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第六十五話 砦

「しかしでっかい砦だよなぁ、ここ」


俺は目の前の砦に感嘆の声を上げる。

ここに来るのは2度目なのだが、何度見てもその大きさには圧倒される。


帝国中央砦

帝国の首都のド真ん中にある巨大な砦だ。

通常、砦などは街の外にあるものだが、この砦だけは町の中央に建造されている。

この砦が外ではなく内に建造されている理由は至って単純。王墓に蓋をする為だ。


王墓内には強力な魔物達が渦巻いている。

その魔物達が外に漏れ出てきても問題ないように、この砦は建てられた。

その為、この砦には100人からの兵士が常駐しており、王墓入り口の警備に当たっている。


「まあこの砦は広告塔見たいなものだからねぇ。王墓から魔物が出てこれないようになってるのは前に言ったよね?」

「ああ」


現在王墓は30階層迄踏破されており、その構造の情報は冒険者によって売り買いされている。

当然俺達もその情報は購入済みだ。

決して安い買い物ではなかったが、お金で安全を買ったと思えば、まあ納得できる範囲の金額ではあった。

その情報によると、王墓内で魔物が存在するのは偶数階だけで、奇数階に魔物は存在しておらず、代わりに無数のマジックトラップが仕掛けられているらしく。


パーが言うには、その奇数階に存在する大量のマジックトラップが魔物の別階への移動を阻んでおり、基本的に魔物は外に出てこれない様になっているとの事だ。


「魔物は出てこれないんだよな?」

「まず間違いなくね」

「私もその話を聞いた時思ったんですけど、魔物が出てこないなら、何故こんなに大きな砦を建設したんでしょうか?」


フラムが不思議そうにパーに尋ねる。

正直それは俺も疑問に思っていた事だ。


「言っただろ?広告塔みたいなもんだって。例えば砦を作らなかったとして、トラップがあるから大丈夫って説明されたら、君らは安心するかい?」

「ああ、なるほど」


当然安心するわけがない。

周辺の人間は確実に魔物の影におびえて暮らす事になるだろう。


「ここは私たちがきっちり抑えてますよって、アピールする為だけに建造されたって事か」

「そう、仮にもここは帝国の首都だ。そこに暮らす住民が魔物に怯えて暮らすなんて、国としての威信にかかわるからね」

「冒険者に門戸が開かれているのもその為ですか?」

「そっちは半分かねぇ。屈強な冒険者が討伐してるから安心って宣伝効果も確かにあるけど、どちらかというと闘技場用かな」


(闘技場用?ダンジョン探索と闘技に一体どんな繋がりがあるんだ?)


「闘技に出場しているのは、大半が冒険者だ」


今まで黙っていたレインが急に口を開く。

しかし言葉足らずなためか、何が言いたいのかいまいち理解できない。


「そう、闘技に参加してるのは冒険者が大半なのさ。そして彼らは闘技だけで生計を立てている訳じゃない。どちらかと言えば、闘技は腕試しや小遣い稼ぎってのが主流だね」


そこまで言われて初めて理解する。

要は冒険者が集まる事で参加者が増えて、闘技場の賑わいが確保されてるって事か。


「闘技で対戦する魔物も、大半が王墓で捕らえられたものだ」

「王墓で捕らえた魔物なら輸送が比較的楽だからね。実際捕縛専用の冒険者チームも多いらしいよ」

「正に一石三鳥って事ですね」


(成程、考えられてるもんだな)


そんな話をしているうちに、俺達はロビーへと辿り着く。


砦の大きな門を抜け、まっすぐ進んだ先が受付のあるロビーとなっていて。

ロビーの中央にある受付の後側、丁度入り口と向かい合う位置にある大きな通路。

その先が王墓への入り口となっている。


通路の入り口には分厚く大きなスライド型の門扉が取り付けられており、現在は片側のみ解放されていた。

緊急時用の門扉なのだろうが、魔物が王墓から現われる可能性が低い以上、閉じられることはまずないだろう。


「受付お願いします」

「畏まりました。6名様ですね。では、皆様の闘技証をご提出ください」


俺達はそれぞれの闘技証を提出する。

受付の女性がそれらに目を通すと、その顔に見る見ると驚きの表情が広がっていくのがわかった。


(まあ、Sランク4人もいるからな)


現在闘技場に登録されているSランクは全部で5人だ。

その内4人が同じパーティーに固まっていれば、受付嬢が驚くのも無理は無いだろう。


「受付が完了しました。闘技証をお返しします」


俺達はそれぞれの闘技証を受け取り、脇の通路へと向かう。

すると受付の女性が声をかけて来た。


「あの。皆さんにこんな事を言うのは失礼にあたるかもしれませんが。どうかお気をつけて」

「ありがとう」


気遣いの言葉をかけてくれた受付のお姉さんに礼を言い。

俺達は王墓へと向かう。

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