学校は広いな大きいな
主人公が通う予定の
学校を見学しよう(外周だけ)
と言う小休止みたいなお話です。
正直あまり進んでない気もする…。
夢の中でサラーキア様とリマーテア様に平謝りされた翌日、昨日やらかしたのはまあ、ある意味一件落着したとも言える。私もずるずると引きずるつもりはないし、いつか大人になった時にそんな事もあったね、と笑えるくらいにならなくては。あれ、こんな歌詞の歌どっかで聞いたような気がするぞ。そんな訳でやたらと夢の内容を忘れづらいくらいに強烈な出来事だったと言う事だね。ヘラルダに着替えを手伝ってもらいながら、今日の朝ごはんは何だろう、と前向きに次に何をすべきかを頭に入れながら寝室を後にした。暫くは大きな魔法は使わない方が良いかもしれない、なんてまだ少し高威力の魔法を忘れられていなかったが気にしてはいけない。
フェリクス兄様の婚約と言う比較的嬉しいお知らせと、湖の水を半分以上巻き込んだ高威力魔法を使ってしまった日から早数ヶ月。残り半年で私はついに学校に就学する事になる。そこで、通う前に学校がどんなものなのか、外から見ることでこれからの学生生活を想像出来るようにと、ウィシュトヴァラ王国にある学校の近くまで来ていた。遠目から見るだけでかなりの大きさを誇る校舎だが、生徒がおおよそ2500人在校しているのだからそりゃああんなに大きな建物になるよね。一学年で大体150人から200人くらいいるらしいので確かに10年通う事になるのだから単純計算で2000人はいる事になる。それにしても、学生がかなりの数がいるとは言え、外周だけで馬車で数時間はかかりそうな敷地だ。これ、いざこの学校に通う事になったら迷ったりしないんだろうか?一応パトリシア姉様が今日学校から帰ったら聞いてみよう。
「ふわぁ、とても大きな学校なのですね。」
「ええ、ウィシュトヴァラ王国の中でも王城と対をなすくらいには大きな建物ですからね。」
付き添いで来てくれたリーゼロッテ先生が説明を入れてくれる。アムルーシュから馬車で数時間かけてウィシュトヴァラ王国首都ルツヘルムへと来ているのだが、ハインリッヒとリーゼロッテ先生、お母様、私の四人で見学する事になっている。学校の名前はフィーリルトン国立学園と言うらしい。昔、ティシュヴァンフォーレに学問は素晴らしい事なのでこの国にも作るべきだ、と唱えた賢者様の名前がそうだったと言われている。ひょっとすると、国によって賢者様の名前は違うのかもしれない。他の国でも同じ名前の学校があったらおかしいだろうし。フィーリルトン学園は共学で、基本的に貴族の子息及び子女が通う事がほとんどだが、中には大商いをする商人の子供が通っている場合もあるらしい。多分だけど、基礎的な学び以外にも商業的に役立つ教科もあるのだろう。それから、ないとは思うけど貴族の子息、子女ばかりと言う事は一般の子供はほとんどいないので疎外されていたりしたらいやだなあ…。あり得そうで怖い。私の通っている間は見かけない事を切に願うが、もし疎外されている子を見かけたら助けてあげなくては。そう強く心に誓った、今だ見ぬ将来の私へと。
「奥方様、お嬢様、そろそろお屋敷に到着致します。」
首都ルツヘルムには日帰りで来ているのだが、昼食を食べるために飲食店を予約している訳ではない。お母様の実家であるアシュヴィヘス侯爵別邸へ足を運ぶことになっているのだ。アシュヴィヘス侯爵家は昔から王家に連なる者を輩出する家系として知られている。お母様の叔母にあたる人でおばあ様の妹はレオハルト陛下の父親である前王に嫁いだ人でもあるからだ。私の祖母にあたるおばあ様はレオハルト陛下の乳母を勤めた人だったりするので、今も陛下はおばあ様に頭が上がらないとか。お母様はアムルーシュ公国に嫁いでいる訳だけれども、一応公国を治める公爵様だから后妃様になるのかな。まあ、公国は国民の人々と割と近しい間柄だったり、親しみの持てる貴族だからウィシュトヴァラ王国の王家とは厳密には違うのかもしれないが。自宅のお屋敷とあまり変わらないくらいには大きなお屋敷の前に馬車がゆっくりと停まる。ハインリッヒにエスコートされて馬車を降りると、玄関の前でアシュヴィヘス侯爵家のメイドさんが待ってくれていた。
「ユスティーネ様、ミレーナお嬢様、リーゼロッテ様、ようこそお待ち申し上げておりました。」
シックなメイド服に身を包む水色の髪をした綺麗な人だ。年齢はヘラルダと変わらないくらいだとは思うけど、この人の方が少し若く見える。アシュヴィヘス侯爵別邸のメイドさんはメイド長らしく、他のメイドさんが目上に見ているからそうなんだろうとは思ったけどヘラルダとはまたちょっと雰囲気が違うなあ。
メイド長はヨハンナと言うらしく、丁寧にお屋敷を案内してくれた。リーゼロッテ先生は客間で待っているとの事なので、私とお母様は別の来客用の部屋でおばあ様と会うことになった。
「あらまあ、ユスティーネ、ミレーナ、よく来てくれたわね。」
にこにこ笑顔で出迎えてくれた年配の穏やかそうな女性。既に隠居なさっているが、55歳を越えているとは思えない程お元気なおばあ様、エレオノーラである。髪の色はお母様と同じだが目の色は琥珀色をしていた。若い頃はお母様と似ていたんだろうな、笑うと目元がそっくりだしね。おばあ様は『おいで』と腕を広げているので遠慮なく腕の中へ飛び込んだ。
「おばあ様、お会い出来て嬉しいですっ」
「ミレーナも随分大きくなって、次に会うときはもう立派な淑女ね。」
優しく微笑むおばあ様はどうやらかなり孫が可愛い様で、甘やかすように時々ルツヘルムから私宛にぬいぐるみやアクセサリーを贈って来るのだ。今日もお昼ご飯を食べに寄りますと連絡を入れたらおやつも用意して待っていると返事の手紙に書いてあった。こうして、学校見学に来たはずがおばあ様と食事をしながら普段何をして過ごしているかの話をこれでもかと言う程話し込むと言った午後になってしまったのである。おやつにはなんと、いつか食べられるだろうと思っていた、ルビーベリーのショートケーキが出て来てあっという間に上機嫌になった私はついついおかわりをしてしまう程ケーキが美味しくて、作り方をタールベルク家の料理長にも教えて貰えるようにお願いしたくらいだ。ハインリッヒがレシピを纏めたメモをメイドさんからしっかりと受け取っていたので問題ななさそうだ。美味しいケーキと紅茶をご馳走になって、帰る時間になった頃おばあ様がプレゼント包装をされた細長い箱を持って私の前に差し出すとこう言った。
「ミレーナ、これは私からの入学祝いよ。ちょっと早いけれどね。帰ったら開けてみて頂戴な。」
箱に入れられたものは早めの入学祝いだった。そんなに重くはないが、何が入っているのかは帰宅してからのお楽しみだ。おばあ様から頂いたとっても嬉しいプレゼントが何なのかをわくわくしながら馬車に揺られてアムルーシュにある自宅へと私たちは帰って行った。帰宅してから箱を開けて、おばあ様からの手紙を読むまではその入学祝いがとんでもない代物だとは、喜びと嬉しさが勝っていたので、今の私は知るよしもなかった。
簡単な用語解説(?)
フィーリルトン国立学園
ウィシュトヴァラ王国及び
アムルーシュ公国、他には
レトナーク王国からも貴族の子息及び
子女が通っている国立学校。
貴族ばかりの中で平民がいたら
孤立する訳ではない、と信じたい
主人公だが通い始めるまでは
まだ判らない。(未定である)




