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第七十話 人質

≪主!あぶねぇ!≫


ガートゥが叫ぶ。

作戦成功の達成感に意識を取られていた俺は、その声で攻撃に気づき咄嗟にガードして直撃を避ける。


「があぁぁ!」


邪悪に弾き飛ばされ、体が地面に叩きつけられる。

凄まじい衝撃で全身がバラバラになりそうだ。


油断大敵とはよく言ったもの。

作戦が成功した事に浮かれ過ぎて、邪悪の一撃に気づくのが遅れてしまった。

ガートゥの声や蔦による拘束が無ければ一撃でやられていたかもしれない。

危ない所だった。


「戦闘中だぞ。油断するな」


「わりぃ」


邪悪の手に突き刺さっていたレインが手元へと戻って来る。

俺は痛みを堪えて素早く立ち上がり、手に取って追撃に備えた。

が――


「追撃は……無さそうだな」


目の前で邪悪が苦しそうに藻掻き、その巨体の膝をつく。

邪悪の中から彩音の気配を強く感じる。

大精霊達が彩音を叩き起こしてくれたのだろう。

きっと中で彩音が暴れているに違いない。

さあ、反撃開始だ。


「と、その前に。ご苦労さん、二人とも」


もう一つの体の融合を解き、魔力を使い切りへたり込むフラムとパーに礼を言う。

短時間とはいえあんな規格外の化け物の動きを制していたのだ、2人の魔力はもうからっぽで戦いにこれ以上参加するのは難しいだろう。


「悪いけど少し休ませて貰うよ。まあ負けない程度に頑張っておくれよ」


「たかしさん、愛ですよ。愛!」


まったく。

緊張感のない二人だ。

まあそれだけ俺達の勝利を信じてくれているという証だろう。

俺はその場を離れ、もう一つの体の傍に急ぐ。


「たかし」


「ああ」


この場で融合できる相手は後一人。

俺はレインと融合し、剣へとその姿を変える。


≪融合か……不思議な感覚だな≫


初めて会った時は、まさかレインと融合する何て夢にも思わなかったものだ。

俺は融合した体を両手で強く握り込む。


「行くぞ!」


宣言し、俺は駆ける。

全てを終わらせるために。


邪悪はまだ膝をついたままだ。

一気に間合いを詰め、地面に付いた手を全力で切り裂いた。


「っ――――」


邪悪が声なき苦痛の声を上げる。

どうやら声帯は備えていない様だ。

だがその苦悶の表情から、攻撃が聞いているのだけははっきりと分かる。


≪手応えありだ!≫


≪一気にしとめてやろうぜ!主!≫


「ああ!」


俺は一心不乱に手にした剣を振るう。

邪悪もその攻撃に反応して必死に反撃してくる。

だがその動きは鈍い。

俺の振るう刃は奴の手を、足を、そして頭部を滅多切りにする。


胴を狙わないのはそこに彩音がいるからだ。

下手に切り付ければあいつを傷つけてしまう。

可能ならばこのまま奴の手足を切り落とし、無力化してから彩音を救出したい。


そいう思い、上段に構えた剣を全力で奴の腕に振り下ろす。

まずは右腕からだ。

だが俺はその剣を直前で止め、そのまま間合いを離した。


「くそがっ!」


悪態をつき、奴の腕を睨みつける。

俺が切りつけようとした場所、そこには――



彩音の顔があった。

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