第六十四話 レイン・ウォーカー
「お前達随分と軽装だな」
王墓の砦前で待ち合わせしていた男が、挨拶もせずにぶっきらぼうに問いかけてくる。
彼の名はレイン・ウォーカー。
長い銀髪と鋭い黒眼が特徴の帝国一の剣士だ。
「そっちだって軽装じゃねぇか?」
長袖のシャツにズボン、その上からよく判らない材質の胸当てに、腰に剣を携えただけの出で立ち。
人を軽装呼ばわりしてはいるが、彼もまた間違いなく軽装だ。
「装備の話ではない。荷物の話だ」
よく見ると彼の足元には、大量の荷物が纏められている。
(何あんなに詰め込んでんだ?まさかおやつをパンパンに詰めてるわけじゃないよな?)
「なんでそんなに大荷物なんだ?」
「貴様ふざけているのか?ダンジョン踏破を目指すならむしろ少ないくらいだぞ」
何故かレインが怒って俺を睨み付けてくる。
(いや多すぎだろ絶対。後、目つき鋭すぎて怖いから睨むなよな…)
内心ちょっとビビってしまったが、とりあえず平静を装う。
一応パーティーのリーダーという立場上、舐められるわけにはいかない。
「ああ、ごめんごめん。君に伝えるのすっかり忘れてたよ。たかし君が転移系魔法使をえるから、基本日帰りなんだよ」
「ほう、転移魔法を…」
レインが此方を値踏みするかのように、睨んでくる。
(一々俺を睨むなっつーの)
どうやらパーが伝え忘れたせいで、会話がかみ合ってなかったようだ。
「目印転移はMPあんまり使わねーから。昼飯も戻って来て食うんで、食料とかは万一の時用に最低限だけでいいぞ」
「いいだろう。貴様のお手並み拝見と行こうか」
(なんのだよ?)
テレポートにお手並みも何もないのだが、どうもレインは俺に対して挑発的だ。
決闘したいという強い気持ちからそういう態度になるのかも知れないが、パーティーを組んでる時ぐらい少しはフレンドリーにして欲しいものだ。
「あの、レイン・ウォーカーさん。初めまして…ではないですけど、フラム・リーアって言います。どうぞよろしくお願いします」
「リン・メイヤーです!よろしくおねがいします!」
「ニカ・ビータです。足手まといかもしれませんが、よろしくお願いします」
「レイン・ウォーカーだ。レインと呼んでくれればいい。その代わり、君たちの名も呼び捨てにさせて貰う。短い間だがよろしく頼む。」
そういや、挨拶がまだだったな。
一応俺も挨拶しておこう。
「俺の名は――「知っている」」
(人の挨拶遮んなよ!)
本当に失礼な奴だ。
どうやら、俺とだけは仲良くする気はないらしい。
「さて、自己紹介も済んだ事だし。王墓に行くとしますか」
「待て、最後にちゃんと確認しておきたい」
「何をだい?」
「報酬の話だ。王墓踏破に手を貸せば、奴と勝負が出来る。これで間違いないな?」
「勿論だよ。その代わり、それ以外の報酬は一切求めないって約束だよ」
「奴と勝負出来るのなら、他の物など不要だ」
パーが上手く交渉して纏めたのだろう。
でなければ、流石に自分から他の報酬は要らないとは言いださないはずだ。
正直足元見過ぎな気もするが、まあ他人の懐事情など此方の知った事ではないので良しとしよう。




