俺と君
俺の願いは、君の幸せ。
そして、俺の幸せははたから見れば極々ささやかで小さなもの。
だけれど、それは俺にとってはとても大きなもの。
君は俺が我慢をしてるとか思ってるみたいだけれど、それは違うよ。
俺は我慢をしているつもりはない。
君は俺には我侭を思う心がないと思っている。
君の願いを叶えるただの忠実な器だと思っている。
確かに俺には我侭と呼べるものはあまり浮かんでは来ない。
だけど、そうだな…。
しいていえば、君の願いは全て叶えたいというのが俺の我侭。
だから、君に、君の願いを叶えるだけの忠実な器だと思われても仕方がないかな。
でも、それも仕方がないことだ。
だって、俺の全ては君。
君は俺以外の人を知らないから。
その暖かさを知らないまま大きくなった。
君が俺と二人で生きていくことになったのは、幼い頃の君が他と触れ合って傷つく環境が出来てしまったからだった。
君に俺以外の人の優しい心を教えてあげたかった。
その心のぬくもりを身近に感じさせてあげたかった。
だけど、今更また傷つけるつもりはないから、そっとしておいてあげる。
君を他から引き離したのは俺だから、せめてもの償いとして俺は出来る限り君の望みを叶えてあげたい。
もし、君が俺が居ても孤独を感じるなら、そのときは静かな人の世に解放してあげる。
そして、そこで人の暖かさを知ればいい。
俺が君に何も語らないのは、胸を張って話せるような人生を歩んできたわけじゃないから。
君に知られたくない俺がそこに入るから、いくら訊かれてもどうしても自ら進んで教えてあげることが出来ない。
だって、俺は君から俺以外の人を奪った。
それなりの償いが俺は欲しいんだ。
君と二人、我侭なんてないよ。
何も我慢なんかしてないよ。
だから、気にせず俺の前ではいっぱい、いっぱい…無茶なことを言っていいよ。
俺にはそれに応えられるだけの自信と自負があるから、必ず叶えてあげる。
二人だけの世界はとても狭いと知っているけれど、それでも構わないと思ってしまうくらいに、周りはどうでもよくて君だけを見ていられる。
俺が何でもしてあげる。
君の望みなら、なんだって叶えてあげたい。
君が涙を流したなら、俺は傍にいてあげる。
君が落ち込んでいたなら、俺はそっと抱きしめてあげる。
君が笑えなくなったら、俺は代わりに笑ってあげる。
君が寂しさに支配されそうになったら、俺は黙って慰めてあげる。
君が道に迷ったなら、俺は力強く手を引いて前を歩いてあげる。
君が悩んでいたなら、俺は立ち尽くす小さなその背を押してあげる。
君が傍に居てくれるなら、それだけで俺は良い。
この先、君がこの小さな世界を窮屈に思うなら、俺は内心を隠してでも見送りだそう。
だけど、そのときはそこで俺とはお別れ。
新しい真っ白な道を歩くといいよ。
でもね、どうかそれまで俺の傍で屈託なく笑っていてください。




