第十八話:カンパ詐欺?
「くっそ彩音のやつ、人の首筋に手刀なんか叩き込みやがって」
首の裏辺りを押さえながら呻く。
(まあ彩音のお陰で失言をうやむやに出来たのは有難いんだが、もうちょい加減してくれよな)
気が付いてからもう2時間もたつが、未だに首が痛む。
結局意識が戻った時にはカーターさんは出かけいたので、お金だけ受け取って別邸からはさっさとおさらばさせて貰った。
ティーエさんから王都滞在中は別邸に泊まっていくように勧められたんだが、丁重にお断りしておいた。
あんな居心地悪そうな場所で寝泊まりするのはまっぴらごめんだ。
「しかしまいったなぁ」
自らの失態を痛感しつつ呟く。
始めてきた街を適当にぶらついていたせいか、道に迷ってしまったのだ。
しかも、もう日が傾いてきている。
正直今から宿屋を探して見つけるのは絶望的だ。
アルバート邸の方角は分かっているから、最悪戻って泊めてもらうという手もあるが、断っておいてやっぱり泊めて下さいではかっこ悪過ぎる。
できれば避けたいところだ。
どうしたものかと思案すると、名案が浮かんできた。
(そうだよ!別にこの街で寝泊まりする必要ないよな!)
帰還魔法を使えばいいだけの話だ。
(そういやコールスの村の宿の飯美味かったなぁ。宿はぼろかったけどあそこでいいか)
ハーピーを呼び出し帰還魔法を使う。
足元に自分を中心とした光輝く魔法陣が描かれ、描かれた魔法陣が腰の辺りまでせりあがってくる。
次の瞬間魔法陣が自身の周りを球状に包み込み光り輝く。
直後視界は暗転し、体は浮遊感に包まれる。
だがそれは一瞬だけの事、地面に足がつく感覚、重力による肉体の重みを感じ視界が戻った時、転移は終了していた。
目の前にはコールスの村の中央にあった噴水がある。
「よし。転移成功」
失敗するなど微塵も考えた事などないが、何故か毎回口走ってしまう。
(さて、宿屋に行くとするか)
「あ、あの!今のって転移魔法ですか!?」
突然の声に振り返ると、少女が驚いたような表情でこちらを見ていた。
年の頃は14~5と言ったとこだろうか。
金のショートカットに、吸い込まれそうなほど深い緑の瞳。
耳が長くとんがっている事から、エルフであることが窺える。
顔立ちも整っており。可愛いと綺麗が調和し引き立てあう奇跡レベルの顔立ちだ。
俺的美少女ランキングで、ティーエさんに続く堂々の2位!
「あの!私、リンっていいます!」
少女が大声で自分の名を告げる。
「どうかエルフの森を助けてください!」
(え?いきなり何言ってんだこの子?初対面の俺に助けてとか?あ!森を守るための活動資金をカンパしろって事か!)
カンパ詐欺……まさか異世界に来てまでそんなものに出くわす事になろうとは、夢にも思わなかった。
(しかしこのエルフの娘、なんでつなぎなんか着てるんだ?つなぎがルグラントでカンパを求める時の基本スタイルなんだろうか?)




