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第六十三話 御満悦

「ふふ」


嬉しさからかつい声が漏れてしまう。


「姉上?どうかなさいましたか?」

「ちょっとね」

「たかしの事ですか?」


ティータが不機嫌そうにたかしの名を口にする。

弟が不機嫌だったので、一応気を使って名前を出さなかったのだが、流石にバレバレだったようだ。


不機嫌の理由は、今日報告の為一時的に帰ってきたたかしが原因だ。

同時にそれは、自分の上機嫌の理由でもあった。


帰ってきたたかしは中庭で新召喚のテストを行ったのだが、その結果が私と弟の気分の明暗を大きく分けた。

テストの結果は思わぬ副産物により、最上の物となる。

当初の目的であった無限召喚こそ叶わなかったものの、それと同等か、それ以上の結果を彼は残していったのだ。


「確かに奴の能力は認めますが、私もこのままで終わる積もりはありません。どうか期待していてください」

「ええ、期待しているわ」


弟はたかしを毛嫌いしている。正確には、姉である私に近づく全ての男性と言った方が正しいだろう。

だがこれは決して焼き餅から来るものだけではない。

姉である私にとって、傍に男性を置くことがマイナスになると理解しているからこその悪感情と言える。


聖女を目指す者にとって男性とのゴシップは厳禁だ。

能力、貢献、評判、この3つがそろって初めて聖女への道が開ける。

男性と恋仲にあると噂になれば、評判の部分に問題が出てくる。はっきり言ってしまえば、聖女は処女が理想と言っていいだろう。

だからこそ、これまではあらゆる面で男性を近づけないようにしてきた。


そんな中、唯一の例外が発生する。それがたかしだ。

男性である彼とパーティーを組む事は私にとってマイナスでしかなかったが、彩音という強烈な利益確保のためには、どうしても彼と組む必要があった。

正直なところ、排除できるなら排除したかったというのが本音だった。


だが事情は変わりつつある。

当初は帰還魔法(テレポート)を使えるちょっと便利な人間程度でしかなかったが。

ヴァンパイアの一軒で、リンという強力な僕と、有用なアイテム入手した事で化ける。


そして今回のテストだ。


よくよく考えれば、彼もまた彩音と同じく異世界の存在なのだ。

彼がいずれ彩音に匹敵する存在になったとしても不思議ではない。


成長したたかしと彩音。

この2人をうまく利用すれば20台で聖女、いや、ひょっとしたら10台で辿り着く事すら可能かもしれない。

そう考えると、自然と頬が緩んでしまう。


うへへへ。


「あ…姉上!?」


ティータの裏返ったような声で正気に戻る。


「あ、やだ。そんなに酷い顔をしてた?」

「あ、いやその。そういうわけでは……」


姉上のお顔は美しいです。と、普段なら即答してくれていただろう。

その弟が返答に詰まるという事は、そうとうな顔をしていたという事か。


「姉上、確かに異世界の人間は優秀ですが、あまり気を許しすぎるのはやはり不味いのではないかと」


私の変顔の理由に気づいたのか、弟は私を窘める様に言ってくる。


「忠告有り難う。気を付けるわ」


確かに弟の言う通りではある。

たかしには着々と貸しを作ってはいるが、それだけで必ずしも上手くコントロールできるとは限らない。細心の注意を払う必要があるだろう。


なにせ彼らは金の卵を産む鶏だ。

決して逃がすわけには行かないのだから。



しかし十台で聖女か……

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