表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/165

第七十七話 合流

「敵だ。たかし、仮契約(サモンフレンド)を」


先頭を行くレインが素早く敵を察知し、戦闘準備を促す。


仮契約(サモンフレンド)

一時的に仲間を召喚扱いにできるスキルだ。

召喚扱いになる仲間達には召喚用の回復魔法は勿論の事、召喚強化のスキルでの基礎強化も適応される。

流石にこの強化には支配者の指輪(ルーラーオブザリング)の効果は乗らないが、このスキル習得によってパーティーは大幅に強化されたと言えるだろう。


此方へと襲い掛かってくるサイクロプス。その数およそ十二匹。

レインはまるで舞を舞うかのような華麗な動きで、敵を次々と斬り伏せていく。


殲滅。

それも30秒とかからずに。

レイン一人の手で。


以前のレインならば、格下相手に強化を自ら求めたりはしなかっただろう。

ゴブリン達との戦いが、レインのそんな意識を変えたのだ。



30層でのゴブリンキング達との戦い……

レインはあの戦いを生き延びた。


流石レインと言いたいところだが、実際はゴブリン達が俺に逃げられた腹いせ辺りで、レインを殺さずいたぶってくれたお陰だ。

酷い目に遭わされて、お陰も何もあったものでは無いが。

結果的にそれがレインの命を救ったのも事実。


そう、レインは九死に一生を得た。



だがニカは助からなかった……


戦場となった場所から少し離れた所で、ニカは事切れていた。

背中に受けた大きな傷が原因だ。


ゴブリンは、遠く離れた仲間の血の臭いすら嗅ぎ分ける嗅覚を持つ。

恐らく、臭いや音で察知したゴブリンに襲われたのだろう。

姿を隠すだけでは不十分だったのだ。


ニカの亡骸を前に、パーは何度もすまないと謝罪を繰り返していた。

自分の判断ミスだと……


決して彼女だけの責ではない。

その事は彼女だって理解している。


だがそれでも


「確かに僕だけのせいだとは思わないよ。でも、僕がミスしたのは変えようのない事実だ。だから彼女を生き返らせて見せる。この天才錬金術師、パマソー・グレンの名に懸けて」


分厚い眼鏡のせいで、その瞳は伺えない。

だが口調やその雰囲気から、彼女の本気の気持ちが伝わってくる。


普段からふざけた態度の女性ではあったが、彼女にとっても仲間の死は重い罪業なのだろう。

普段の態度は相変わらずだが、明かに以前とは違う。

それが鈍感な俺にも感じ取れた。



そんな彼女の為、レインも必死なのだ。

これ以上彼女が余計な物を背負わずに済むよう。

その為、以前のように戦いを楽しむ事はせず、確実な戦いを選ぶようになった。



「見事だ」


レインの戦いぶりに、ティータが称賛の言葉を贈る。


「たかしやティーエの強化があればこそだ。本来の俺ではああはいかんさ」

「ふん。姉上は兎も角、たかしの強化など大したものでは無いだろう」


(明らかに俺の仮契約(サモンフレンド)の方が効果大きいんだがな)


どうやらティータは、俺の事は絶対に認めたくないらしい。

相変わらずの態度に辟易する。


レインも男だというのに、何故か俺だけが悪い虫扱いだ。

やはり好きな相手がいるというのが大きいのかもしれない。


俺は別にティーエさんに特別な感情など抱いていない。

それをきっちり伝えれば、奴の態度も少しはましになるのだろうか?


(ま、無理だろうな。俺の話、絶対まともに聞かなさそうだし)


「ティータ!たかしさんに失礼ですよ」


ティーエさんが弟を叱りつける。


「う、申し訳ありません。姉上」

「私ではありませんよ」

「く……すまない……たかし」


ティーエさんに促され、ティータが嫌々謝罪してくる。

本当に。

びっくりするほど嫌々。


(此処まで態度があからさまだと、もはや謝る意味無いんだが……)


「たかしさん。弟の非礼、どうか許してあげてください」

「そんな、気にしてませんよ」


1秒でも早く踏破する為、アルバート兄妹には頭を下げて手伝って貰っている。

ティータの態度は確かに不快だが、こうやって王墓探索を手伝ってもらっている手前、我慢するしかないだろう。

命懸けの探索の対価が嫌味程度なら安いものだ。


とにかく今は1秒でも早く50層へたどり着く為、俺達は先を急ぐ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも投稿してますんで、良かったら見に来ていただけると嬉しいです。 おっさんだけど、夢の中でぐらい夢想していいよね!?~異世界へ日帰り転移~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ