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地獄にも神はいるのです(多忙だけど)

いわゆる説明回です。

別の人物による視点からお送りします。

異世界へと行く前には幾つかの説明や実際の異世界を体感してもらおうと言う試みが地獄にはあった。此処は日本の地獄なので、日本人しか来ることはない。昔の人が考えたようなおどろおどろしい地獄を想像する人もいるだろうが、全部がそんな場所ではなかった。例えば、貴方が事故で亡くなったとしよう。それには勿論、貴方自身の不幸などが換算されるだろうが人間には人間の命運と言うものがある。巻き込まれた事故の場合は大人数が魂を回収されその時の記憶を引き継ぐ事のないまま次の生へと転生する。この場合は地獄を勿論経由するが、地獄へ行ったことやそこから輪廻転生をした事など思い出さないようになっている。ちゃんと寿命が一人一人存在するので、余程の事がない限りは亡者となり、裁判を受ける必要はない。ただ、天上にいる神々からの介入によりそう言った普通の人間が輪廻転生をせずに人間の世界から連れ出される事がある。日本神話ではなくとも、他の神話でよく聞いたことはあるのではないだろうか?ゼウスが人間の女性に手を出すように神々が人間を拐かす事もあるからだ。ここ100年程はそんな話は聞かないが昔はよくある話だった。今では神々による拐かしは稀であるのでそのような事をする神がいれば、余程暇なんだろうと思う者が殆どだからだ。




…と言う、長々と何を説明していたのかと言うと、日本の神にはそんな事をする暇などないので、人間を拐うと言う考えがよく判らないのである。誰かが言っていたが、よそはよそ、うちはうち、だと思う。何が言いたいのか判らなくなって来たが、ギリシャの神がする事は本当によく判らない。恋人やら愛人やらにする為にわざわざ拐うと言う主神がいた訳だが、いや、拐かした訳ではなかったような気もするけど。拐かし?なにそれおいしいの?状態だからだ。



『ギリシャがどうかしたんですか?』



おっと、どうやら声に出ていたらしい。地獄にいる神として最近は大量のデスクワークに忙殺されていた身としてはちょっとした気分転換をしたかったのが主な要因だ。部下が偶々話してくれた事だが、昨日珍しい転生案件があったというので本当に気分転換になればと思い資料を取り寄せたのを忘れていた。



『いや、ただの独り言だ。』


『そうでしたか、昨日お話ししていた資料をお持ちしました。』



上司の独り言を気にすることもなく机の上に転生者についての資料を置いて自分の仕事に戻って行った。まとめられた資料に目を通す。該当の人間は火災事故にあい逃げ切れずに命を落としたらしい。これだけならよくある話だ。しかし、火災報知器が作動したのに既に部屋は息をするのが難しい状況だったようだ。そして火元は本人の部屋からそれなりに離れていた、煙が回って酸素が足りなくなるまでにはだいぶ時間がかかるはずなのだが火災による異変が本人に伝わるまでが遅すぎた。両隣の部屋にある火災報知器が作動せずに時間がかかってしまったのだ。火元が別の階だったのにも関わらず偶然による不幸が重なりすぎた。人間ではない何らかの介入があるかとも思い痕跡を調べたが特に何もなかった。本来の寿命も手付かずのままとは珍しい。とんでもないレアケースを見るのはほぼ初めてではないだろうか?稀に見る地獄経由で異世界へと送らなくてはならない人間に正直気分転換以上の興味が湧いた。これは是非ともこの目で確かめたい。



『お呼びでしょうか?』


『この人間が転生課に来るのは何時だ?』


『明日の午後になりますが…毘舎慈(びしゃじ)様?』


『美穂津、転生課の担当を呼んで交代するように手配しておいてくれ。』


『先程の人間が気になるのですか?』


『なかなかいないぞ、こんなレアケースは。明日までに必ず仕事を終わらせる。』


『後から無理をしすぎて寝込んでも知りませんよ。普段しないようなオーバーワークなんて…。』


『そこはそれ、無理のない程度にするからな。』


『判りましたよ、担当の長藤には言っておきますから。』


『ふむ、明日はその名前を名乗らねばな。』



久しぶりに次の日が楽しみだと言う感情が湧いた気がする。遠足でわくわくしすぎて眠れないなどと言う子供のようにはならない為にもさっさと仕事を終わらせなくては。机の上にある読み掛けの資料にもう一度目を通す。地獄においてはかなりの珍客になるだろう人間の名前をもう一度確認しておく為だ。名前は、友井瑞穂、27歳、男性、婚姻はなし。日本人にしては背が高いのではないだろうか、だが筋肉質ではないのでひょろ長く見える。全体的に色白で顔色が良いとは言えないのは苦労する事が多いのかもしれないが、明日会うときには顔色を多少はよくしてから送り出してやろうと何となく心に思う。やはり疲れているのかもしれない、この人間の事が頭を離れない。会えば変わるのだろうか。




*********************





『初めまして、転生課・総務部に所属しております、長藤と申します。』


「えっと、は、はい。」


『本日より、友井瑞穂さんを担当する事になりました。宜しくお願いします。』


「こちらこそ、宜しくお願いします。」



お互いに握手を交わす。安堵した様子で肩の力を抜いて微笑む人間をじっと見つめるとこちらに好印象を抱いているらしい。異世界へ送り出すまでの短い時間、久しぶりに楽しく過ごさせてもらおう。

あれ、今までで一番長いぞ!?

別の人物視点によるお話でした。

長くなったので補足も含めて人物紹介を入れておきます。


転生課・総務部の長藤

主人公を担当する事になった獄卒。外見年齢は20代に見える。(人間ではないので見えるだけです)主人公曰く親切イケメン。

しかし本物の長藤さんではない。


毘舎慈(びしゃじ)

担当の長藤さんと入れ替わっていた地獄在住の神様。日本神話を調べてそこから名付けたので判る人には判るかも。多忙の中で気になった主人公と直接会うことで楽しんでいる。会ってみたら正直好みだった(色んな意味で)


美穂津(みほづ)

毘舎慈の部かで秘書。日本神話由来の女神から名前を借りて登場させました。冷静で落ち着いた女性。今後の出番はまだ不明。


更に補足、毘舎慈の一人称が決まりません。(割とどうでも良い)

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