合いが美しいドレスは、赤色が好きなパトリシア姉様にとても似合っていて、嬉しそうにくるくると回って鏡で何度も見ていた。お父様からはハインリッヒも持っていた懐中時計をプレゼントされていたのだが、なかなかのお値段がするものでもあるし、一気に大人の仲間入りをした気分になれるものではないだろうか。フェリクス兄様からは、可愛らしい小物入れ…恐らく、アクセサリーを入れる為のものだろう事が判るデザインで、キラキラとした飾りなんかもついた女性らしいものだったので、これはこれで嬉しいものなんだろうな、と思って見たら、パトリシア姉様はさっきからずっと嬉しそうな顔しかしていない。デルフィーナ姉様からは、これまたパトリシア姉様の好きな色である鮮やかなローズカラーの靴だ。ドレスに合わせたパンプスは、これも何故だか大人っぽく見えるデザインな気がする。そして、一番最後に私からは手作りのブローチだ。ビーズとパールを散りばめたブローチは手作りとは思えないくらい綺麗なものをヘラルダに手伝ってもらいながら、作ったものだ。宝石とかはまだ私では手に入れられないので、そこは仕方がないのだけれど。
「ありがとう、ミレーナ。凄く綺麗なブローチだわ。」
「はい、ヘラルダと頑張って作りました。その、私ではあまり高いものは用意出来なくて…。」
「良いのよ、これで。ミレーナらしいプレゼントだわ。それに、高くなくても、ミレーナが私の為に用意してくれたんだから、有り難く使わせてもらうわよ。」
「ええ、とても素敵なブローチなのだもの。ドレスにも合うし、頑張ったのがよく判るプレゼントですよ、ミレーナ。」
パトリシア姉様とお母様の言葉に私は嬉し泣きをしそうになっていた。頭を撫でてくれているお母様の優しい手が、余計に嬉しさを強くしている。パトリシア姉様はお母様が贈ったドレスを着て、ブローチを胸辺りにつけて私に見せてくれた。高くないものでも、ドレスを違和感なく引き立ててくれているのが、部屋の灯りの光を反射させてキラキラとビーズが輝いているブローチだった。確かに、パトリシア姉様が堂々とドレスにつけていれば、宝石にも負けないくらいのものに見えてしまうから不思議なものだ。これなら、パトリシア姉様も喜んでくれたし、作った甲斐があったので、嬉しい限りだ。
斯くして、プレゼントの贈与が終わり、美味しいご馳走とケーキを食べて、楽しい誕生日パーティーは無事に終わりを告げた。更にこれは余談と言うか、お母様から聞いた話になるのだけれど、昨日どこかへパトリシア姉様が出掛けていた理由についての中身になる。確かに、やたらとおめかしして出掛けていたけれど、案の定メリアンヌさんがプレゼントを渡すから来て欲しいと言われて行った、と言うのは建前で、本当はベルラントさんに会いに行っていたらしい。まあ、婚約者だし、誕生日ならちゃんと祝いたかったのかもしれないね。その後、誕生日プレゼントを受け取り、軽くお茶会をしてから帰って来たそうなのだが、貰ったプレゼントがプレゼントなだけにかなり照れた様子で何を貰ったかをお母様に話してくれたのだそう。
やはりと言うか、ベルラントさんからは大きな花束と、指輪をプレゼントとして貰ったのだと言う。花束はソレイユと呼ばれる花で、地球で言う所のヒマワリの花だ。それが99本。花言葉は「永遠の愛」「ずっと一緒にいよう」、と言うのはティシュヴァンフォーレでも同じだった、と言うのをお母様とヘラルダから聞かされた。お母様も「情熱的ねぇ」と嬉しそうに微笑んでいたし、指輪もどうやらダイヤモンドだったので、余計にベルラントさんの本気具合が窺える。貰った当のパトリシア姉様と言えば…顔を真っ赤にして机に突っ伏して撃沈していた。恐らく、感情のキャパシティがオーバーしてしまって、もう何も出来ないのだろう。更にお母様から聞いた話で納得したのは、帰る前に好きな異性からストレートに愛の言葉を言われて、耐性がないパトリシア姉様はお礼を言ってカーテシーによる挨拶をして馬車に乗るまで何とか耐えるのが精一杯だった、との事。まあ、大変だったかもしれないが、幸せならそれで良いんじゃないかな。そうして、やたらと情報量の多すぎるパトリシア姉様の誕生日は無事終わりを迎えた。
パトリシア姉様の誕生日と言う風物詩を終えてからは、去年とそう変わらない夏期休暇だったように思う。カレンダーを確認すると、明日からはもうラピスラズリの月は15日になる事を示していた。残暑が残る中で、夏期休暇も終わりの時を迎えようとしている。私は余裕を持って課題などは終わらせておいたので、慌てたりとかはないが、学校が始まる、と考えるとどうしても未だに遠足前のようなドキドキワクワクとした気分になったままだが、眠れる筈だと信じながら、明日の始業式に備えて早めにベッドに潜り込んだのだった。
パトリシアがベルラントさんから貰った
プレゼントを元にしてタイトルに入れたら
こうなりました。
薔薇でも良かったけど、話の中では絶賛
夏真っ盛りなのでヒマワリにしました。
そして途中で気付きましたが、異世界の
夏休みは60日なので日付を調整しました。
未だに季節が追い付いてないですが、
追い付かせる為に頑張りたいです…。
また次回は未定なので、気長にお待ち下さい。




