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第八話:危機

初撃を止められた事にイラついたのか、ドラゴンが雄叫びを上げティータに襲い掛かる。


ドラゴンによる執拗な連続攻撃。

だがティータはそのすべてを、手にした大型の盾で凌ぐ。

例え弾き飛ばされようとも、倒れる事なく前へ出続ける。


「すげぇ……」


感嘆の声が自然と漏れる。

いくら彩音との戦いで弱っているとはいえ、目の前の山の様なドラゴンの繰り出す攻撃を受け止めきるなど、並大抵の事では無いはずだ。

本当に凄い。


だが時間が経つにつれ、ティータを覆うオーラが弱まってきた。

そう長くは持ちそうにない。


ティータのオーラが完全に消えてしまう前に、俺は動く。

右手をドラゴンの真上の天井辺りに向け、ゴーレムを召喚。


「喰らえ!ゴーレム落とし(ロッククラッシュ)


かっこよく名前を付けてみたが、要は高い位置で召喚したゴーレムを相手の上に落とすだけの技だ。

だが、落とすだけのシンプルな技ではあっても、一トン近い重さのゴーレムが数メートル上から激突する破壊力は相当なものだ。


落下してきたゴーレムがドラゴンの背中に直撃し、轟音とともにドラゴンが腹をつく。

当然落下してきたゴーレムは衝撃でバラバラになり消滅する。


(もう一発!)


もう一度天井に向けて召喚する。

だがゴーレムが落下しきる前に、攻撃を察知したドラゴンが背中の翼でゴーレムをはたき飛ばした。


(嘘だろ!あの状態で対応してくるのかよ!)


拘束する蔦(イヴィバインド)


地面から、人の腕ほどの太さがある蔦のような植物が無数に飛び出し、ドラゴンに絡みつき拘束する。

蔦に絡みつかれたドラゴンは必死で暴れるが、絡みついた蔦は簡単には引き千切れない。


流石名うてのドルイド。

ただの痛い人じゃなかった。

この人こそ最強の痛い人だ!


(ってこれじゃあ只の悪口だ。)


相手の動きが完全に封じられ、思わずテンションが上がりつい馬鹿な事を考えてしまう。


このまま抑え続けられれば、そう願うが。

残念ながら、願いは天に聞き届けられることは無かった。


暴れるドラゴンが急に動きを止め、口を大きく開け息を吸い込みだす。


(やばい!ブレスだ!)


「たかし!姉上の指示通りブレスを止めろ!」

「てめぇ!俺の方が年上なんだぞ!ちゃんと敬称付けろ!」


ティータに怒鳴り返しながら右手を向ける。

狙いは大きく開いたドラゴンの口の奥だ。


ドラゴンの喉奥に魔法陣が現れ、スライムが召喚される。

喉奥に侵入したスライムがドラゴンの喉を詰まらせ、ブレスの中断に成功する。

相当苦しいのか、ドラゴンは先ほどよりも激しくもがきだす。


ゴーレム落とし(ロッククラッシュ)で追撃したいが、残念ながらもはやゴーレムを呼び出すだけのMPは残っていない。



ティータを見ると、既に全身を覆っていたオーラは消えており、フラムさんも拘束する蔦(イヴィバインド)の維持でかなり消耗しているようだ。

拘束する蔦(イヴィバインド)が破られれば、もはや足止めする術はないだろう。


ティーエさんの方をチラ見するが、まだ彩音の意識は戻っていない。


(くそ!まだかよ!)


ブチブチブチと嫌な音が耳に届く。

見ると、蔦が少しづつ千切れだし始めている。

その光景を、俺は成すすべもなく眺めるしかなかった。


最後の一本が千切れ飛び、続いてズチャっという音と共にスライムが吐き出され、消滅する。


「姉上には指一本触れさせん!」


ティータが前に出るが、先程まで受け止めていた右足の薙ぎ払いを防ぎきれず、遥か遠くへと吹き飛ばされる。


そして、ドラゴンが俺にゆっくりと近づいてくる。

どうやら、俺が次の獲物として選ばれたようだ。


「たかしさん逃げてください!」


フラムさんが叫ぶ。


そうしたいのは山々だ。だが、恐怖で体が動かない。

さっきまでは平気だったってのに、もう駄目だと思った瞬間から、恐怖で体が竦んで動かない。


ドラゴンはどうやら俺をかみ殺す気らしい。

その大きな口が俺に迫る。


死を前にして思う。


何の為に生まれたのか?

元居た世界では何もしてこなかった。

せっかく異世界にまで来たのに、ここでも何も成せないまま終わる。


そんな無意味だった人生に、後悔の念が押し寄せてくる。


だがもう、どうしようもない。


俺は全てを諦め、目を瞑る。


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他にも投稿してますんで、良かったら見に来ていただけると嬉しいです。 おっさんだけど、夢の中でぐらい夢想していいよね!?~異世界へ日帰り転移~
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