第十一話:恋愛脳
「はぁ…」
溜息が口から洩れる。
(憂鬱だ…)
この憂鬱な気分はすでに一週間近く続いている。
「溜息なんかついて、どうかしたんですか?」
フラムが俺を気遣って声をかけてくれる。
(原因はてめーだよ)
などと本当の事を言えるはずもなく、言葉を濁す。
「あ、いや。気にしないでくれ」
「何か悩みや困ってる事が有ったら、遠慮なく私に相談してくださいね」
悩みの原因に悩み相談など笑えない。
いっそぶちまけてやろうかとも思ったが、優しそうな笑顔で俺の心配をしてくてる女性に、暴言を投げかける勇気は持ち合わせていない。
ドラゴンを倒してからもう一週間もたつ。
ドラゴンとの命を賭けた死闘。
それを共に乗り越えた彼女は戦友と呼んでいいだろう。
しかし如何に戦友といえど、ウェディングドレス姿で付き纏うのは流石に勘弁してほしい。
それが一週間も続けば、戦友からストーカーに格下げしたくなってくる。
彼女はどうやら、俺が彩音の事で落ち込んでいると思っているらしく、励まそうと何かと付き纏ってくるのだ。
小さな親切大きなお世話とは正にこの事。
(そもそも落ち込んでねーし)
彩音は現在入院中。
怪我自体はティーエさんの回復魔法で完治している。
だが何故か意識が戻らず、未だ意識不明のまま眠り続けているのだ。
最後に使った大技の影響で肉体が疲労しきって、その回復のために深い眠りについているだけだから心配はいらない。
そうティーエさんに言われたのだが、流石に一週間も起きてこないとなると、心配するなという方が無理がある。
「あ!このお花可愛い!このお花にしませんか!きっと彩音さん喜びますよ~」
満面の笑みで花を手に取り喜ぶ。
御見舞い用の花なのだが、ウェディングドレスを着ている彼女が手にするとブーケにしか見えない。
(見舞いの花を買っても彼女に持たせるのは危険だな)
痛さ5割増しである。
「じゃあその花にしようか」
「やったぁ!」
以前はもっと落ち着いた感じの女性だったんだが、俺を励ます為かこの一週間は妙にテンションが高い。
それとも元々こういう性格で、打ち解けてきたからだろうか?
「何だかこうしてると、デートしてるみたいですね」
(勘弁してくれ。人生初デートの相手がウェディングドレスとか黒歴史も甚だしい)
「なーんて、冗談ですよ!そんな事言ったら、彩音さんに怒られちゃいますもんね」
「何度も言うけど、彩音と俺は何でも無いからね」
「はいはい、そういう事にしておきますね」
このあほ女は俺と彩音ができていると勘違いしており、何度否定しても照れているだけとしか受け取ってくれない。
(これが恋愛脳ってやつかだろうか?)




