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第十二話:見舞い

コンコン


一応ドアをノックする。


「どうぞ」


(あれ?)

返事が返ってきたことに驚き、勢いよくドアをあけ放つ。


「よお」


ずっと眠っていた彩音が、ベッドから上半身を起こし挨拶してくる。


「やっと起きやがったか、デカいなりして眠り姫様ごっこなんざ似合わねーぞ」

「もお、たかしさんったら。ほんとは心配してたくせに。でも良かったです。」

「二人とも心配をかけてすまなかった」

「気にしないでください。それよりお加減はどうですか?」

「絶好調と言いたいところだが、少し体がだるいな」

「でしたら司祭(プリースト)さん呼んできましょうか?」


この国の病院施設は教会が運営している。

大抵の怪我や病気が魔法で治ってしまう以上、医者という職業は存在しない。

その為、彩音が入院してるこの病院も教会の敷地内に建っている。


「いや、大丈夫だ。これぐらい少し体を休めれば治るさ」

「無理しないでくださいね。あ、そうだ。これ、お見舞いのお花です」


結局花取り合戦はフラムさんに軍配が上がり、痛さ5割増しでここまで来るはめになってしまった。

無力な自分恨めしい。


「花か…綺麗だな、それにいい香りだ」

「でしょう!それ、たかしさんが選んだんですよ」


(なぜこの女は当たり前のように嘘をつくんだ?)


恐るべし恋愛脳。


「そうだ私、彩音さんが起きた事、ティーエさん達に知らせに行きますね」


そう言うと俺に軽くウィンクをして部屋から出ていく。

もはや何も言うまい。

言っても絶対聞かないだろうし。



「そういやさ、彩音は何でこの世界に来たんだ?」

「なんだ藪から棒に?」

「いや何となく。やっぱ強くなる為か?」

「無論だ。お前だってそうだろう?」

「いや、全然違うぞ」

「そうなのか?」


彩音は不思議そうに首をかしげる。


生まれてこの方、強くなりたいなんて言葉を発した事はない。

何をもってして自分と同じだと思ったのだろうか。

むしろ不思議そうに首をかしげたいのはこっちの方である。



「たかし、3年前の事覚えてるか?あの時もこんな風に見舞いに来てくれたよな」


(3年前か…そういや見舞いに行ったな。まあ行ったというか、無理やり行かされただけなんだが)


3年前、彩音は銃で撃たれて入院していた。

偶然出くわした銀行強盗3人相手に大立ち回りを演じた結果、隠れていた4人目に銃で撃たれたのだ。


「あの時、私は油断から怪我を負ってしまった。我ながら情けない話だ」


彩音は銃で撃たれながらも、4人目もちゃんとぶちのめしている。

何が情けないのか俺には理解できないが、彩音には彩音なりの拘りがあるのだろう。


「あの時は周りから無茶をするなと、散々怒られてな。でも、皆最後は良くやったって褒めてくれたんだ」


(まあ女子高生が素手で銃持った相手に喧嘩吹っ掛けりゃ、そら怒られるわな)


とはいえ、全員とっ捕まえたわけだから、怒るべきか褒めるべきか難しい問題だな。


「だけどお前だけは違った。今に満足するな、上を目指せと。お前は私にそう言ってくれたんだ。」


(あれ?俺そんなこと言ったっけ?)


3年前を思い出してみる。

確か夏休みだったはず。



あの日、俺はネトゲの美味しい期間限定イベントを寝る間も惜しんでこなしていた。

にもかかわらず彩音が入院したって事で、お袋に尻を蹴飛ばされて病院に行くはめに。

重症だというから渋々出向いたのに…


(病室に行ったら彩音はぴんぴんしてて、それで腹が立ったんだよな。)


で、思わず煽ってしまった。


「銀行強盗にやられたんだって?」

「ああ、だが全員倒した」


彩音が最強を目指していた事を思い出し、そこをつく。


「倒した…ねぇ。高々銀行強盗相手に負傷しておいて、最強が聞いて呆れるぜ」

「相手は銃を持っていたんだ、しょうがないだろ」

「はっ、苦しい言い訳だな。お前の目指す最強ってのは、素人が強い武器を手にしたくらいで怪我する程度のもんかよ」

「な!そんなわけないだろう!」

「だったらそんな様で満足してないで、精々精進するこったな」


といった感じだ。



「あの時、お前だけが私の背中を押してくれたんだ。私に強くなれと」

「そ。そうか…」


腹が立って煽っただけなのだが。

(何だかいい話風に受け取ってくれてるようだし、この際真実とかどうでもいいよね!)


「だからたかしには感謝してる」

「感謝してた割に、この世界で再会したとき直ぐ名前出てこなかったよな?」

「あ、あれは度忘れしてただけだ。もう忘れろ!」



「仲が良いねぇ」


いきなり声が聞こえ周りを見渡すと、病室にいたはずが何もない黒い空間に変わっていた。

そこには俺と、ベッドに寝ている彩音。



そして毛玉がいた。






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他にも投稿してますんで、良かったら見に来ていただけると嬉しいです。 おっさんだけど、夢の中でぐらい夢想していいよね!?~異世界へ日帰り転移~
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