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第七十六話 タイムリミット

「おはようございます!!」

「お、おう」


元気な挨拶に面食らってしまい、思わず生返事を返してしまう。


声の主であるリンを見る。

その顔に昨日までの悲壮感はもう伺えない。

リンの表情は晴れやかとまでは言わないが、どうやら気持ちを上手く切り替えてくれたようだ。


彼女は席に着くと、注文を伺いに来たウェイトレスへと料理を頼む。

それも大量に。


「お腹すいちゃいました」


無理もない。

彼女はこの三日、碌に食事を口にしていなかったのだから。



あれから三日……

あの後のリンの落ち込み用はなかった。


大事な仲間を失う。14歳の子供にはきつい現実だ。

そんな現実に耐えきれず、この三日間彼女は部屋に閉じ籠りがちだった。


(フラムには感謝しないとな)


そんなリンを支えてくれたのがフラムだ。

この三日間、フラムはずっとリンの傍に付いていてくれた。

今こうしてリンがある程度気持ちを整理することが出来ているのは、彼女の功績が大きいと言っていいだろう。


「おはようございます」

「おはよう」


リンより少し遅れて現れたフラムに挨拶を返す。

彼女も席に着くと、手早く注文を済ます。


二人にどう声をかけようかと思案していると、リンが大きな声を上げる。


「たかしさん!あたしパーちゃんを信じます!」

「はい。信じましょうパーちゃんを」


リンに意見を肯定するように、フラムもパーを信じると口にする。


王墓攻略の暁には、蘇生の秘薬で死んだ仲間を生き返らせる。

それが全員一致の見解だ。


死んでも生き返られる。ならば落ち込む必要などない?

だがそんな簡単な問題ではない。


事前に古い文献などに目を通しているパーが言うには、秘薬自体完成している可能性は極めて低いらしく。

王墓を制覇しただけでは、生き返らせてやることは出来そうにない。


ここでリン達の、パーを信じるという言葉に繋がる。


未完成なら、完成させればいい。

彼女は俺達にそう言い放ったのだ。

天才である自分が必ず完成させるから、信じて欲しいと。


パーが完成させる。

それ自体は誰も疑ってはいないだろう。


問題はいつ完成するかだ。


遺体を崩壊させず維持し続けるには限界がある。

マジックアイテムや魔法を駆使しても、死体を腐敗させずに維持できるのは一年程度が限度だそうだ。


多少の腐敗なら蘇生できるだろうが、腐敗が進めば蘇生は絶望的になる。

そこで腐敗を避ける為、凍らせればと提案してみたが、凍結時に細胞全体を大きく傷つけるため、この方法は取れないらしい。


その為タイムリミットは約一年となる。

彼女の蘇生は時間との戦いだ。

少しでも急ぐため彩音達を呼び出し、この三日間もフラムとリン以外のメンバーで探索は続けられていた。


「おはよう」

「おはよう」

「おはようございます」

「彩音さん、おはようございます」


彩音が席に着き、リンに声をかける。


「リン、もう大丈夫なのか?」

「はい。今日からは私も参加します。休んでる暇なんてないのに、本当にごめんなさい」


あまり無理はするな。

それだけ答えると、彩音は自分の食事を注文する。


それと同時に、大量の料理がテーブルへと運ばれてくる。


「随分と多いな」


その量を見て、彩音が驚いたように声を上げる。

彩音も相当食べる方だが、今運ばれてき量は、そんな彩音から見ても驚く程の量だ。


「いっぱい食べて元気になります!だって絶対、絶対に……」


リンが一呼吸おいて声を張る。


「ニカちゃんは生き返えりますから!!」

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他にも投稿してますんで、良かったら見に来ていただけると嬉しいです。 おっさんだけど、夢の中でぐらい夢想していいよね!?~異世界へ日帰り転移~
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