第二十五話:エルフの森
暑い。
どうしようもなく暑い。
まるで蒸し風呂だ。
ここはエルフの森。
昼なお暗く鬱蒼と茂る木々の中、俺たち三人はリンが暮らしていたエルフの里へと向かっている。
しかしこのエルフの森がとんでもなく暑い。
日の光が殆ど差し込んで来ないというのに、森の外よりも明かに気温が高い。
おまけに湿度も高く不快な事この上なしだ。
(いったいどうなってるんだこの森は…)
これほどの暑さにもかかわらず前を行く二人は涼しい顔でずんずん歩いていく。
どうやらエルフは暑さや湿気に強いようだ。それも相当。
何せフラムさんはウェディングドレス姿にもかかわらず、汗一つ書いていない程だ。
(まあエルフは長くこの森で生活してるわけだし、暑さに弱くちゃ話にならんか)
森に入ってからまだ2時間しかたっていないが、もうへばってきた。
暑さに加え、慣れてない森での行軍は俺の貧弱な肉体には堪える。
前を行く二人に休憩を打診したい所だが…
(男の俺が真っ先に、辛いから休憩しませんかとは言えないよなぁ…)
何とか休憩に持ち込む良い案はないかと思案していると、ふいに視線を感じる。
(何だ?誰かに見られてる?魔物か?)
立ち止まり辺りを見渡すが特に何かがいる様子もない。
(勘違いか?)
フローティングアイで確認しようかと迷っていると、フラムさんがこちらに気づいたのか近づいて声をかけてきた。
「たかしさん、どうかしました?って凄い汗じゃないですか!?」
「え?ああ、この森って暑いよな」
「ごめんなさい、私全然気づかなくって。今耐熱魔法をかけますね」
魔法をかけて貰うと一気に体感温度が下がり、楽になる。
「ふぅ。ありがとう、助かったよ」
「ごめんなさい、エルフの森に人が来る事って滅多にないから完全に失念してました」
「しかし異常な暑さだな、この森は」
「私もよくは知らないんですが、神樹の力で森は常に一定の環境に保たれている見たいなんです」
「神樹?」
「森の中央にある神聖な力を持った大きな木で、この森を守ってるって言われています」
(神樹か。ゲームとかだと下にダンジョンとかが広がってたりするんだよなぁ)
「ダンジョンがあってそこには強力な魔物が封印されてたりして」
冗談めかしに言ってみる。
「え!?何で知ってるんですか?」
(あんのかよ!さすが異世界)
「そこには強力な力を持つヴァンパイアが勇者様の手で封印されてるんですよ!!」
リンが嬉しそうに説明してくる。
勇者が着ていたというつなぎを着ている事と良い、どうやらリンはかつてエルフたちを救った勇者に強く憧れているようだ。
(しかしつなぎ着てる勇者ってどうよ?)




