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硝煙の幻想郷《ファンタジア》  作者: 日之浦 拓
第六章 機兵の王

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004

 そんなわけで俺とマリィちゃんのパーティにタカシが加わり、3人組となった俺たちは遺跡の探索を再開した。誘拐事件にしろ魔物の発生原因にしろ、奥に何かあるのは間違いない。奥へ、下へ進もうとすればするほど魔物の密度が上がるのだから、普通に考えれば隠したいモノはそっちにあるんだろう。完全に意表を突いて手薄なところに隠し扉が……等という可能性も無くは無いが、そっちはそれこそ調べようが無い。奥まで調べきって何も無ければ改めて検討する程度だ。


「にしても、本当に多いな……」


 機械人(マシナリー)程度なら十分「使える」腕があるタカシが加わったことで、今までよりも更に容易に機械人(マシナリー)共を駆逐しつつ、俺たちは奥へと進んでいく。


「ホントっすよね。オレも大分戦ったけど、これだとあっという間に足の踏み場も無くなっちゃいそうだな」


 そう言ってタカシが苦笑する。確かに足下に積み上がるガラクタの山を見れば、それも当然…………!?


「おいタカシ、お前いつからこの遺跡で戦ってる? 入り口からここまでずっと戦いながら来たのか?」


「へっ!? オレですか? えーっと、調査自体は3日前からやってるんで、この遺跡ではその都度戦ってます。今日も朝から来てるんで、時間的には……何時間だろう? あー、スマホとは言わずとも腕時計くらいあればすぐわかるんだけどなぁ」


「スマホ? が何かわからないけど、腕時計はあるでしょう?」


「あるのは知ってるけど、あれ意外と高いし、そもそも腕なんかに付けたら戦闘中壊れそうで気になってしかたないよ」


「そうだな。掃除人が持つなら精々懐中時計……って、そうじゃない。少なくとも時間がパッと浮かばない程度には戦ってたってことでいいんだな? じゃあその時倒した機械人(マシナリー)の残骸は回収したか?」


 真剣に問う俺に何かを感じたのか、タカシもまた真面目な顔をして考え、そして答える。


「いや、初日にちょっと持っていったくらいで、その後は基本放置だった。帰りの通路で山積みだったから間違いないよ」


「なるほどな……」


 頷く俺の横では、マリィちゃんもまた俺が気づいた違和感の正体に気づいてその顔をしかめている。この場で解っていないのは、唯一タカシだけだ。


「ちょっ、何なんだよアニキ!? 教えてくれよ!」


「ちょっと考えればすぐわかるだろ。昨日倒した敵の残骸が、今日になったら1つも残って無くて綺麗さっぱり消えてるとかおかしいだろ?」


 俺の指摘に、しかしタカシは今ひとつピンとこない感じで首を傾げ……ひとしきり時間をおいてから、やっと「ああ!」と手を打ち鳴らした。


「確かに普通ならおかしいのか。いやぁ、オレにしたら放置したドロップアイテムが時間経過で消えるほうが当たり前だったんで、全然気づかなかった」


「消えるのが普通って……おいまさか、この機械人(マシナリー)の残骸が根こそぎ消えてるのって、タカシの能力の影響じゃ無いよな?」


 その言葉に、タカシは一瞬嫌そうに顔を歪めつつも、ゆっくりと首を振る。


「うっ……可能性が無いとは言わないけど、多分違うと思う……そもそもアニキの話だと、オレが来る前にも掃除人が調査に来てるはずなんだろ? なのにオレが来たときには、残骸はひとつも落ちてなかった。だからこそオレが散々戦って、次の日に来たときに残骸が無かったことにも違和感を感じなかったんだけど……」


「ふむ。そうか……」


 そうであれば、確かにタカシの謎の能力の影響ってわけでもなさそうだ。だが、それならそれでどうやって機械人(マシナリー)の残骸が消えているのかの謎が残る。


「うーん。人の目が無くなると現れる、回収専用の奴がいるとか? そいつが廃パーツを集めて持っていくから、そこでまた新しい機械人(マシナリー)が産まれてきて、結果として大量発生し続けてるとか」


「可能性としてはありそうだが、機械人(マシナリー)のそんな生体聞いたことないぞ? マリィちゃんは何か知ってる?」


「悪いけど、私の方も似たり寄ったりの知識だけね。ただまあ、タカシの推理はいいところを言ってると思うわよ? ほら」


 そう言ってマリィちゃんが俺たちの通ってきた通路の奥へと視線を向ける。が、流石にあまりにも暗すぎるところは暗視の魔法薬でも見通せないし、タカシのライトの魔法でも当然そんな遠くまでは照らせない。


「いや、『ほら』って言われても何も見えないんだけど……」


「あらそうなの? それなりに高い薬なのに不便なのね……見たことの無い形の機械人(マシナリー)が、暗闇でパーツを運搬してるのが見えたわ。おそらくあれが違和感の正体で、誘拐事件はともかく機械人(マシナリー)の大量発生の原因には繋がってそうね」


 何気ない口調でそう告げるマリィちゃんに、俺とタカシは息を飲む。機械人(マシナリー)は多少の大きさの大小はあれど、形が違うなんてことはない。ましてや仲間のパーツを集めて再利用するなんて知能があるわけがない。言うなれば、完全な新種……あるいは。


「裏に何か……あるいは誰か・・がいる?」


 未知の新種が新たに産まれたと考えるよりは、そういうものを操っている誰かがいると考えた方がまだ理解出来る。であればこの機械人(マシナリー)たちは沸いているのではなく沸かされている・・・・・・・のであり、その向こう側には人に見られたくない何かがあるという可能性が俄然高くなる。そしてその「何か」の中に、誘拐した子供の存在というのがあっても何ら不思議では無い。


「マリィちゃん、追える?」


 俺の問いに、マリィちゃんが目を閉じて眉根を寄せ、首を横に振る。


「流石に無理ね。今まで誰にも発見されなかったのは、普通の照明や暗視能力じゃ見抜けないほど遠くでしか活動してないってことですもの。こっちの気配には敏感に反応するでしょうし……それに仮に追いかけられたとしても、あのサイズの機械人(マシナリー)しか通れない通路とかを通られたらどうしようもないわ」


「そりゃまあ……そうか」


 言われてみれば納得するしかない。今まで誰にも見つかってないってことは、見つかりそうな場所は通ってないってことだ。俺たちが普通に通れる場所を間抜けにフラフラ飛んでいるとは思いづらい。


「なら、やっぱりまずは普通に奥に行ってみるしかないか」


「まあ、それが一番確実でしょうね」


「てことは……」


 三者三様で顔を見合わせ、それから俺たちは浮遊する機械人(マシナリー)とは反対方向……つまり建物の奥へと続く方に視線を向ける。そこからやってくるのは、ガチャガチャと音を立てながら歩いてくる機械人(マシナリー)の大群。今までに増して量が多いのは、ひょっとしたらさっきの奴に気づいたことに関係があるのかも知れない。だがどちらにしろ俺たちがやるべき事はひとつだ。


「さあ、強行突破を行ってみようか」


「ふふっ。これだけ多いと倒し甲斐がありそうね」


「ああ。随分と経験値が稼げそうだ」


 銃を、斧を、剣を手にし、俺たちは素早く戦闘態勢を整える。さあ、殲滅戦の始まりだ。

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