表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/165

第十四話:噂話

「アニエス様!」


名を呼ばれ振り返ると、少年がこちらへと駆けてくる。


「そんなに慌てて、どうかしたのか?」


少年の名はカーター・オズワルド。

最近騎士団に入ったばかりの見習い騎士だ。

年齢は13歳。

本来騎士団への入団は16からなのだが、その卓越した剣技が認められ、13歳という若さで入団を許された天才少年だ。



「お聞きになられましたか!?」

「何の話だ?」

「ドラゴンの事です!カルディメ山脈に住まうドラゴンが、たった5人の勇者によって討伐されたと!」


少年は興奮を抑えきれないのか、大声で話す。

この年頃の少年にとって、強大な力を持つドラゴンを勇者が倒すといった英雄譚は、さぞや胸に響いた事だろう。


「ああ、その話か。お前はまさかそんな話を本気で信じているのか?」

「え!?ですが報告では5人で倒されたと…」

「たった5人で竜討伐など不可能だ。まあ、バルクス団長クラスが5人いれば話は別だが」


ありえない話だ。

王国騎士団の頂点に立つ男、バルクス・ファーガン。

ルグラント王国における最強の戦士だ。その彼と同等の人間を5人集める事など、出来るはずがない。


しかも5人の内2人はアルバート家の姉弟だ。

あの2人も優秀ではある。天才と言ってもいいだろう。

だが、団長と比べると確実に1~2ランク劣る。


つまりたった5人で倒す事など不可能という事だ。


「で、ではドラゴンを倒したというのは、虚偽の報告だと?」

「ドラゴンを倒したのは事実だろう。調べれば直ぐにばれる嘘をつくほどアルバート家の人間も愚かではないだろうからな」


アルバート家。

アニエスのコリン家と並ぶ王国三大貴族の一つだ。


莫大な資金と国内に強大な影響力を持つアルバート家の力なら、精鋭を極秘に集める事も可能だ。

恐らく数百人程度の精鋭でドラゴンを討伐し、姉弟の手柄にしたのだろう。

被害も相当な数だったに違いない。

下手をすれば半数以上が命を失っている可能性もありえる。


もっとも、亡くなった者たちに同情する気はない。

如何に腕が立とうとも、所詮金や立場に釣られた欲深い亡者でしかないのだから。


「見栄の為か…」

「アニエス様?」

「いや、今回の事でアルバート家はどれほど金をばら撒いたのかと思ってな」

「その、大丈夫なんですか?」


少年も言葉の意図を理解したのだろう。

心配そうに聞いてくる。


大丈夫なわけがない。

家の立場は同格とはいえ、確たる証拠もなしに他家を非難するなど、相手に付け入るスキを与えるだけだ。


「すまん、忘れてくれ」

「あ、はい。忘れました!」


子供らしい素直な反応に、つい微笑んでしまう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも投稿してますんで、良かったら見に来ていただけると嬉しいです。 おっさんだけど、夢の中でぐらい夢想していいよね!?~異世界へ日帰り転移~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ