夏期休暇は夏休みと同義語
主人公はいよいよ夏休みです。
お姉さんが勉強が出来ない子に
なりつつありますが、苦手なだけで
ちゃんと学べば成績は良いタイプです。
じっとしているより動くのが
好きなので座学が苦手みたいです。
本格的に夏に入る前に新しく召喚魔法で使い魔となったフレスベルグに名前をつけてみた。ずっと種族名と言うか、鳥としての種類の名前で呼ぶのはよろしくない。犬や猫の使い魔とを犬とか猫って呼ぶようなものだ。個体名は大事だと言うのがよく判る。使い魔の名前はエフィムとした。名前の由来とかは特にある訳ではないのだが、何となくこんな名前が良いなと思ってつけたので、ひらめきって意外と大事だなとは思った。エフィムがこの名前で不満はなさそうなのでこの名前で呼ぶことが決まった。
カーネリアンの月が始まり、本格的に夏が始まった事で衣替えも行われたので、過ごしやすい服装で暫くはフィーリルトン学園に通う事になっている。とは言っても、月の半ばになると夏期休暇が始まるので、それまでの期間と、夏期休暇が明けてから秋に入るまでの間だけになるのだが、暑いので夏服も大事だと思う。
まあ、それは既に夏期休暇に入っているから、この間までは制服が夏服だったよね、と言う話をパトリシア姉様としているだけだからだ。
「夏服は画期的だと思うのよ、普段の夏用のドレスも良いけれどね。」
「私も夏服はカーネリアンの月を過ごしやすいように作られているような気がします。」
こんな話題をパトリシア姉様としていたが、いつの間にか話は夏期休暇の話題に変わっていた。
夏期休暇に入ってから一週間くらいになるだろうか、私は課題の一つとして花の観察日記の為に花壇に花を植えた。夏に咲く花の観察日記をつけなくてはならないのは、毎日世話をする事で規則正しい生活に繋がるのを促すと言う理由もあるのだとか。確かに毎日何かの習慣がついていると、一日のスケジュールを決めやすくはあるかもしれない。私が今育てているのはアガパンサスと言う花で、青紫や白などの涼しげな花を咲かせるらしいので、夏に涼しげな花を見るのは少しは暑さが軽減されるかもしれないので、これにしてみた。苗木を植えてから今日で12日目、順調に育って来ているようだ。植物図鑑で見たときは、苗木から育てた方が良いと書かれていたので、それを参考に植えてみたが、多分もうすぐつぼみが出てきそうな気がする。やっぱり土魔法で花壇の土を花に合わせてみたり、水魔法で効果のある水を与えたからだろうか?花を育てる時に魔法は使ってはいけない、なんて書かれてないから、セーフだと信じよう。あ、一応観察日記には魔法を使ったので成長が早かったかもしれないのは書いておこう。
カーネリアンの月の30日、明後日にはペリドットの月に入るが、現在の宿題と課題の進行状況について書き記すと、大体半分くらいだ。パトリシア姉様の宿題と課題も時々見てあげているから少し遅いような気もするけど、後10日くらいあれば私の宿題や課題は全て終わるので頑張ろう。リーゼロッテ先生にもちゃんとパトリシア姉様に言い聞かせてもらうように頼むのも忘れないようにしなくては、私の夏期休暇は遊ぶ時間がなくなってしまいそうだからね。
ペリドットの月に入ったので、夏期休暇に入る前よりも暑くなって来ている気がする。ティシュヴァンフォーレの世界にはプールはないが、泳ぐ習慣はあるので、領地にある湖にお母様とディートハルト、ヘラルダ、ソーニャと、いつも屋敷を守ってくれている衛兵を二人ほど連れて、一緒に涼みに行こうと言う話になった。私は夏期休暇に入ってから、あまり遊ばずに宿題や課題をやっていたからお母様が息抜きにと提案してくれた。パトリシア姉様も行きたがっていたけれど、お母様に却下された。
「駄目ですよ、パトリシア。貴女は自力で宿題や課題を出来るようにお留守番よ。いつまでもミレーナに頼ってばかりではいけないわ。」
との言葉に『えー、そんなー』みたいな事を言いながら項垂れていた。リーゼロッテ先生も今日は勉強を見てくれるみたいなので、さぼったりはしないと思いたい。さぼったら、パトリシア姉様の分のおやつは用意されないので、それは本人も望んでないだろうし。私?ちゃんと毎日おやつは食べてるかな、勉強をさぼった事は一度もないかな、面倒だとは思った事もないし。さぼりたくなるくらい勉強が苦手なのは、どうしたら直るのかは判らないけど、ちゃんとしないと昇級に差し支えるのでパトリシア姉様にもそれはきちんと自覚してもらわないと本人も困るだろうから、リーゼロッテ先生もその辺は言い聞かせているのだとは思う。お母様も、夏期休暇で成績が落ちたりしたら困るわね、とぼやいていたから結構心配してるんじゃないかな。
湖のほとりに涼むための日よけや、ゆったりと座れる椅子を用意して、冷たい果実水を飲んだりして過ごすのが一般的らしい。お母様もロッキングチェアみたいなものに腰をかけて、今にもお昼寝出来そうな感じで寛いでいるみたいだ。ロッキングチェアと言っても、足を伸ばして座れる縦に長いような椅子だ。横幅もそこそこあるからゆったりと座れているのも特徴かもしれない。ある一定の年齢になると、湖や川ではしゃいで泳ごうとは思わなくなるらしいけど、私はしっかり水着を着ていて、湖の浅い場所などで泳いでいる。水深が深すぎると足がつかないから、足のつく場所じゃないと危ないので、浅い場所を利用している訳だね。うん、やっぱり夏場は水遊びに限るよ。泳ぎ方はソーニャが詳しいみたいで、教えてくれた。なんでも、ソーニャは男爵家の次女だったので、学生時代に湖で泳いだ経験があったのだそうだ。ああ、やっぱり爵位のある家で育つと学校には行っていた人が多いんだね。リーゼロッテ先生はフィーリルトン学園の首席だったけど、貴族なのかどうかは聞いてなかった気がするので、今度それとなく聞いてみようかな。
ちなみに、エフィムは湖でどう涼むのかなと思っていると、まるで水鳥みたいに優雅に泳いでいた。鳥だけど平気そうだ。ジュリエッタはどうしているのかと思ったら、泳いだりはしないみたいで、涼むならここで、とお母様の隣で布を敷いて寝そべっていた。うーん、猫だから仕方がないのかな。ディートハルトだけど、彼の場合は水辺ではしゃぐと湖が軽く破壊されかねないから遠慮しているらしい。ドラゴンに力の加減をしてくれ、って言うのはそもそも難しいんだろうな。まあ、暴れそうならまた魔法でぶちのめすけど、と言ったら『滅相もありません、私はお嬢様に従うと誓ったので暴れたりなどしません。』との事だった。それならわざわざ静かにさせる心配はなさそうだ。
簡単な人物紹介
ソーニャ
タールベルク公爵家のベテランメイド
の一人で元男爵家次女。
割と成績は良かったみたいで
泳ぐのが得意だったらしい。
ファルタとは同期で仲が良い。
大抵の事はそつなくこなすので
多分ファルタより先に出世する…
かもしれない。




