騎士団色々、武器も色々
守護精霊のおでこにある
花の印は何なのか?その理由がついに
判明します。騎士団についての
話が長くなりましたが
何のお花なのか薄々気付いてらっしゃる
方もいるかもしれないですね。
まるで永劫に続くかのような女神様の説明会な夢がようやく終わり、目を覚ますと既に次の日の朝だった。夢の後はぐっすりと眠れたのか、寝不足を感じる事はなかった。まあ、小さな子供が寝不足とかなったらまずいと思うのでそれは回避して行きたい。しかし白米の可能性とは、大きくなったらやはり自力で探しに行くしかないとは思うが、見つかるまでに賢者様が亡くなってしまわない事を願う。お祖父様と年齢が変わらないと思うので、今度は夢でフォルトニア様に会ったら賢者様はいつまで生きていられるのかをちゃんと聞いておかなくては。
心を新たに今日も私の一日が始まる。ちなみに、同封されているおばあ様からの手紙はメイドさんに見つからないようにそっと鍵のかかる机の引き出しにしまった。普段使わないけど、こんな時の為に用意されていたのかもしれない。だって、もらった杖が伝説の杖だったとかが回りに知れたら、また前回の湖の水を半分以上使った高威力魔法の時みたいな大騒ぎになってしまうからだ。また国王様が頭を悩ませるはめになるとかは出来れば回避したい。普段は痛めていないかもしれない国王様の胃が定期的に痛むような事態を避けなければならない。うん、この杖に関してはもっと大きくなるまで自分の心にしまっておこう。
今朝はファニタが朝の支度をしてくれるようだ。何時ものように服を着替えて朝食へと向かう。そう言えば、杖の上部にあった花の形はどこかで見たような気がしていたら、今朝起きた時に私の隣で眠っていたジュリエッタの額にある女神様の愛したとされる国花だった。この花の形は日本でも見たことがあるので後でリーゼロッテ先生にでも聞いてみよう。
地理や歴史を教えてくれる先生なのだし、その辺りは詳しそうな気がする。午前中の授業が終わる時に聞けば良いだろう、授業中は習う勉強の内容に関する質問しか出来ないだろうからね。
朝食が終わり、今日使う教本の準備などをしてリーゼロッテ先生の授業が始まる時間までフェリクス兄様所蔵の植物図鑑を読む。夢でフォルトニア様から聞いた白米に関する知識を少しでも知ろうとアムルーシュとウィシュトヴァラに自生する植物が記載されている図鑑を読んでいるのだ。図鑑には毒になる危険な植物から、煎じれば病気や怪我に効果のある植物まで様々なものが分かりやすく書き込まれていた。それにしてもこの図鑑は白米のついでと思っていたけれど、読んでおいて正解かもしれない。これだけ事細かに植物について書かれているのだから、もし突然毒や薬になる植物の知識が必要になった時に役立つだろうから。魔法で効果がなくても煎じた薬が効く、と言う事がないとは言い切れないからだ。知識は多ければ多い程良いと私は思っているのもあるんだけれどね。
そして本日の授業はウィシュトヴァラ王国騎士団に関しての勉強だった。そう言えばお祖父様も昔王国騎士団に所属していたとか女神様が言っていた話にあったな。王国騎士団には、大きく3つ騎士団が存在していて、一般的な騎士が所属しているのが紺碧騎士団だ。濃紺の衣服の上から鎧を着ているのがそうらしい。主に街の治安維持が仕事なので城下町に行けばそこかしこで見かける。王城の門番を勤めるのもこの騎士から選出された者で、門番を経て昇格する事もあるので割と狭き門なのかもしれない。
次に、王国騎士団の中でも城内の警備や貴族の身辺警護をしたり、騎士の持つ武器の管理をしたりもするのが琥珀騎士団だ。専属騎士よりは仕事の幅が広い騎士で、騎士団に入隊するとこの琥珀騎士団を目標にする者も少なくない。橙色の衣服の上から鎧を着ているのが名前の由来だ。ここまでで二つの騎士団が出ているが、中でも最もなる事が難しいとされるのが白銀騎士団だ。王族に付き従う王家専属の騎士がこの白銀騎士団である。琥珀騎士団よりも最も狭き門で、王族に見出だされるか、腕に覚えがあり活躍を王家の人に認められるかしないとなる事は出来ない。以前にフェリクス兄様が出場した御前試合などがそれにあたる。なので、フェリクス兄様は紺碧騎士団に入隊してから早数ヶ月で琥珀騎士団に転属すると言う快挙を成し遂げたのである。フェリクス兄様の手紙では紺碧騎士団所属の同期から『早く自分も琥珀騎士団に昇格したい、給料違いすぎるだろ』的な事を度々愚痴られる、なんて話があるくらいに境遇はだいぶ違うみたいだ。そんな兄の近況話は置いといて、白銀騎士団の話だが、ちゃんと名前の由来がある。お祖父様が王国騎士団に所属していた、と言う話を皆さんは覚えているだろうか?当時の王様に命をうけて賢者様と魔物討伐に赴いたと言う話だが、白銀の武器と鎧を身に付けて討伐に向かったとフォルトニア様が言っていた事がまさかここで繋がるとは誰も思ってなかったのではないだろうか。私もへえー、そうだったのかー、くらいにしか覚えてなかったからね。お祖父様の装備が伏線だったとか思わなかったけど、伝説の賢者様と共に魔物を討伐した勇敢な騎士が身に付けていた武器と鎧が白銀だった事から白銀騎士団の名前がついたのである。なる事が容易ではない事から10名程しか在籍していないようだ。もう四人か五人くらいいてもいい気がするが、王族のお眼鏡に敵うような人材でないといけないのでやはり難しいのだろう。確かに騎士の中でも精鋭を選り抜き抜擢されたような実力を持つ人しかなれないから、そんなにぽんぽん増やせるものでもないよね。リーゼロッテ先生は白銀騎士団に多少の憧れがあったらしく、自分が女性でなければなりたかった、とこぼしていた。騎士と言っても剣しか使わない訳ではないのかな?
「リーゼロッテ先生、騎士の方は剣以外の武器も使うのですか?」
「ええ、中には槍を使いこなす騎士の方や鈍器やメイスを武器にしている人もいるから、弓を使う騎士がいない訳ではないのですよ。」
「メイスを使うと言う事は、魔法も使える騎士様なのですね。」
「その通り、よく勉強されていますね。魔法を使う者は杖と呼ばれるものであれば種類が違っても使うことが出来ます。」
私がおばあ様から貰って持っているのは割と魔法を使う人が好んで使うロッドやワンドと同じような種類だ。ロッドの方がワンドより長いと聞いた事があるけど、一般的に使われるのはそのどちらかだ。スタッフもあるが、主に年配の方や研究をメインにしている人が使っている。中にはおばあ様くらいの年の人が足が悪くてステッキを歩行の補助として使う人もいるが、これは魔力を通しにくい材料で作られていて、うっかり魔力が通って魔法が発動したせいで転倒してしまうような事故を防止する為なんだとか。随分よく考えて作られている杖もあるものなんだなあ…。やっぱりレトナークで開発されているのだろうか。そうだ、杖についての話題が出たからついでに聞いてみよう。厳密には杖に関しての話とは違うんだけれどね。
「リーゼロッテ先生、杖とは関係ないのですが質問があります。」
「何でしょう?ミレーナさん。」
「ジュリエッタの額にもあるのですが、この花の形は女神様と何か関係しているのですか?」
授業が始まる前に紙にクレヨンで描いておいたとある花の形を先生に見せながら聞いてみる。この世界にもクレヨンはあるんだな、と初めて手にした時は嬉しかったものだ。リーゼロッテ先生は紙に描かれた花の形を見て、頷いてから花の名前と由来について話してくれた。元々はセレネドナにしか自生していなかった花で、春にしか開花しないがどこか優美で人を惹き付ける魅力のある花なのだそう。昔に賢者様がセレネドナで過ごしていた時に大層気に入ったので、お世話になったウィシュトヴァラ王国にも植樹しようと苗木を持ち込んだのが最初だった。ルツヘルムでも見事な開花を見せたその花は国王様も大変気に入り、この国の国花にしようと決めたそうだ。その時に賢者様が自分もフォルトニア様もこの花が一番好きな花だと言っていたのでそれも折り込み済みで国花兼、女神様に愛された花としてウィシュトヴァラ王国に定着した。当時の国王様が賢者様にこの美しい花の名前は何と言うのか、と訪ねたら返ってきた名前が『キルシュブリューテ』と言う名前だった。あれ、キルシュブリューテって和訳したら桜じゃない?言われてみたら形はどう見ても桜だ。賢者様がお気に入りの理由も納得したが、杖の形を一部桜の形にする程嬉しかったんだろうなあ…。リーゼロッテ先生が入学式の時期はキルシュブリューテがちょうど満開だから、入学式が終わった次の日などはよく家族で花を見ながらお茶会をする家庭も多いのだとか。私の入学式でも満開になるかな?異世界でまさかの桜が見れるかもしれない事に胸を高鳴らせながら自分の入学までの準備を進めるのだった。
簡単な用語解説
キルシュブリューテ
ウィシュトヴァラ王国の国花として
毎年春にしか開花しない美しい花。
日本の桜とほぼ変わらない姿をしている。
なので、生態や世話なんかも基本的に
桜と同じである。たまに秋にも
開花する事があり、その時は
また紅葉狩りと共に観賞される。
異世界における紅葉はまた考えます。




