第五十二話:帝国
「わ!たかしさん、凄い人ですよ!王都も凄く人がいっぱいでしたけど、ここはもっと凄いです!」
リンが大きな街並みと、想像以上の人混みに歓声を上げる。
余程興奮したのか、凄い凄いをさっきから連発しており、お上りさん丸出しでちょっと恥ずかしい。
それでなくてもウェディングドレス姿のフラムが目立つのに、これ以上目立つのは勘弁してほしい所だ。
ここは帝国の首都、カルディオン。
俺とリンそれにフラムは、王墓と呼ばれるダンジョンのお宝を求めて、帝国の首都であるカルディオンへとやって来ている。
帝国は王国の北部に位置しており、この両国、いや、魔法国を含む3国はもともと一つであったことから、国名には全てルグラントの名が冠されており、首都の名前に到っては全く同じだったりする。
自国こそが真の後継であるという意思の表れなんだろうが、縦に並ぶ3つの国がほぼ同じ名前というのは少々馬鹿っぽく感じてしまう。
「リン、あんまり騒ぐなよ」
「はーい!」
リンがとびっきりの笑顔で片手をあげ返事してくる。
(あ、これは言ってもダメなパターンだ)
新しい物を見つけた好奇心旺盛な14歳の少女に、我慢して大人しくしろと言った所で土台無理な話である。
「リンちゃん、迷子になったら大変だから手繋ごっか」
「うん!」
(おお!ナイスフラムさん!)
流石のリンも手を繋がれてる状態ではちょこまか動き回れないだろう。
本当に気の利く人だ。
これで服装がまともならと、もう何度も思ってきた事だがそれでも思わずにはいられない。
「それでどうしましょう?このまま真っすぐ王墓に向かって、先に詰め所で登録を済ませて置きますか?」
王墓への出入りが解放されてるとは言え、一応入るのには最低限の許可を取る必要がある。
実力のない者が無闇にダンジョンに入り込めば、たちまち命を落としてしまう事だろう。
それを避ける為に最低限のチェックが用意されているのだ。
「うーん、登録にどれだけ時間が掛かるか分かないから、とりあえず王墓付近で宿屋を見つけてからにしよう」
「そうですね」
「わたし、宿屋は美味しいケーキが食べられる所が良いです!」
王都で泊まっていた宿屋が朝食のデザートとして美味しいケーキを出してくれる宿だった為、それに味を占めたのだろう。宿屋選びに無駄な厳選を求めてくる。
(仮にそんな宿屋に泊まっても、俺の分は全部リンに取られちまうからなぁ)
王都滞在中、朝食のケーキはほぼ全てリンに取られている。
自分の分を凄い勢いで平らげ、俺が自分の分を食べようとすると、びっくりするぐらい凄く悲しそうな目でこっちを見てくるため、渋々リンに譲る破目になっていたからだ。
「ふふふ、美味しいケーキが出る宿屋が見つかるといいね」
「はい!」
(やれやれ、帝国にはダンジョン踏破の為にやって来たってのに、その最初のミッションが美味しいケーキの出る宿屋探しになるとはな…)




