兄は期待の新人
今回は主人公の兄、フェリクスに少しばかりフォーカスを当ててみました。まさかの騎士団の新人が試合で勝ちまくる展開に。
魔法の先生であるマティウス先生から魔法についてを習い始めてから八ヶ月、ウィシュトヴァラ王国からとても大きな吉報が届いた。兄のフェリクスが騎士団の行う御前試合で決勝まで勝ち残ったとの報せが屋敷に届いたのだ。兄は父親が元々騎士団で活躍していたのを凄く憧れていたらしく、卒業してから直ぐに騎士団に入隊したらしい。まあ、学校でも騎士団に入隊する為の訓練や学習をしていたみたいだから入隊するのは当たり前なのかな。ともかく、国王と王妃様の前で騎士団の実力を確認する為と、新人がどのくらい戦えるかを確認する為に一週間くらい前から御前試合を行っていたのだそう。まあ、王都での話だからアムルーシュに届くのは暫く時間がかかるのは仕方ない気もするけどね。しかし、新人とは言え騎士団って実力者もたくさんいると思うんだけれど、決勝まで残ったとか、兄様はかなり強い騎士に育つのではなかろうか。報せを聞いたお父様とお母様が物凄い嬉しそうな顔で王都からの報せが書かれた手紙を読んでいる。
「やはりフェリクスは自慢の息子だな。決勝は何時だ?見に行けるだろうか…。」
「うふふ、あなたが駄目でも私とパトリシアで見に行きますわ。」
「うぐっ、仕事さえ重ならなければ行けるが…。」
王都は少し時間がかかるし、ミレーナはまだ就学前の幼い少女であるので流石に一緒に御前試合を見に行く訳にはいかないのだろう。
「兄様、たくさん勝ったのですか?」
「ふふっ、そうね、フェリクスは王様と王妃様の前でする試合でたくさん勝ったのよ。」
「兄様はきっとすごく強いから次も勝てる気がします、私は行けないけどお屋敷で応援してますね。」
「そうね、ミレーナが応援してくれるならきっと勝てると思うから、フェリクスにお手紙を書いてくれないかしら?」
つまり、兄宛に応援の手紙を書けと言うことだろうか?まあ、それでやる気が出るなら勿論応援の手紙を書くくらいは簡単だ。最近は騎士団での訓練や模擬戦がキツいと手紙に書いてあったからそれも含めて『兄様が王様と王妃様の前で試合をされると聞きました、私の大好きな兄様ならきっと勝てると信じて応援しておりますので頑張って下さい』と手紙に書いておいた。一応お守り代わりに最近中庭で摘んだ花を押し花にしたものも手紙に同封して王都に送ってもらった。決勝の試合はまだ数日先だから間に合うはずだ。ちなみに、手紙を添削ついでに読んでいたお父様とお母様は素晴らしい手紙だと泣きながら抱きしめられた。もしかして、年齢の割にはよく出来た手紙が書けたのかな?まあ、それならそれで結構嬉しいので大人しく頭を撫でてもらった。まあ、まだ幼女だしそのくらいは仕方ないよね。
手紙を書いてから数日後、お父様は何とか王都の御前試合に仕事が入らないように休みを取ることに成功したらしく、お母様とパトリシア姉様も王都に行ってくるからお土産は何が良いか、とうきうき気分で聞いていたから兄様の御前試合が楽しみなんだろうな。ちなみに、お土産は王都で美味しいお菓子を所望した。アムルーシュとは違い新しいお菓子があるかもしれないからだ。そうして、王都で兄様の決勝戦が行われるのを見に行くべくお父様、お母様、パトリシア姉様の三人はテンションが高いままお出かけして行った。まあ、自動的に留守番になる訳だが、屋敷にはメイドのヘラルダや、執事のハインリッヒがいるからね。えっ?執事なんていたのかって?いたんだけど、お父様にいつも付き従っているからあまり会わなかったのが原因なんだけどね。執事や使用人だけでは心配だから、とマティウス先生も来てくれたので寂しくはない。御前試合を見に行くと言っても日帰りで夕方には戻るそうだからそこまで不安はないのだけれどもね。両親と姉が王都に行ってから数時間後に昼食を食べて、食休みに、と中庭をジュリエッタと散策していると、兄様へ手紙を送るときに一緒に同封した花を見つけた。
「あっ、このお花、兄様に送ったお花と同じものだね。」
『ミレーナ様はこの花の名前知っていますか?』
ジュリエッタにそう問われると、考えてみたらこの世界の花の名前って詳しくは知らない気がする。花の名前は知らない、と答えるとジュリエッタがどんな名前で花言葉はどうなのかを教えてくれた。花の名前はナスタチウム、花言葉は『勝利』『困難に打ち勝つ』『愛国心』だとジュリエッタは答えてくれた。えっと、それは偶然なのだろうか?まあ、兄様に勝って欲しいとは思っているけれども、この花がそんな意味を持つものだとは知らなかった訳で。ジュリエッタにこの花はティシュヴァンフォーレ特有のものなのか?と聞くと、同じものが地球にもある、との事。うーん、でも知らずに摘み取って押し花にしたのだし、偶然であって欲しいなあ…。色々考えていてもらちが明かないので、マティウス先生に魔法の練習を教わり気分転換してからおやつを食べる事にした。本日のおやつはパンケーキだったので凄く美味しくてあっという間にもやもやしたものは頭から消えていた。そして夕食前に帰宅した両親と姉が兄様が決勝で見事に勝ち抜き、初優勝を果たした事を興奮気味に話すのを聞いて、驚き飛び上がったのは仕方ないと思う。まさか優勝するなんて思わなかったからだ。嬉しいけど、またこれは神様から何かされたのかも、と思わざるを得なかった。
戦闘シーンとかはないです。まだ主人公は就学前の幼女ですから試合を見学とかは難しいですからね。(言い訳のような気もする)次回はまた神様と夢の中でのお話になる予定です。




