パレードお祭りてんこ盛り
ちょっとサブタイトルに悩みました…。
みんな大好き薔薇の花、とかに
しようとしたのですが…何か違うなと
思って色々悩んだ結果こうなりました。
主人公が異世界に来て初めてのお祭り
なので張り切ったら割と長めに…。
フォルトニア様から夢の中で祭りの解説されて大体の内容を頭に入れてから3日後。エメラルドの月26日よりソルグレージュにてルフレット祭りが開催された。まだ開催初日はそこまで人が多い訳でもなく、盛り上がるのはムーンストーンの月第一週のジンの日から3日間が盛り上がるそうなので、私とパトリシア姉様、デルフィーナ姉様、お母様の4人で祭りを楽しみに行く事になった。
なお、残念ながらと言うか何と言うか、お父様は執務、フェリクス兄様は仕事で来られないと寂しそうに言っていた。何かお土産でも見繕って買って帰ろう。
そして地元のお祭りとはいえ、私たちは貴族なので一応護衛と侍女を連れて行かなくてはならないのがちょっと大変だけど、折角のお祭りなので楽しみたいと思う。
お母様とソーニャ、デルフィーナ姉様の話によると、ソルグレージュ産のロサ・ダマスクーナと言う品種は最良の香りと美しさを持つ品種らしく、オイルやジャムの材料、飲料水としてもよく使われているとの事。アムルーシュだけでなくティシュヴァンフォーレ中からこの花を求めに来る人が今の時期は特に多いのだそう。
ジャムにも使われているなら食用のルフレットも栽培されているのだろう。確かに地球でもサラダに花が使われたりもしていたから有り得る話だよね。ジャムにする時は煮詰めたりもするけど、何と、ルフレットを蜂蜜漬けにしてそれをかけて頂くパンケーキもあるらしい。それは是非食べてみたいが…出店などでもやっているのだろうか?ソーニャとハインリッヒが調べに行ってくれるらしい、あったら良いな。
どうやら店はあるらしいので私たちは他の一般客に混ざって休憩所のスペースで休憩を取りながらソーニャとハインリッヒが買いに行くのをのんびり待つ事にした。
のんびり待っている間に他の一般客の観察でもしてみようかな。私たちは顔とか外見がアムルーシュ国内では知れ渡っている為に、他の人は私たちをちらちら見ながら遠巻きに黄色い声を上げたりしている。え?何で知られているのかって?アムルーシュは前にも言ったけど、公国だから領主であるお父様が治めているんだよね。
それで、この国ではやたらとタールベルク家への信頼が厚い。厚いって言うよりは愛されているって言うのかな、まるでアイドルを応援するファンに似ている気もする。まあ、フェリクス兄様とかお母様は元からファンクラブとかありそうな美形と美人だし、判らなくはない。
そんな考え事をしていたら、ソーニャとハインリッヒが戻って来たようだ。手には美味しそうなパンケーキが乗ったお皿がある。これは期待出来そうだ。
ちょっと濃いめのピンク色をした蜂蜜漬けをしたルフレットとその上からホイップクリームが掛けられている。甘党には堪らない仕様だ。もちろん、私を含むお母様やデルフィーナ姉様、パトリシア姉様は結構な甘党でもあるからソーニャ辺りが気を利かせてくれたのかもしれない。まあ、甘党って言っても普段からお菓子は激甘と言う訳でもないんだよ、甘いものは大好きってだけの話だから。
パンケーキとルフレットの花を使った紅茶も美味しく頂いた後はいよいよ今年選出されたと言うルフレットの女王を囲んでの野外コンサートだ。
ルフレットの女王と言うのは基本的に歌やダンスが上手い人が選ばれやすいらしいから割と良い所のお嬢さんである確率も高い。それでびっくりしたのが何と、デルフィーナ姉様は去年ルフレットの女王に選ばれたらしいと聞いて、うちは凄い人をお嫁にもらったんだなぁ…と暫く感心しているともうそろそろコンサートが始まるので私は大人しく席についた。
野外で行われる割にはコンサートはなかなか本格的なものだった。楽団みたいなのがちゃんとステージの上に楽器などを持ち込んでやるコンサートなので、弦楽器や打楽器、ピアノまであるから私たちはかなり演奏と歌に聞き入ってしまっていた。今年のルフレットの女王と言うのはフィーリルトン学園の高等部三年生だと言うから、才色兼備と言うやつなんだろうな。演奏と歌が終わった直後、観客皆が立ち上がり惜しみ無い拍手を送った。スタンディングオベーションと言う訳だ。私に至ってはティシュヴァンフォーレに来て初めてのコンサートだったから、感動もひとしおだった。
「今年も素晴らしい演奏だったわねぇ…ふふ。」
「はい、私もそう思いますわ。マリエッタ様、とても美しくて歌もお上手だったので納得です。」
「デルフィーナ姉様、今年のルフレットの女王に選ばれた方をご存じなのですか?」
「ええ、実は私の後輩なのだけれど…。彼女、私みたいにルフレットの女王になるのが夢だった…って手紙に書いてありましたの。」
なるほど、去年はデルフィーナ姉様がルフレットの女王だったけど、それに憧れている人だったんだね。それはそうと、やはりデルフィーナ姉様もフィーリルトン学園の卒業生と言う事は、私やパトリシア姉様の先輩でもあるのか…。今度何か教えてもらおうかな?歌が上手い筈なのでそちらを主に今度教えてもらおう。
コンサートが終わったので、後はステージでプロではなく多分アマチュアで上手い人が演奏したり、それに合わせて踊ったり歌ったりと言うパフォーマンスが行われていた。そして、その踊っている人々の中に獣の耳を持ついわゆる獣人がちらほら混ざっていた。
私は思わず目を皿のようにしてガン見してしまった。しかも獣人さんも気付いたのか躍りが終わった後、かなり照れながらそそくさと去って行ってしまった…。ああ、どうしよう、此方がガン見し過ぎてしまったから、向こうも流石に恥ずかしかったんだろうと思うと申し訳ないなぁ…。しょんぼりしていると慰めるようにジュリエッタが私にすり寄って来てくれた。うん、ちょっと元気出た。お母様とデルフィーナ姉様は微笑んで私の頭を撫でてくれた。やっぱりまだまだ私は子供なので仕方がない事なのかもしれない。よし、気を取り直してお父様とフェリクス兄様へのお土産を考えよう。出店もたくさんあるし。明後日にはパレードも待っているのだし、楽しみはたくさんある。
帰宅した後にお父様にはルフレットをあしらったポーラータイをお土産として渡した。名称はループタイとも言われる略式礼装の一種だ。判らないって人は自分で調べてね。フェリクス兄様にはルフレットを象ったピンブローチだ。ピンクや赤じゃなくて銀色だからあまり目立たなくて良いね、と本人も喜んでいたしあれで良かったみたい。明日を跨いで明後日、賢者の祝日と呼ばれるいわゆる日曜日にはルフレット祭りは盛り上がりのピークを迎えていた。お客さんのテンションも最高潮だ。何しろ今日はルフレット祭り最大のイベント、ルフレットの女王と地元の人々が民族衣装を着てパレードを行う日だし、女の子や女性は出店で売っているルフレットの冠をつけて嬉しそうにしている。かく言う私やパトリシア姉様、デルフィーナ姉様も出店で買ったルフレットの冠を頭につけていた。高級と言う訳ではないが、おそろいの何かを身に付けると言うのは女の子でなくても嬉しいものだと思う。よし、今日は帰る前にこの冠とおそろいの髪留めでもカトリーナ様とオルテンシア様に買って帰ろう。
そうしてわくわくとしながらパレード開始まで祭りを楽しんだ後、ソーニャとハインリッヒが頑張って最前列をもぎ取ってくれたので有り難く観覧席に座り、賑やかで色彩豊かな民族衣装を着た女性達がやって来るのを楽器の演奏をBGMに待っていると、総勢3000人だと言う規模のパレードが始まった。民族衣装はそれはそれはカラフルでなかなかに可愛いデザインの衣装だったので、それも楽しみながら、真ん中を歩くデルフィーナ姉様とはまた違う系統の美人なルフレットの女王、マリエッタさんがルフレットをふんだんにあしらったドレスとルフレットの冠を頭につけてキラキラした笑顔で観客に手を振っている。流石はルフレットの女王に選ばれただけあって、そういうのもプロなのだろうか。凄いな、と圧倒されながら私たちはパレードを楽しんだ。
パレードが終わった帰り道、お母様とソーニャに相談してカトリーナ様とオルテンシア様へのお土産を買うことにした。髪留めとルフレットの造花で作られた冠を買ってから気付いたけど、ジュスティーノとルシウスにも何か買って帰るべきか、と考えてこっそりハインリッヒに聞いてみたら、ルフレットの刺繍をしたハンカチなどは如何でしょうか?と言われた。うーん、ジュスティーノならあまりやんちゃじゃないから判るけど、ルシウスも喜ぶものなのかな…。と考えたけど、ハンカチくらいならブレスレットみたいに身に付けるものとかではないし、男友達だから良いのかも。ジュスティーノには青色の刺繍、ルシウスには赤色の刺繍のものをそれぞれお土産として買うことにした。
翌日、フィーリルトン学園にて同じクラスと言うか担任のクレメント先生とクラスメイトにはルフレットのジャムやお菓子をお土産として渡した。クレメント先生もクラスのみんなもかなり喜んでいたから良かった。先生とクラスメイトの分はお母様が買ってくれたので、その辺りは前世と変わらないように思う。授業が終わった帰りにまずカトリーナ様とオルテンシア様に髪留めと冠をお土産として渡すと、嬉し泣きをしながら抱きつかれたので喜んでもらえたのは判るけど、ちょっと照れくさい。
勿論、ジュスティーノとルシウスにも予め買っておいたハンカチをお土産として渡した。ジュスティーノは優しく笑ってお礼を言ってくれた。何だろう、同じ年なのにこの落ち着きようは。多分将来きっとモテる要素を今から持っているとか、従兄弟は凄いなと感心した。ルシウスはかなり照れながらどうしてもって言うならもらってやる、みたいなツンデレ気味だった。後からジュスティーノから聞いたけど、女の子から何かもらうなんてあまり経験がないから、照れすぎてお礼を言えなかった、とお礼の手紙をもらった。照れくさくて面と向かっては言えなくても手紙でお礼を言われるのは嬉しいし、律儀なんだなぁ…とちょっと感心した。そしてそのハンカチはこれより何年か後にまた登場するのだが、それはまた別のお話。
簡単な用語解説
ルフレット祭り
ルフレット=薔薇なので
地球にもあった薔薇祭りを元にして
ティシュヴァンフォーレにも
取り入れたお祭り。
アムルーシュで毎年初夏辺りの時期に
行われるお祭りで、アムルーシュ以外の
国からもたくさん客が来ると言う
かなり大規模な祭りでもある。
一応花の祭りだが老若男女問わずに
楽しめるものでもあるらしい。
え?主人公がお土産にルシウスに渡した
ハンカチはフラグ?知らない子ですね。




