第十七話:口は災いの元
「おお!皆さん良く来てくださった!」
豪奢な大広間の中央。
立派な金の髭を蓄えた大男が、体に負けない大きな声で俺達を出迎えてくれた。
「カーターお兄様、お久しぶりですわ」
「お久しぶりです兄上。相変わらず御元気そうで何よりです」
「おお!ティーエにティータ、良く来てくれたな!お前たちの顔が見れて兄は嬉しいぞ!」
そう言いながら2人をカーターさんは強く抱きしめた。
(暑苦しそうな人だな)
正直苦手なタイプだ。
ここは王都カルディオンにあるアルバート家の別邸。
ここへは報酬を受け取りに来たわけだが、別邸とは思えないほどの豪華絢爛さについ気圧されてしまう。
(しかし、いつまで抱き合ってるんだこの兄妹は……)
3人の兄妹はずっと抱き合ったままだ。
長い抱擁である。
かれこれもう5分は抱き合っているだろう。
久しぶりに会えてうれしいのは分かるが、待たされる身としては手早く終わらせて欲しい所。
それでなくても建物が豪奢すぎて、場違い感から居心地が悪いのでさっさと用を済ませたいのだが。
「カーター様、お客様を余りお待たせするのは…」
後ろに控えていた初老の執事が声をかける。
(爺さんナイスだ)
「おお、そうっだった!お待たせして申し訳ない。久しぶりの再会でつい感激してしまって」
「いえ、お気になさらないでください。感動の再会をお邪魔するほど、私たちも野暮ではありませんから」
フラムが丁寧に対応するのを見て感心する。
(見た目以外は本当に完璧だな、この人)
「そう言って貰えるとありがたい。そういえば自己紹介がまだでしたな。私はカーター・アルバート。アルバート家の次男で、この別邸を預かる身です。どうぞ気軽にカーターと呼んでください」
「初めましてフラム・リーアと申します。私の事も気軽にフラムとお呼びください」
「おお!貴方がフラムさんですか、大変優秀なドルイドだと妹達から伺っていますよ」
「いえ、そんな。私なんてまだまだです」
「ははは、謙虚な御方だ。」
(こういう寒いやり取り苦手なんだよなぁ…)
和やかなやり取りを横目に、はよ金よこせと言いたくなる。
言ったら言ったで面白そうではあるが、後々生じるであろうデメリットを考えると、流石に実行する気にはなれない。
フラムとのやり取りがまだ続きそうなので、暇つぶしに後ろに控えているメイドさん達を眺めてみる。
どの娘も美人だ。
(これは絶対顔で選んでるな)
そう考えると、途端にカーターの顔がスケベ顔に見えてきた。
そんなどうでもいい事を考えていると、カーターに声をかけられる。
どうやらこっちの番が周ってきたようだ。
「たかし君と彩音・彩堂さんだね。」
「初めまして」
「はよ金くれ」
言う気はなかったはずなのに、突然声を掛けられてつい本音が出てしまう。
そして次の瞬間首筋に衝撃が走り、俺の意識は途切れた。




