第五十五話:レベル7って酷くね?
「あれが測定器か…」
目の前には人が一人入れる大きさの、透明な筒状のカプセルの様な物がある。
これは中に入った人間の大まかな戦闘レベルを測るマジックアイテムだ。
此処は闘技場の第3控室の横にある測定室。
俺達は今からこの測定器でレベルを測る事になっている。
わざわざ闘技場に足を運び、こんなメンドクサイ事をしてるのにはちゃんと理由がある。
何故なら、ここでのレベル測定が王墓探索許可の必須条件になっている為だ。
正確には闘技場でEランク以上のモンスターと対戦し、勝利する事が条件となるのだが、闘技に参加するには事前に測定器で戦闘レベルを測っておくことが必須となる。
これは闘技に参加できるレベルに達しているか確認する為であり、当然弱すぎれば弾かれてしまう。
「1番の人、準備出来てますんで中に入ってください」
係員に呼ばれたので恐る恐る中に入る。
別にびびる必要など無いのだが、初めての事だとどうにも緊張してしまう。
「たかしさん!頑張ってください!」
(何をどう頑張るんだよ?)
リンが大声で応援してくれるが、頑張った所で結果は何も変わらないだろう。
そもそも頑張り方が分からない。
だがせっかく応援してくれているので、とりあえず体に力を入れてみる。
「あー、力まないでリラックスしてください」
注意されてしまった…
「じゃあ始めますんでー」
係員がそう言うと、カプセルの透明なガラス部分に見た事も無いような幾何学的な模様が現れ、目まぐるしく形を変えては消え、また現れるを繰り返す。
(マジックアイテムってより、どっちかって言うと機械っぽいよな、これ)
こういったアイテムは誰が作っているのだろうかと、考え事をしているうちに測定が終わる。
「はいOKです。出てもらっても大丈夫ですよー」
OKが出たのでカプセルから出ると、係員が結果を伝えてきた。
「えーっと、たかしさんのレベルは……ぶふぉっ…ぶふふ」
突然係員が盛大に噴き出す。
(なんだ突然?何かの病気か?)
「す…ういません。たかしさんのレベルは…その…あれです…」
係員が乱れた息を整えながら此方に告げてくる。
「レベルは…7です」
「……………………え!?」
「ですから、レベルは7になります」
「ええええええええええええ!?」
余りの事につい大声を出してしまう。
「残念ですが、規定によりレベル15以下の方は登録をお断りさせてもらっておりますので…」
係員が憐れむような眼差しで此方を見つめ、不合格を告げてくる。
(ていうか何だよ7って、俺のレベルは70だぞ!)
弱い弱いとは思っていたが、まさかサモナーのレベル70は他職レベル7相当だったとは…
余りの出来事に膝から崩れ落ち、地面に手を付く。
「あの、たかしさん。サモナーはモンスターを呼び出して戦うクラスですから、そういった特殊な力は計測外なのでは?」
フラムが此方を慰めるように言ってくる。
(言われて見りゃ確かにそうだな。基本俺が戦うクラスじゃないし)
フラムに言われて自信を取り戻し立ち上がるが、不合格なのには変わらない。
「計測されないんじゃどうしようもないし、お手上げだよなぁ」
「例のリングを付けられてはどうでしょうか?」
「ん?リング?」
「ほら、ブラドが落っことした支配者の指輪ですよ」
「ああ」
すっかり忘れていた。
呪われていないというフラムの鑑定を信じない分けではないが、あれを着けるとどうも体がムズムズする為、必要な時以外身に着けないようにしているのだ。
「あれの効果って測定されるんかね?」
「多分大丈夫だと思いますよ。というか指輪は基本身に着けておいた方がいいと思うんですが。無くしたり盗まれでもしたら一大事ですし。」
確かに。
彩音の恩情で只同然で手に入れたとはいえ、指輪自体の価値はとんでもなく高い。
無くすとショックなのはもとより、怒った彩音に鉄拳制裁されたのではシャレにならない。
あまり気は進まないのだが、これからは常に身につけておくとしよう。
「あの、係員さん。後生ですからもう一度だけ計測して貰えませんか?」
「いや、そういわれても…」
「お願いします!もう一度測って駄目なら俺も綺麗すっぱり諦められます!どうかこの通り!」
「しょうがないですね。次駄目だったら本当に諦めてくださいよ」
「ありがとうございます!」
断ると延々ごねられると思ったのか、案外あっさり承諾が貰える。
(これでまたレベル8だったら超恥ずかしいから、ちゃんと仕事してくれよ)
そうして俺はリングを指にはめ、再び戦場へと舞い戻る。




