お嬢様は魔法も上手
今回は魔法を習うお話です。えっ?魔法の説明回?やだな、気のせいですよ、きっと。(紛れもなく説明回)
兄が成人を迎えてからあまり屋敷に帰る時間がないらしくてなかなかミレーナに会えない、との手紙が届くようになったのは最近だ。寂しいならパトリシア姉様にも手紙を出してほしいものだけれど、末っ子と言うのは可愛がられるものなのだろうか?その辺りは解らないけど、姉様は手紙とかあまり書かないからそれでなのかもしれない。ちなみに兄の手紙の返事を書いている現在6歳と2ヶ月、まだまだ育ち盛りであるのでそろそろ魔法の勉強もしてみたらどうか、と言うのはお母さまの意見。実際魔法を学び始めるのも今くらいの年齢かららしいので習えるものなら是非にと二つ返事で魔法の勉強をする事になった。魔法の先生は学校でも魔法を教えている人なのできっと教えるのが上手なんだろうな、と期待しつつ屋敷に先生がやって来た。
やって来たのは優しくて温厚そうな眼鏡をかけた男性だった。まあ、魔法の先生だし優しい先生なんだろうな、と思っていると。
「初めまして、ミレーナお嬢様。魔法について教鞭を取っておりますマティウスと申します。本日から色々とお教えする事になりますので、宜しくお願い致します。」
めっちゃ声が良い、しかも敬語が似合っているのが凄い。見た限り優しげなイケメンさんだが、よく見ると耳が長いように見えるが…。
「お嬢様、本日からお越しになったマティウス様はエルフの方なのだそうですよ。」
メイドさんが小声で教えてくれたが、確かに耳が長いし外見的特徴を見るとそうだろうな、としか言えないが、優しそうな人だし人選に間違いとかはないだろう。(多分)
何時も勉強をしている部屋にメイドさんに案内してもらった後、マティウス先生は教本と水晶のようなものを鞄から取り出していた。教本は解るとして、取り出された水晶は何だろう?
「ああ、お嬢様。この水晶がやはり気になりますよね。」
苦笑しながら布の上に置かれた水晶を見ながら先生が此処にある水晶について説明をしてくれた。人によって生まれながらにして得意な魔法とそうでない魔法があるので、どの魔法が使えるのか、適性があるのかを調べる為のマジックアイテムなのだそう。まずは魔力を感知する為の練習から始める事になり、手に魔力を集めるイメージで、と教わった通りにした後にまずは一番簡単な魔法を発動させる為にランプを持って来てもらった。そして『ライティング』と唱えながら、手に集まった魔力をランプに向かって放つと火も使わないでランプに光が灯った。確かに便利そうな魔法だ。
「うん、初級の魔法だけどなかなかミレーナさんは飲み込みが早いね。」
「あの魔法は何属性の魔法なんでしょう?」
流石に気になったので聞いてみると、『ライティング』は日常的に使うので魔力操作や魔法を使える人ならば誰でも使える魔法なので属性などはないらしい。魔法が使える事が解ったので次はいよいよ水晶で適性のある属性について調べる事になった。水晶に手を当てると水晶に向かって魔力を流し込むようにしてみると水晶が光り始めて、赤、青、緑、茶色、黄色、そして真っ白く最後に光って光は消えていった。それを一部始終見ていたマティウス先生はかなり驚いた顔を暫くしていたけれど、大きな声で『これは凄い!』と叫んだ。どういう事なのだろうか?
「ミレーナさん、貴女は稀に見る多属性の魔法に適性があります。きっとしっかりと学べば学校でかなりの成績を修められますよ。」
「は、はあ…それでマティウス先生、私にはどんな属性魔法の適性があったのですか?」
「光り方からみると、火属性、水属性、風属性、土属性、雷属性、最後のは光属性です。きっと聖属性の魔法もいつか使えるようになるかもしれませんね。」
マティウス先生はかなりの上機嫌で色んな属性魔法の教本を出してきて、屋内だから、と中庭に移動してする事になった。先生は熱心なのか、魔法マニアなのかが解らないけど、良い人なのは確かだ。まずは水魔法からで、地面に置いたバケツに水を入れる事から始まった。『ウォーターレインフォール』と詠唱するとバケツの上から小雨が降るようにして水が落ちてきた。なるほど、これは雨が少ない時に使えそうな魔法かな。先生はなかなか初めてにしてはよく出来ました、と言ってくれた。次に教えてもらったのは水の球を作る魔法。『ウォーターボール』と詠唱すると空中に水の球が浮かぶ。
「そうそう、今回は軽く初心者でも使える水魔法の初級攻撃魔法を覚えて終わりましょう。」
『ウォーターボール』で幾つかの水の球を出すと、それを空中で維持するように上手く魔力を調整するやり方を教えてもらいながら、この水の球を木にぶつける初級魔法を使うので、早速言われた通りに『ウォーターボール』で水の球を出してから球に魔力を込めて『スネイル=ボール』と詠唱する、水の球は勢いよく木にぶつかると消えそうになるが、『ブレイク』と更に詠唱すると、木にぶつかった水が破裂して一本の木が倒れていった。先生はそれを唖然として見ていたが、直ぐに駆け寄ると『やっぱり貴女は天才だ!』と目を輝かせていた。先生が持ってきた本以外にも屋敷に、属性魔法の応用編、と書いてあったタイトルの本を事前に読んでおいたのだが…まさか使えるとは思ってなかったので自分でも驚いていたりする。残りの魔法の練習は風魔法の初級を実際に詠唱して、発動させて、またもや木を今度は風魔法でなぎ倒してしまい、後からお母さまに先生と共にきつくお説教を受けたのは言うまでもなかった。魔法の練習ってもっと広い場所でやらないといけないな、とこの時心に誓った。
(お母さまに怒られるから、も理由だけど本人を前には言えなかった)ちなみに、次回からは別の魔法も練習してみましょう、と張り切っていた先生に駄目だとは言えなかったのは仕方ない気もする。だって魔法の練習楽しいんだよ!…お母さまに怒られさえしなければ、の話だけれども。次にマティウス先生の授業を楽しみにしながら屋敷で夕食まで結構使った魔力のせいか眠気があるのでお昼寝を始めた私は夕食まで目覚める事はなかった。(疲れていたらしい)勿論、夕食は凄く美味しかった事は言うまでもない。
はい、魔法の説明回でしたね。主人公はやっと6歳です。学校は八歳からなのでもう少しかかりますね。だ、大丈夫です俺TUEEEはしない予定ですから!




