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楽しいお誕生日パーティー(ささやかではない)

いよいよ主人公のお誕生日パーティーです。家族と使用人によるささやか(中味がささやかだとは言っていない)なお誕生日パーティーになるはずなんですがね。まあ、大々的ではなく身内だけなのでささやかにはなると思います。

誕生日を翌日に控え、ワクワクで眠れないかとも思ったが思いの外ぐっすり眠れたみたいだ。ヘラルダが起こしに来る前に目が覚めたので多分普段より早く目が覚めたのだと思う。



「まあ、ミレーナお嬢様。もう起きていらっしゃったのですね。」


「今日が楽しみで早く目が覚めちゃったみたい。」


「ふふ、そうでございますね。お嬢様にとっては今日は特別な日ですものね。」



メイドのヘラルダと他愛ない話をしながら他のメイドさんが着替えの準備をしてくれる。まず先に洗面器にある水で軽く洗顔を済ませると、メイドさんが髪をゆっくりとブラシで整えてくれている。丁寧にしてくれているから髪がサラサラなのかもしれない。お次は寝間着から普段着への着替えだが、ワンピースと言うよりちょっとしたドレスに見える。オレンジとベージュのそこまで派手ではないが可愛らしいデザインのドレスだ。足首まではあるが、足でドレスを踏むような心配はなさそう。親切設計のドレスなのだろうか?まあ、5歳の女の子が着なれてないのを想定してあるのだとは思うけど。(多分)着替えが終わると家族との食事なのだが、今日は誕生日なのもあってか父親のミハエルも一緒に朝食を食べると言っていた。あのやたらイケメンの公爵様が父親とか緊張するな。



「あら、お嬢様緊張されてらっしゃいますか?」


「お父さまと会うのが久しぶりだから…。」



それとなく病気だったから会えてないし緊張するのは有りなのかな、と思って言ってみるがヘラルダは納得した様子で大丈夫ですよ、と言ってくれた。ヘラルダが言うのなら大丈夫なのかなあ…。そんなこんなで食事をする為に部屋に向かうと先に姉のパトリシアが座っていて、こちらに気付くとぱあっと笑顔になり駆け寄って来た後に抱きしめられてしまった。



「良かった、ミレーナが元気になってくれて、本当に心配したのよ?」


「心配かけてごめんなさい、ねえさま…。」


「もう、あんまりしょんぼりしないの。さ、朝食はミレーナの大好きなメニューばかりにしたそうだからたくさん食べるのよ!」



パトリシアがそう言うのでテーブルの上を確認すると美味しそうな焼きたてのパンと豆や野菜のスープ、ソーセージに目玉焼きなど、まるでイングリッシュブレックファストのような朝食が並べられている。バターもあるみたいで、なかなかに美味しそうだ。バターがあるならこの世界の料理は期待しても良さそうな気がする。ヘラルダと姉のパトリシアに席を勧められ、着席すると母親のユスティーネと一緒に背の高いイケメンが部屋に入って来た。後ろにもう一人イケメンがいるが手前のダンディな方が父親なんだろうな。じゃあ後ろの年若いイケメンが兄だろうか?



「まあ、ミレーナ。元気になったようで何よりです。フェリクスも今日は屋敷にいるのでしょう?」


「はい、母上。ミレーナ、元気になったみたいで良かった。」



フェリクスが優しく頭を撫でてくれたので思わず嬉しさと照れくさくさで何だか気恥ずかしい。まあ、家族なんだから当たり前なのかもしれないけど。



「おお、ミレーナ、病が治ったと聞いて私はどんなに嬉しいか…仕事さえなければもっと早くに会いに来れたのだがなあ…。」



父親の公爵様はどうやらかなりの親ばからしい。しかも娘にでれでれとか、公爵様の威厳はどこに行ってしまったのやら。かくして家族が揃って朝食となり、今日の誕生日祝いはまだ病み上がりな事を考えて家族だけで祝うそうだ。確かに病み上がりで豪華なパーティーとか難しいかもしれないね。午後から昼食兼お誕生日パーティーになるとの事だが、とても楽しみだ。それにしてもパンもおかずも結構美味しいので自分用に用意された食事はあっという間に完食してしまった。ソーセージとスープが美味しかったけど味付けはどうしているのだろう?まあ、貴族のお嬢様だから料理を自分からするとかはなさそうだけど一度は見てみたい気はする。



「あらまあ、ミレーナったら全部食べきるなんてよっぽど美味しかったのね。」


「はい、凄く美味しかったです。また食べられたら嬉しいな。」


「ミレーナお嬢様がそんなにお喜びなのは私共も嬉しいですよ。料理長にお伝えしておきますね。」



ヘラルダがにこにこ笑顔で嬉しそうに言っているのでこちらも嬉しい気分になる。そしてやっぱり料理長がいるんだな。そのうち会うこともあるのだろうか。今はお腹いっぱいなのでその事はまた後日で良いかもしれない。朝食が終わって口元を拭いてお腹が落ち着くまでパトリシア姉様の学校での話や両親の最近の話を聞いてからダイニングルームを後にする。リビングルームに移動すると、ユスティーネと一緒にソファーに座り絵本を読み聞かせてもらった。この世界の絵本は元の世界にもあった絵本と似ているけど微妙に違ったりする。しかし、絵本と言うものは何故お姫様のものが多いのだろうか?流石に小さい女の子に冒険譚などは読ませるのはまずいからなのかな。まったりとした時間が過ぎてゆく。午後からは昼食を含めたお誕生日パーティー(ささやか)の始まりだ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



お誕生日パーティーと言っても家族と屋敷の使用人くらいしかいないけど料理は豪勢だった。まずは美味しそうなシチューだが、ダウグラスバードと言う希少な鳥の肉を使ったクリームシチューだ。肉は柔らかいし野菜も甘くて美味しい。パトリシア姉様はオレンジの野菜を残していたけど多分ニンジンだろうなあ。他にもシュリンプのバターソテー、きのことチーズのフレンチオムレツ、スモークサーミンのカルパッチョなど色々な料理があった。サーミン、と言うのは多分日本のサーモンだと思う。味や食感が同じだったからね。カルパッチョだからサラダ扱いなのかな?とまあ、どれも美味しくて嬉しかった。この世界の料理がこんなに美味しいのも女神様のおかげかな、ありがとうフォルトニア様。そしてデザートもなかなかのものだった。リップルのタルトにナッツのシフォンケーキ、更にはヘラルダいわく王室御用達の貴重なお菓子をこの日の為に用意してくれたらしい。



「こちらはウィシュトヴァラ国王様及び王妃様が御用達にされているショコラーデのお菓子でございます。とても甘いのだそうですよ。」



ショコラーデ、つまりチョコレートがこの世界にあるみたいだ。用意されたお菓子はトリュフだった。うん、確かにチョコレートだし甘くて美味しい。ちなみに、タルトの材料になっているリップルはりんごなんだと思う。味も食感も同じだったし。あれ、サーミンの時も同じ事を言っていた気がするけど気にしてはいけない。パトリシア姉様も『このお菓子とっても美味しいわね』とショコラーデを食べていた。ヘラルダいわくこのお菓子はユスティーネの娘であるミレーナの誕生日なのでウィシュトヴァラ国王からのお祝いも兼ねているのだそう。確か母親のユスティーネは王弟の従姉妹にあたるからそれでなのかもしれない。大ボリュームの料理を食べ終わった後はお誕生日プレゼントの時間だ。何が貰えるのかかなりワクワクしている。



「まずは私からね、新しい絵本よ。何時もはお姫様のものばかりだからちょっと違うものも用意してみたの。」



母親が絵本を5冊ほどまとめてリボンをかけてあるものがテーブルに置かれた。本を読むのは好きなのでとても嬉しい。



「お母さま、本を読むのは好きだから嬉しい。ありがとう。」


「ミレーナ、これは私と兄様からよ。」


「お店で見かけて可愛くてミレーナに似合うかと思ってパトリシアと相談して買ったんだよ。」



フェリクス兄様とパトリシア姉様からは連名でぬいぐるみのプレゼントだった。可愛らしいうさぎのぬいぐるみだ。まあ、まだ5歳の幼女だし仕方ないか。しかし可愛いぬいぐるみだしジュリエッタと一緒に布団に入ってもらおう。



「ありがとう、にいさま、ねえさま。寝るときにお布団に持って入るね。」



ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめてお礼を言うと二人とも少し照れた様子で喜んでくれたのなら良かった、と笑顔で言ってくれた。やっぱり家族が優しいのは嬉しいものだなあ。最後は父親からのお祝いだけど、『こちらにおいで』と父親に連れられて一緒に行くと大きな布がかけられた物体が目の前にあった。ヘラルダと他のメイドさんが布を外すと立派なピアノが現れた。えっ、楽器がプレゼントとか凄くないか?



「私からはこのピアノだよ、ミレーナ。ユスティーネがピアノが得意だったから君にもと思ったんだ。」


「あらまあ、このピアノは私が使っていたものと似ていますわね。」


「同じ職人を探して作ってもらったからね。」



えっ、わざわざ娘の誕生日プレゼントにピアノを作る職人さんにオーダーメイドで作ってもらったの?いくらかかっているんだろう…。きっとかなりのお値段がかかっているに違いない。流石にいくらでしたか、とは聞けないから有り難くもらう事にした。



「ありがとう、お父さま。でもお父さま、こんな立派なピアノもらってもいいの?」


「はははっ、構わないとも。ミレーナの為に用意したものだからね。」



物凄い笑顔で言われた。うん、この父親は娘には甘いのだなあ、としみじみと実感した。母親もそれを見て嬉しそうに微笑んでいて、そのうちピアノの先生と楽譜を用意しましょうね、とにこにこ笑顔で言っていた。まあ、ピアノとは言え、楽器を習うのはちょっと楽しみだな。



ちなみに、お昼ご飯及びデザートが豪勢だからと言っても夕食が質素と言う訳でもなかった。お昼ご飯よりは少なかったけど。寝る前はヘラルダとメイドさん達がお湯で濡らした濡れタオルで体を拭いて綺麗にしてくれた。多分お風呂がわりなんだろう。まあ、体を拭いてもらうだけでもだいぶ違うから致し方ないか。寝間着に着替えるとふかふかのお布団にいつの間にか守護精霊のジュリエッタが一緒に入り込んできた。今までどうしていたのか、と聞くとこの部屋でだらだらしていたのだとか。猫だからこれも仕方ない、のかなあ…。とにかく、もふもふのジュリエッタとプレゼントのぬいぐるみを抱きしめながら訪れた眠気に身を任せてすやすやと夢の中へと旅立ったのだった。夢が見られるかは別として。


異世界のお菓子について軽い解説

ショコラーデ:地球及び日本で言う所のチョコレート。異世界ではまだ貴族や王族くらいしか口にできないが、そのうち広まる予定。


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