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第六十話 闘技

サイクロプス


単眼の巨人。

その体躯は優に三メートルを超え、その一撃は岩をも容易く砕く。

レベル80オーバーの強力なモンスターだ。


そのサイクロプスが円を描く様に俺を取り囲み、じりじりと間合いを詰めてくる。

大岩のような巨体に囲まれると、そこから発せられる圧力は凄まじいものがあり、相手が格下だと分かっていてもついたじろいでしまう。


さて、どうしたものか。

正直、サイクロプスは頭が弱いものとばかり思っていた。

見るからに頭の悪そうな見た目なのだが、どうやら最低限の知能は持ち合わせているらしい。

小さく脆弱な人間である自分に対し、何も考えずに突っ込んでくるとばかり思っていたのだが、まさか周りを取り囲み、様子を見ながら間合いを詰めてくるなど、完全に計算外だ。


彼らは一度人間に捕縛された経験から、人間が侮れない存在だと学んだのだろう。

とはいえ、俺がすべきことは何一つ変わりはしない。

ただ目の前の敵を殲滅するだけだ。


囲まれている状況で、相手が仕掛けてくるのを待つのは愚の骨頂だ。

完全に間合いを詰め切られる前に、5体の内最も体格の劣るものに突っ込む。

相手がそれに対応するかのように両手を振りかぶり、握り合わせた拳を俺に叩き込むべくハンマーの様に振り下ろしてくる。勿論そんな大ぶりの攻撃を喰らってやる謂れもなく、相手の攻撃を避け、お返しと言わんばかりに左拳を相手の脇腹へと叩き込んだ。

メキメキっという音と共に、サイクロプスのあばら骨が折れる感触が拳を通して伝わってくる。別にサイクロプスのあばら骨が脆いのではない。それだけ俺の一撃が強力だという証だ。


あばらが折れたサイクロプスは、体をくの字に折り曲げ膝を着く。

そのまま畳みかけて止めを刺したかったが、それよりも早く、別の個体が此方を吹き飛ばそうと背後から腕を薙いでくる。俺は振り向きながら、姿勢を低く落としてその腕を掻い潜り、そのまま低い姿勢から突き上げる様に飛び跳ね、体当たりをぶちかます。

体当たりを受けたサイクロプスは大きく吹き飛び、そのすぐ背後に迫っていた別のサイクロプスを巻き込んで盛大に倒れこんだ。


続いて2匹のサイクロプスが同時に掴みかかってきた。

一瞬腰にかけてある剣に手が伸びそうになるが、思い直し、横っ飛びで2体の掴みかかりを回避する。

そして着地と同時に、先程体当たりで吹き飛ばしたサイクロプスの足を掴んで振り回し、更に迫ってくる2体のサイクロプスを殴り飛ばす。

このまま武器として使おうかとも思ったが、見た目的に格好悪い気がするので、もう用なしとばかりに手にしたサイクロプスを振り上げ、豪快に地面に叩きつける。

ドォンという盛大な音と共に、叩きつけられたサイクロプスが地面を跳ね、そのまま息絶え消滅する。


残りは4匹。

最初囲まれた時は少々面食らったが、所詮今の自分の敵ではない。

後は油断さえしなければ、何も問題はないだろう。



「驚いたな…」


自身の率直な気持ちを、誰ともなしに呟く。

今日ここには、新たに登録されたというSランク冒険者二名の戦いぶりを見に来たのだが、まさか特に気にも留めていなかったAランクの冒険者に感嘆させられる事になろうとは。

動きは素人に毛が生えたようなものだが、驚くべきはその身体能力だ。人間の限界を遥かに超えていると言っていい。


技術度外視で肉体だけを極限まで鍛えた?いや、あり得ない。

あそこ迄肉体を鍛えておいて、技術が一切ついてこないなど考えられない。恐らくは何らかの方法で、限界を超えて肉体能力を高めているのだろう。


となるとあのモンスター達か……

奴は最初に三体のモンスターを召喚していた。しかし呼び出されたモンスター達は全て見た事のあるものだ。俺の知る限り、あのモンスター達には特殊な能力は無いはず?それどころか補助系のタイプですらない。


「まあどうでもいい事か…」


再び呟く。

彼の強さには何らかのカラクリがあるのは間違いない。

だがそんな事は本当にどうでも良い事だ。

重要なのは彼が強いという一点のみ。


この国で自分と互角に戦える者は居ない。闘技場に登録してはいるが、自分を満足させるだけの相手にはこれまで1度たりとも出会う事がなかった。

だが奴は違う。奴が相手なら、自分の力を余す事無く出し切れるはずだ。


そんな事を考えていると、闘技場全体が大歓声に包まれる。

奴が最後のサイクロプスに止めを刺し、勝敗が決したためだ。奴の強さに観客たちが拍手喝采を送る。


そんな大歓声の中俺は席を立つ。

奴に決闘を申し込むために……


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他にも投稿してますんで、良かったら見に来ていただけると嬉しいです。 おっさんだけど、夢の中でぐらい夢想していいよね!?~異世界へ日帰り転移~
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